【方法】
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COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について
2023年5月22日月曜日
【論文紹介】大腿骨の前・後捻がFAIに対する股関節鏡視下手術に影響を与えるのか?
【方法】
2023年5月17日水曜日
【論文紹介】股関節の不安定性を示唆する所見 anterior-shift signについて
2023年5月9日火曜日
【論文紹介】思春期特発性側弯症の長期自然経過について
腰痛を主訴とする思春期(10〜18歳)の女性患者を担当しました。X線画像を確認すると、腰椎にコブ角10°程度の側弯がありました。医師からも指摘されていたようですが経過観察の指示とのことで、治るものなのかと質問されました。改善は難しいと考えられますが側彎の自然経過について知らなかったため調べました。レビュー論文になりますが共有させていただきます。
【背景】
脊柱側弯症はその病因やカーブパターンによってその予後は大きく異なる。
特に思春期特発性側弯症(adolescent idiopathc scoliosis:以下 AIS)は,有病率が 10 歳から 16 歳未 満で 10°以上のカーブをもつ患者は世界で 2~3%、我が国でも 1~2% との報告もあり決してまれな疾患ではない。そのうち0.3~0.5% には、一般的に治療が推奨される20度以上の弯曲があるとされている。その定義は,脊椎の Cobb 角が10 度以上で、椎体の回旋を伴うことを特徴とし、その診断は、10歳以上で他の脊柱側弯症の原因が除外された場合にのみ行われる。
4.腰痛
一般に成人の約 50% が腰痛を経験し、うち 15% は 1 年に 2 週間以上続く腰痛や痛みがあるとされて いる。Codver らは腰痛の頻度は約 2 倍程度(AIS 群 65%,健常対照群 32%)で,その重症度に関しては同等であると報告している。また,Weinstein らは慢性的な痛みの頻度は健常対照群と比較してやや 高く,疼痛強度や持続時間などはほぼ同等と述べて いる.Mayo らは健常対照群と比較して背部痛の 頻度はAIS群に多く(AIS群73%,対照群56%), 重症度に関しても痛み強さ・継続的な痛みの頻度が 高く,社会生活に一部困難をきたしていると報告している。このように、腰痛の頻度・重症度に関しては、報告により若干のばらつきがある。カーブパターンやカーブの角度と腰背部痛の関係については、いずれの報告でも明らかな有意差は認められていなかった。AIS 患者のほとんどは,一般と同様に X 線上の脊椎の変性変化を呈する。しかし、脊椎変性の有無や カーブの重症度と腰痛の間には関連性はないようである。唯一、腰痛の腰椎レベルでの側方すべりのある症例については,腰痛の頻度は多い傾向にあると の報告はある。
上記の結果をまとめると,AIS の「腰背部痛の頻 度」は健常者と比較して同等から 2 倍程度,「重症度」 に関しては同等または悪いことがわかった.「カーブ パターンによる疼痛」の差はない.しかし,ほとん どの文献では日常生活において過度の支障はないと結論付けている。
【結語】
AIS の自然経過について 30 年以上の長期の追跡 調査を行った研究は 5 コホートのみであった。AIS の手術介入の理由はカーブの進行に伴う心肺機能で あり、特に胸椎カーブで Cobb 角が 50 °を超える症例については手術加療を考慮すべきと考える。30~ 50°であれば、整容面やその生活背景、社会状況などを加味し、多面的に判断することが重要と考えられる。AIS の自然経過の研究に関する課題は残されており、特に病因の解明については今後の大きなテーマ となる。そのため、現在 AIS と考えられている疾患 の中には他の疾患による側弯症の可能性もある。実臨床においては、詳細な病歴聴取や身体所見を確認 し、早期にその鑑別を行うことが重要である。
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