今回の文献は上肢挙上時の負荷が肩甲骨および体幹の運動に及ぼす影響について紹介します。
上田ら:上肢挙上運動時の負荷が肩甲骨および体幹の運動に及ぼす影響 理学療法科学24(3)323-328 2009年
上肢挙上動作において、Inman らの上肢挙上時に上腕骨と肩甲骨が2:1 という一定のリズムになっているとの報告が代表的で、その他にも様々な運動分析が行われています。また肩甲骨は胸郭と関節軟骨面を構成しないが、機能的な関節面をなすため、胸郭と連続する脊柱の運動についても肩関節に影響を及ぼすとして運動分析が行われています。しかし、多くの運動分析は上肢に負荷を与えない条件下でのものが報告されています。本文献では、上肢挙上時に異なる負荷強度を設定した場合の肩甲骨および体幹の運動を分析することにより、肩甲骨の上方回旋、後傾運動および体幹伸展運動がどの程度の負荷量で増大するのかについて検討されています。
検討方法は負荷のない状態と2~6kg の重さが違うダンベルを把持した状態での上肢を肩甲骨面において下垂位から最大挙上位までの三次元動作解析を行い、各ランドマークから三次元座標値を求めています。
本研究の結果としては① 2kg 以上の物体を挙上する際には、上肢挙上角度120 °以降で胸椎伸展運動が大きくなる。② 4kg 以上では上肢挙上角度60 °以降で胸椎伸展運動が大きくなる。③ 6kg では上肢挙上150 °以降で肩甲骨上方回旋角度が大きくなる。以上のような結果が出たと報告しています。
今回は健常人に対しての検討であるため、実際に肩関節に疾患のある患者様では結果が異なることが予測できますが、日常生活での物を持った時の上肢挙上においては早期から胸椎伸展運動が必要であることが明確であると考えられます。改めて上肢挙上運動では胸椎の運動が重要であることを学ぶことができました。
投稿者:服部隼人