今回は腸脛靭帯(以下ITT)遠位部線維束の形態学的特徴についての文献を紹介します。
三浦真弘ら:腸脛靭帯遠位部の線維構築と大腿−膝外側支持機構との関連性について 第10回臨床解剖研究会記録 2006.6.17
ITTは股関節の屈曲・伸展に伴って大転子やGerdy結節上部を前後に滑動する形態学的特徴を有しています。そのため、腸脛靭帯炎等の疾患が生じやすく、特に遠位部では過労性障害が好発することが報告されています。今回の文献はITT遠位線維束の層的構築と付着形態を肉眼解剖学的解析で行い、外側支持機構における運動制御と腸脛靭帯炎の発生機序を踏まえた検討をされています。
今回の解析では、ITT遠位部は浅深3層の線維構築と約7つの線維(I~Ⅶ)に区別されたと報告しています。その約7つの線維の付着部について詳細に述べられており、付着様式から膝関節伸展動作に伴う膝蓋骨の運動制御に関わるとともに、膝関節のscrew
home運動を補佐する動力源となり得ると考察されています。腸脛靭帯炎との発生機序については、主として中間層Ⅱ~Ⅳ線維束が膝関節の初期屈曲において外側筋間中隔との間で機械的摩擦を受けやすいとしています。今回の文献から膝蓋骨の運動制御に腸脛靭帯の関与が大きく関わることを学び、静的安定機構の他に膝関節の動的安定機構としての役割があると考えられます。それ念頭に置き臨床で活かしていきたいと感じました。
投稿者:服部隼人