COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2016年5月31日火曜日

【文献紹介】THA後の外旋筋力について

 後方アプローチにおけるTHAでは、外旋筋群の一部を切離して展開をします。本日紹介させて頂く文献では、後方アプローチで行ったTHA後の外旋筋力の変化について検討しています。


北島 将 他:後方アプローチを用いた人工股関節全置換術前後の外旋筋力の回復率
整形外科と災害外科 2016,65(1):p10-12

 対象は平均年齢70歳の男性4股、女性18股で、徒手筋力計を用いて股関節の屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋を測定し、術前後で比較しています。

 結果ですが、THA前後では内旋筋力のみ有意な増加を認めたと報告しています。術後半年と1年の比較では、屈曲と外旋は改善傾向ではあったが、全て有意差は認められなかったと報告しています。また、外旋筋力が術前レベルまで改善した症例は、全体の58%であったと示されています。

 後方アプローチにおいては外旋筋群の修復が術後の脱臼率を減少させるという報告がされています。THAのリスク管理として脱臼予防は重要ですが、この文献から脱臼予防の指標として外旋筋力も参考になるのではないかと感じました。

投稿者:関本 健太

2016年5月30日月曜日

【文献紹介】膝屈曲時の膝窩部痛について

本日は膝関節屈曲時の膝窩部痛の原因について、遺体解剖による考察が書かれた文献を紹介させていただきたいと思います。


国中ら:膝屈曲時の膝窩部痛の原因について 第2報 -遺体解剖による考察- Japanese physical therapy association,骨・関節系理学療法19,pp442


膝関節屈曲時における膝窩部痛は膝関節疾患に多くみられることが冒頭に記載してあります。私が担当させていただいている症例にもこのような所見があり、今回紹介させていただこうと思いました。

この文献では大腿骨、脛骨の可動性が充分保証されている4体の膝4関節及び、観察用に22体膝44関節を用いて観察されています。
可動性の充分保証された膝4関節は伸展位から最大屈曲位まで可動し、膝窩部の様子を観察しています。観察用の22体膝44関節においてはファベラの有無の確認に用いられました。

結果として可動した4関節においては膝屈曲角度の増大に伴い、腓腹筋内側頭が起始部にて折りたたまれて圧迫され、膝窩筋は伸張されたと報告しています。
また、4関節の内2関節においてはファベラが存在していました。屈曲角度の増大に伴い、膝窩筋にファベラが接触し、圧迫強度が増加したことを報告しています。
観察に用いられた22体膝44関節のうち、7関節にファベラが存在していたとも報告しています。

腓腹筋内側頭による膝窩筋の伸張がみられたことと、ファベラによる膝窩筋の圧迫がみられたことの2つの報告から疼痛の原因の1つとなるのは膝窩筋であるということが示唆されています。
また、ファベラの存在の有無を確認することで、疼痛部位を推察出来ることを示唆しています。

膝窩筋の伸張性が低下した症例ではより疼痛が生じやすいのではないかと考えます。膝窩筋の評価をしっかり行うためには解剖学の知識、触診技術が重要であると改めて感じました。



投稿者:天鷲翔太

第2回整形外科リハビリテーション学会 京都支部・滋賀支部共催 ベーシックセミナー「膝関節の機能解剖学に基づく評価と触診」

本日整形外科リハビリテーション学会京都支部・滋賀支部共催のベーシックセミナー「膝関節の機能解剖学に基づく評価と触診」が行われました。
今回は4人の先生方にレクチャーしていただきました。

   
「膝関節外側組織由来の屈曲制限」 城北整形外科クリニック 三倉一輝先生

「膝関節前方組織由来の屈曲制限」 ひぐち整形外科クリニック 奥山智啓先生

「膝関節伸展機構由来の伸展制限」 京都下鴨病院 為沢一弘先生

「膝関節後内側組織由来の伸展制限」 秋山整形外科クリニック 小野正博先生

本日の最後に浅野先生より膝関節拘縮の考え方についてご講演いただきました




実技の様子です!



 

          


本日のセミナーは実技の実技の時間を多くとっていただけたので1つずつ丁寧に触れていくことができました。
可動域制限といっても関節の動きには多くの組織が関与しているため、どの組織が制限因子となっているのか、正確に評価することが非常に重要であると感じました。正確に評価するためには正常な関節の動きの機能解剖を理解しておくこと、正確に触診ができることが必要であると改めて感じた1日でした。

投稿者:堀内奈緒美










                    














2016年5月26日木曜日

【文献紹介】肩鎖関節脱臼の筋の損傷について

    先日、肩鎖関節脱臼のtype3を呈した症例の術後理学療法を担当することになり、鎖骨が上方へ偏位することで軟部組織がどのように損傷されるのか、という点に興味を持ちました。靭帯の損傷はRockwood分類で判断されるものの、筋の損傷は手術所見にて判断されるかと思います。筋の損傷はADLに影響する因子となりますので、着目するべき点かと思います。また、Rockwood分類を見ると、type35は転位の程度によって分けられます。Type35で筋の損傷に差があるのか疑問に思いました。
 そこで、本日紹介する文献はRockwood分類の解剖学的検討についてです。

 
青木隆明ら:肩鎖関節脱臼Rockwood分類の解剖学的検討.中部整災誌57:593-594,2014

 本文献は献体遺体を用いて、靭帯を切離し鎖骨の遠位端を持ち上げることで、三角筋、僧帽筋、大胸筋の損傷状態を研究されています。また、鎖骨の脱臼に応じた損傷の変化も見られています。
 Type3よりType5の方が、三角筋、僧帽筋ともに大きく損傷されており、さらに大きく脱臼すると大胸筋の線維の一部も損傷を認めたとのことでした。
 Type3は、観血的治療か保存治療かの判断が要されます。もし、type3の症例で保存療法の適応となったものの筋損傷を認めた場合、伸張ストレスが加わる事や筋が収縮する事は禁忌となるかと思います。また、機能低下が残存する可能性が考えられます。

 肩鎖関節脱臼のType3の保存療法の適応となった症例に関しては、超音波画像診断装置等を用いて筋の損傷程度を把握する必要性を感じた論文でした。

【文献紹介】肩関節の三次元運動解析

  本日はモーションキャプチャーシステムを用いて上肢挙上運動の運動解析を行っている論文を紹介させていただきます。

 乾、田中 他: モーションキャプチャーシステムを用いた肩関節の三次元運動解析

関節外科 2019. 28(11)p10-14

 

対象は平均年齢31歳の健常男性15名。冠状面から矢状面に至る4平面(30°間隔)を設定し、各平面で下垂位から最大挙上位に至る一連の動作を連続撮影して挙上運動の解析をされています。
 
  解析結果ですが、上腕骨長軸の挙上に伴う回旋変化として二つのパターンが示されていました。
①肩甲骨面よりも水平外転角が大きくなる時の上肢挙上運動
→内旋が先行し外転約53°で外旋し始め、約122°で外旋角がピークに達して、その後外旋角が徐々に減少しながら最大挙上位に達する。
②肩甲骨面よりも水平外転角が小さくなる時の上肢挙上運動
→内旋が先行し、外転約80°で外旋し始め、その後挙上とともに外旋角は徐々に増大し、最大挙上位で外旋角は最大に達する。

 関節可動域制限を改善するために正常な関節運動を理解、イメージすることはとても重要だと思いました。今回の結果を参考に、上肢挙上運動における回旋角度量や上肢挙上角度における回旋変化に着目して、早速明日からの臨床に活かしていきたいと思います。

 

投稿者:佐々木拓馬

2016年5月24日火曜日

【文献紹介】膝蓋骨の運動について

膝関節屈曲運動に伴い、膝蓋骨は前額面上で約7°の外旋、水平面上で約11°の内旋運動を行うことが知られています。前者はFrontal Rotation、後者はCoronary Rotationと呼ばれています。
本日紹介させて頂く文献では、立位での膝関節屈曲運動がFrontal Rotationに及ぼす影響とその変化量について、報告をしています。


橋谷 裕太郎 他:立位での膝関節屈曲位保持課題が膝蓋骨の前額面上回旋角度変化に及ぼす影響  関西理学 201414p37-41

 方法は体幹垂直位で膝関節屈曲0°位を開始肢位とし、屈曲0°~60°までの各10°ごとの膝蓋骨回旋角度を計測しています。計測に関してはレントゲンを用いて、大腿骨軸と膝蓋骨上端-下端を結んだ直線がなす角度を膝蓋骨回旋角度としています。
 結果は、膝関節屈曲角度の増大に伴い外旋角度は増大傾向にあり、屈曲0°と比較し40°~60°で有意な増加を示したと報告しています。また、変化量は屈曲0°~10°での外旋角度の増大が最大であったと示しています。
 
 臨床の中で、膝蓋骨可動性に問題のある症例を経験することがありました。徒手的に膝蓋骨運動を促す際には非荷重での操作を行うことが多いように感じますが、生活の中では荷重時での運動を考慮する必要があります。今後、膝蓋骨の運動を評価する際には、荷重時・非荷重時と条件を変えた中での膝蓋骨運動にも着目していきたいと思います。




【文献紹介】股関節肢位の違いによる股関節外転筋群の機能

本日は股関節肢位の違いによる股関節外転筋群の機能について書かれた文献を紹介させていただきます。




松木ら:股関節肢位の違いによる股関節外転筋群の筋電図学的解析 理学療法学 第31巻第1号、9-14(2004)

 中殿筋、大腿筋膜張筋、大殿筋上部繊維は股関節外転運動に関与すると共に、立位や歩行などの荷重時には骨盤の安定に寄与すると言われています。これら3つの筋は股関節外転作用を有しており、Kapandjiはこれら外転筋群を”deltoid of the hip”として協同して外転運動に関与することを報告しています。しかし、股関節肢位や、股関節外転張力の強度と各外転筋の筋活動との関係は明らかにされていないことから、股関節肢位(非荷重位)の違いが各筋に与える影響について検討されています。

 中殿筋各繊維、大腿筋膜張筋については股関節最大外旋位で有意に低下、中間位で最も大きな張力が得られたと報告しています。また、股関節屈曲角が増加するにつれ、張力が低下したとも報告されています。
 大殿筋上部繊維に関しては股関節肢位の変化による張力の有意な変化はみられなかったとしています。

 股関節外転筋筋力は下肢免荷中に低下しやすく、歩容にも影響を与えると思われます。この文献では背臥位で股関節中間位での張力が最も大きいことを報告していることから、股関節の肢位は評価やトレーニング時に考慮すべき点ではないかと考えます。
 また、大殿筋の上部繊維については非荷重位での張力は小さく、股関節肢位による影響がほとんどないと報告しています。荷重位と非荷重位での筋活動の違い、アライメントによる筋長の違いから筋の機能の変化がみられるということは当然のことかもしれませんが、明日からはより意識して評価、プログラムを実施したいと思います。


投稿者:天鷲翔太

2016年5月22日日曜日

京都理学療法士会新人研修会に参加しました。

本日、京都理学療法士会新人研修会に参加してきました。



今回の研修内容は「理学療法と倫理」、「協会組織と生涯学習システム」、「リスクマネジメント」、「人間関係および接遇」、「理学療法士における関連法」でした。
理学療法士として知っておかなければならない制度やリスク管理の大切さ、患者さんに対する接し方などを学ぶことができました。リスク管理や患者さんへの接し方は臨床中は常に意識はしていましたが、今回の研修の通してさらに意識していかなければならないと感じました。また、制度や保険のついては勉強不足のため分からない点も多くあり、今後勉強していく必要があると感じました。


今年1年間を通して新人研修会に参加させていただきますので、また報告させていただきます。

投稿者:堀内奈緒美

2016年5月21日土曜日

MRIを用いた膝関節の運動解析

今回、紹介する文献はMAIを用いて膝関節の運動解析を報告しているもので、特に屈曲90°以上の深屈曲を中心にしています。


中川ら:MRIを用いた膝関節の運動解析 日本臨床バイオメカニクス学会誌 Vol.21,2000

 対象は成人男性で膝関節に外傷歴や愁訴を持たない20膝を対象とし、検討項目として、各肢位での大腿骨の顆部が撮影された画像において脛骨関節面に対する大腿骨内側顆、外側顆の前後移動距離と大腿骨に対する脛骨の回旋角度としています。また、自動屈曲と他動屈曲にて計測されています。

 結果として、大腿骨内側顆は自動最大屈曲位(平均133°)までに約2mm後方へ移動、他動最大屈曲(平均162°)までに約6mm後方へ移動したとしています。外側顆は自動最大屈曲位までに約13mm、他動最大屈曲までに約27mm後方へ移動したとしています。この結果から大腿骨外側顆が大きく後方へ移動しており、脛骨は大腿骨に対し内旋運動していると考えられ、その回旋軸は脛骨関節面内側に存在していたと報告されています。また、回旋角度は90°を基準として自動最大屈曲までは約15°他動最大屈曲までは約28°であったとしています。

 今回の報告から屈曲90°以上の屈曲可動域を求めていく時には脛骨の内旋を意識することと、その回旋を制限している原因となる組織の評価はとても重要であると再確認できました。


投稿者:服部隼人

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