本日は、ACL損傷後の片脚スクワット時の筋活動について述べられた文献を紹介させていただきます。
福田航他:前十字靭帯損傷患者における片脚スクワット中の膝周囲筋活動の特性.理学療法科学28(2).201-204.2013
対象はACL損傷患者9名の健患側と、健常人8名の利き足の合計26膝としており、損傷群は全てノンコンタクトでの損傷とされています。また、損傷群は脛骨前方引き出し量が健患差4mm以上有する者とされています。
測定項目は、片脚スクワット時における動作側の膝周囲筋の筋活動を測定されています。
筋活動の測定は、表面筋電図計を用いて行い、内側広筋(VM)・外側広筋(VL)・内側ハムストリングス(MH)・外側ハムストリングス(LH)を測定し、表出された筋電図データから%MVCを求めた。
結果は、%MVCにおいて、4筋全てが3群間で有意差を認めていました。
また、多重比較の結果からVMとVLにおいては患側が健側と比較して有意に小さく、VLは健側がコントロール群と比較して有意に大きくなっていました。
反対に、MH・LHでは患側が健側及びコントロール群と比較して有意に大きくなっていました。
以上の結果から、ACL損傷膝では、VL・VMといった膝伸展筋の筋活動が低下し、LH・MHといった膝屈曲筋の筋活動が大きいことがわかります。このことは、ACL損傷により靱帯による前方引き出し制動力が低下し、膝屈筋群の代償による制動が行われているのではないかということは容易に考察できると思います。
前回も述べさせていただきましたが、ACLR後の理学療法を行う際は、
・再建靭帯の修復過程を把握すること
・いつ頃から再建靭帯にどの程度のストレスをかけていけばいいのか
などといったことに注意しながら理学療法を進めさせていただいています。
筋力も同様に、STG法にて再建靱帯を作成した場合、半腱様筋や薄筋の修復を考慮し、いつ頃から筋力トレーニングを行うかなども考慮して理学療法を行う必要があると心得ています。
保存療法で行う場合は、どのような筋バランスであることが、患者様の膝関節同様を最小限にすることができるかを考えて、筋力トレーニングの負荷量や頻度の決定を行う必要があると考えています。
今回紹介した文献の他にも、ACL損傷後の筋力についての報告は多数あるため、さらに知識を深めていきたいと思います。
投稿者:高橋 蔵ノ助