COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年9月30日日曜日

【文献紹介】腱板断裂を伴う肩関節拘縮の病態

本日紹介させていただく文献は腱板断裂を伴う拘縮肩に対して鏡視下での所見より病態を検討した文献です。

小松田辰郎他:腱板断裂を伴う肩関節拘縮の病態.肩関節25(2):305-308,2001

腱板断裂に対して手術を施行された136例中、マニピュレーションによって拘縮を解除した後に腱板修復術を施行された26例26肩を対象としています。
マニピュレーション後の関節鏡所見は滑膜の発赤、増生、出血が見られたました。
マニピュレーションによって関節包が破綻したと考えられる部位はRI、AIGHLに接した腋窩関節包実質部です。出血を伴った関節包の破綻が見られ、その組み合わせから2つのタイプに分けられました。腋窩関節包のみ破綻したタイプと腋窩関節包腱板疎部が破綻したタイプに分けられました。
肉眼的所見では肩峰下滑液包と腱板の癒着が確認され、肩峰下滑液包が破綻したり、腱板との癒着が剥離した症例はいませんでした。また、小断裂1例と不完全断裂の3例では癒着は見られませんでした。
マニピュレーション後による観察では、ほぼ全症例で腋窩腔とRIの双方で破綻が見られました。主病変は関節包より腱板周辺および肩峰下滑液包にあるとしています。
肉眼的所見から肩峰下滑液包では癒着や炎症を認めた症例が多く見られたが、癒着のない小断裂や不完全断裂でも肩関節拘縮が生じるものもありました。
マニピュレーションにて肩峰下滑液包の破綻がなかったことから、肩峰下滑液包以外の部位に拘縮があると推察しています。
棘上筋前方繊維が破綻した症例で腱板疎部の破綻が少ない症例も存在しました。これは、腱板の5層構造のうち、1・4層はCHLであり、棘上筋前方線維と交差しているため、すでにCHLの損傷がすでに生じていたと筆者は考察しています。
本研究より腱板断裂を伴う拘縮症例における拘縮の要因は関節包内に存在することが明らかとなったと述べています。主たる要因はAIGHLに接する関節包実質部と腱板疎部であり、腱板断裂がすでに腱板疎部に及ぶものでは腱板疎部の関与は少ないものと考えられたと述べています。

拘縮肩において腱板疎部、とくにCHLの関与が報告されています。
今回紹介させていただいた文献から腱板疎部が破綻していても拘縮の強い症例がいることがわかりました。その症例は関節包由来の拘縮であることもわかりました。腱板疎部に対する運動療法と関節包に対する運動療法はアプローチ方法が違うため、腱板疎部由来なのか、関節包由来であるのか見極めることは拘縮肩症例の運動療法において非常に重要であると感じました。

2018年9月29日土曜日

【文献紹介】半膜様筋ー内側側副靭帯の滑液包炎について

本日は、半膜様筋-内側側副靭帯にある滑液包(STB)について述べられた文献を紹介します。

Christopher P.et al.:AJR 1996;166:875-877


STBは逆U字型をしており、その深層部は内側半月板後節に隣接し、半膜様筋腱と脛骨内側顆の間に介在しています。浅層部は半膜様筋腱とMCLの脛骨付着部との間に位置します。STBは、膝関節伸展・外反、脛骨外旋ストレスで緊張する半膜様筋腱と脛骨内側顆との間で生じる摩擦を軽減させ、腱を保護する役割があると述べられています。
周囲にはベイカー嚢胞や鵞足包があることから、MRI画像から滑液包炎が疑われる症例を診る際には鑑別診断が必要になります。
ベイカー嚢胞は関節裂隙から近位1cm、鵞足包は関節裂隙から遠位3~4cmのところに位置するといわれ、STBはそれら滑液包間の関節裂隙の後内側部にあるとされています。
STBの炎症に対する臨床的な診断は、その解剖学的な位置関係をもとにMRI画像や圧痛所見を確認することが必要になります。
STBの炎症は、外傷によるものの他、膝OA症例にも生じることも多いことから臨床的に目にする機会は少なくないと考えます。
膝内側部痛を訴える患者に対して、理学所見、画像所見を注意深く観察し、正確な評価ができるように励みたいと思います。


投稿者:小林 駿也

2018年9月28日金曜日

【文献紹介】腱板修復術後における超音波による動的評価法の有用性について


本日は腱板修復術後症例に対して超音波を用いて修復腱板表面と三角筋下面の境界エコーを動的に評価し、腱板機能評価として有用であるか検討された論文を紹介します。

 

術後1年以上経過した腱板断裂例586肩を対象とし、術後1年時の超音波検査にて三角筋下面と腱板表面間の境界エコーに着目して三角筋と腱板間が完全に分離滑走している症例(良好群467肩)、分離が不十分な症例(不良群119肩)に分類し、年齢、性別、断裂サイズ、術前と術後1年のROM、筋力、MRI評価について比較検討されています。

 

結果では組織間が分離滑走できている良好群は不良群より術後1年の内旋可動域や屈曲・外旋・外転方向の筋力、MRIによるcuff integrityが有意に良好であり、エコーによる動的評価は腱板機能評価に有用な方法であると報告されていました。

 

近年、どの分野においても超音波検査は広く用いられており、高い診断率や動的評価の有用性が報告されております。当院でも超音波診断装置があります。病態の解釈や治療の効果判定としてもっと利用していかなければならないと思いました。早速ですが、明日の臨床から活用していきます。

 
投稿者:佐々木拓馬

2018年9月26日水曜日

【文献紹介】上腕骨通顆骨折術後成績と偽関節症例の検討

本日は上腕骨通顆骨折術後成績と偽関節症例の検討について書かれている文献を紹介させていただきます。





二木ら:高齢者の上腕骨通顆骨折術後成績と偽関節症例の検討 骨折 第40No2 2018


この文献では上腕骨通顆骨折に対し、手術加療された23症例の術後12カ月にかけ経過観察し、術後成績を検討されています。
骨折型はAO分類Type13-A221例、13-A32例です。

可動域は伸展-350°、屈曲100140°、23例中21例で骨癒合を獲得、平均骨癒合期間は5.1か月(3-9か月)です。合併症は偽関節(12カ月経過時に骨癒合を認めない)2CRPS1例、深部感染1例を認めたと報告しています。
JOAスコアは平均84(22100)でした。

この文献で報告されている症例は平均年齢77(6192)の高齢者です。
偽関節を生じた症例ではscrewによる固定を施行されており、本文では固定力不足により骨癒合が遷延し、偽関節を生じたのではないかと考察されています。
高齢者ということもあり、骨粗鬆症が存在していたり、骨癒合を待つための固定期間が長いと関節拘縮となってしまう例も少なくないかと思います。また、1人暮らしでありADL動作を指導しますが、骨折部位へストレスがかかるような動作を取っている可能性も0ではないと考えます。
固定期間であっても関節拘縮予防は可能で、骨折部位からどの軟部組織が拘縮しやすいのか、ストレスがかからないように動作させるにはどうすればよいのかを考え理学療法を行う必要があります。
どんな症例であっても最良の成績を残せるように勉強し、臨床へ活かしていきたいと思います。



投稿者:天鷲 翔太

2018年9月25日火曜日

整形外科リハビリテーション学会2日目


本日は第27回整形外科リハビリテーション学会学術集会の2日目をとなっております。

昨日の4演題に引き続き、本日は京都下鴨病院からは3演題を発表させて頂きました。


「足底に生じた感覚障害に対してインソール作製により症状が改善した1症例
〜免荷期間に行っておくべき処置に対する反省を踏まえて〜
為沢一弘 先生
セクション⑤【足・下腿①】




変形性足関節症における疼痛の解釈
ー長母趾屈筋腱の滑走障害により疼痛を呈した一症例ー
佐々木拓馬 先生
セクション⑦【足・下腿③




健常肩関節の肢位毎における烏口腕筋と上腕二頭筋短頭の
conjoint tenndonの組織弾性と形態変化
永井教生 先生
セクション⑧【頸部・肩】

どの発表も、1つの症例に対して多くの先生方からの質疑をいただくことができ、今後の業務に生かすことができる知識や情報を共有ができたのではないかと思います。


僕自身、整形外科リハビリテーション学会の学術集会へは初めての参加でしたが、聞く立場のみであったとしても、明日からの業務に生かすことができる知識を多く得ることができ、とても有意義な時間となりました。知識を吸収した後にすぐに業務に生かすことができる。ということがこの学術集会の強みなのではないかと思います。
これらの知識をうまく生かせるように明日からの業務を頑張っていきたいと思います。
参加された皆様、2日間お疲れ様でした。



投稿者:茂木孝平

2018年9月24日月曜日

第27回整形外科リハビリテーション学会学術集会

本日第27回整形外科リハビリテーション学会学術集会が行われました。
当院からは2日間で7演題発表させていただきます。
1日目の今日は4演題発表しました。


「Inguinal disruptionに対する運動療法の効果〜保存療法で症状が改善した3症例〜」
小野志操先生


「仙骨骨折後に生じた腰殿部痛と下肢関連痛の病態解釈〜上殿皮神経、梨状筋へのアプローチが有効であった一症例〜」
大渕篤樹先生


「膝関節術後に下腿外側に痺れが残存した症例に対する理学療法の経験」
高橋蔵ノ助先生(代理発表 團野翼先生)


「橈骨頭骨折に合併した肘内側側副靱帯損傷の理学療法〜拘縮予防の重要性を再認識した一症例〜」
天鷲翔太先生

どの演題も多くの質疑をいただき、聞いてる方も勉強になりました。
また、本日の冒頭の部分で検定試験合格の表彰式をしていただきました。

当院には認定グレードを持った先生が多くいます。私が受験する際にも臨床後や朝早く来ていただき臨床前の時間に、小野先生をはじめ、認定を持っている先生方にご指導いただき、B検定に合格することができました。本当に感謝しています。今後も触診の練習は続けていき、次のグレードを目指して臨床も学術活動も頑張りたいと思います。

2日目の明日も当院から3演題発表させていただきます。
たくさんの質疑をいただければと思います。
明日も1日宜しくお願いします申し上げます。

投稿者:堀内奈緒美

2018年9月22日土曜日

【文献紹介】DRUJの不安定性について

本日は橈骨遠位端骨折後のDRUJの不安定性について検討した文献を紹介させていただきます。


岩部昌平他:橈骨遠位端骨折に伴う遠位橈尺関節支持組織の損傷様式と不安定性:骨折 28(4): 647-651, 2006


本研究は橈骨遠位端骨折に伴うDRUJ支持組織の橈骨手根関節外部分の損傷を観察することを目的に検討を行っています。
対象は2004年4月~2005年5月までの間で観血的治療を行った橈骨遠位端骨折33例です。麻酔下でDRUJの不安定性があることを確認し、DRUJ支持組織の尺側要素を観察しています。可及的にすべての損傷を修復し、修復後に不安定性を再度確認しています。観察した支持組織は尺骨茎状突起、三角靭帯、尺側側副靭帯、尺側手根伸筋腱鞘、掌側関節包でした。
結果は、尺骨茎状突起、尺側側副靭帯、三角靭帯、尺側手根伸筋腱鞘に効率で損傷が確認されました。尺骨茎状突起には尺側側副靭帯と三角靭帯が付着するため、尺側側副靭帯、三角靭帯、尺側手根伸筋腱鞘の三要素の損傷がDRUJの不安定性に大きく関与していることが考えられると筆者は述べています。
しかし、今回の検討の中で不安定性が確認された症例の中で三角靭帯損傷がない、または部分損傷であった者が5症例みられた一方で、尺側側副靭帯損傷がなかった症例は1例、尺側手根伸筋腱鞘損傷がなかった症例が3例であり、三角靭帯だけがDRUJを支持しているのではないことが示唆されました。またこれを裏付けるものとして、支持組織の修復において三角靭帯のみではDRUJの安定性を得ることができず、尺側側副靭帯、尺側手根伸筋腱鞘の修復を進めていく中で不安定性が減少していったと報告しています。これら三要素の修復によりDRUJの不安定性は確実に減少すると筆者は述べています。


橈骨遠位端骨折後の患者に対しどのような外力でどこの組織が損傷しているかを予測し、その組織が損傷していると何が生じるかしっかり考えて理学療法を展開していく必要があります。評価方法も手関節の肢位や操作によって左右される事から、さらに知識を深め、適切な理学療法を行えるように勉強していきたいと思います。


投稿者:小林 駿也

2018年9月21日金曜日

【文献紹介】術中遠位橈尺関節不安定性が術後成績に及ぼす影響について


三竹辰徳 他:橈骨遠位端骨折に合併した術中遠位橈尺関節不安定性の術後成績に及ぼす影響  日手会誌 201430);p81-84

 本日の紹介させていただく論文は術中に遠位橈尺関節(DRUJ)不安定性が認められた橈骨遠位端骨折の術後成績に及ぼす影響を検討されています。

 対象は橈骨遠位端骨折40例で、術中にDRUJ不安定性を認めたInstability群(I群)、不安定性がなかったStability群(S群)の2群に群分けし評価項目を比較検討されています。評価項目は術前CTにおける橈骨sigmoid notchにかかる骨折の有無、尺骨骨折の有無と転位の程度、最終診察時のROM、握力、Hand20です。

 結果をまとめると各評価項目で統計学的有意差は認めなかったと示されていました。
I群の傾向は以下の4つでした。
①尺骨茎状突起骨折は両群に認められている
sigmoid notchにかかる骨折を合併している割合が多い
③尺骨茎状突起骨折部の転位量が大きい
④尺骨茎状突起水平骨折に対して骨接合術が行われてもDRUJ不安定性が残存している
  症例がいる
 著者は考察の中で骨折に関連する軟部組織損傷の修復を促すことが橈骨遠位端骨折に合併するDRUJ不安定性や尺側部痛を回避できると述べられています。

 尺骨茎状突起骨折=DRUJの不安定性ではないことがわかります。また、術直後のDRUJ不安定性があっても最終診察時のROMや握力などの手関節機能に有意差を認めなかったことから軟部組織損傷の修復を考慮した患者指導、運動療法の提供できれば成績向上につながると思います。画像所見から病態を把握することの大切さを改めて強く感じました。

投稿者:佐々木拓馬

2018年9月19日水曜日

【文献紹介】拘縮発生予防を目的とした自動運動の効果について


本日は拘縮発生予防を目的とした自動運動の効果について書かれている文献を紹介させていただきます。





坂本ら:関節拘縮の発生予防を目的とした自動運動の効果-足関節中間位固定を用いたラットにおける実験的研究- 理学療法科学 32(5)705-7082017


この文献ではラット12匹を対象とし、一側後肢足関節を底背屈中間位にてギプス固定されています。11度固定を除去し、20分のトレッドミル走行を行う固定運動群と11度固定を除去し、ギプスの巻替えのみ行う固定群に分けられています。
実施期間は7日間で、初日と最終日の足関節可動域を比較されています。

初日の足関節可動域(背屈から底屈にかけて)は固定群117.3±6.1°、固定運動群119.7±5.3°であり、2群間に有意差は認めていません。
最終日の関節可動域は固定群84.0±4.6°、固定運動群で93.3±8.0°であり、両群に関節可動域の減少を認めました。
また、最終日の関節可動域は2群間に有意差を認め、固定運動群の関節可動域が大きいことを報告しています。


この文献から固定期間に11度運動をさせると関節可動域の減少を抑制させることが分かりました。しかし、両群共に関節可動域が減少していることから少なからず関節拘縮が出来ていることも分かりました。
また、ギプス除去し、トレッドミルでの走行運動を行わせていますが、実際には骨折後の骨接合術や、靭帯損傷後のギプス固定を除去し、荷重位で運動させることは困難です。ギプス
固定中に拘縮させないためにもどの軟部組織が拘縮しやすいのか、拘縮する可能性があるのかを考え、ギプスにより保護している組織にストレスを与えないように運動療法を行って行く必要があるかと思います。
もう一つ分かったこととして、他の文献でも言われているように11度の介入のみでは不十分ということも分かりました。
1週間に1回の頻度で介入している症例も多々います。
拘縮を作らないためにもその患者への運動指導、運動の目的について十分に説明することが重要であると改めて感じました。
明日からの臨床で活かせるよう、勉強していきたいと思います。


投稿者:天鷲 翔太

2018年9月18日火曜日

【文献紹介】体幹固定の違いと股関節の確度の違いによって大腿四頭筋にどのような影響を及ぼすか

本日は体幹固定の違いによって大腿四頭筋セッティング下肢筋力筋活動にどのような影響を及ぼすかについての文献紹介をさせて頂きます。
臨床において、大腿四頭筋セッティングは関節運動を伴わない運動として廃用性筋委縮や筋力維持などを目的に行われています。

・方法
背面支持のある股関節屈曲15°、65°
背面支持のない115°
3条件で、各筋の最大随意等尺性収縮時の筋活動を計測しています。
筋活動の測定筋は大腿直筋、内側広筋、外側広筋、半膜様筋、大腿二頭筋、大殿筋の計6筋です。
 ・結果
 背面支持のある股関節屈曲65°においてセッティング力、大腿直筋、内側広筋、外側広筋の活動が最も高値を
 示したと報告されている。また、下肢後面の3筋に関しては有意な差は認められなかったと報告されている
 
大腿四頭筋セッティングでは体幹や股関節のみではなく、足関節の角度によっても筋活動が変化するとの報告もあるため、個々の目的に合わせた肢位で実施する必要性を感じました。また、今回紹介させて頂いた文献は3条件のみですが、臨床においては患者の状態や制限・ope後の時期によって様々な肢位で行う機会があることが考えられます。よって、各筋の特性を理解した上で、四頭筋セッティングを指導することが重要であることがわかりました。


事柴 壮武 他:体幹固定性の違いと股関節角度の変化が大腿四頭筋セッティングの下肢筋筋活動に及ぼす影響.理学療法の臨床と研究 2013(22);p21-24

2018年9月16日日曜日

【文献紹介】for lateral areaでの神経絞扼障害について


本日は、Far-out syndrome(以下,FOS)の病態とされている、for lateral areaでの神経絞扼障害について一部紹介させていただきます。




FOSはL5-S1椎間レベルにおいて仙骨翼と横突起で囲まれたfor lateral areaでL5神経根が絞扼されて症状を呈する病態として報告されています。


神経圧迫部位は脊柱管内・外側陥凹・椎間孔・椎間孔外の 4 つに大きく分けられます。L5/S 椎間孔外での神経根障害の病態には 不明な点もあるが、直視下にてlumbosacral ligament(以下 LSL)を切除することにより症状改善が得られたという報告も散見され、絞扼因子として神経背側靭帯組織 であるLSLが関与していると報告されいます。




    A: L5 nerve root, B: L4 nerve root, C: lntervertebral disc, D: lumbosacral hood


ホルマリン固定遺体 4 体 8 側を対象とした研究では、全例に LSL が存在し L5 横突起から仙骨翼前面に伸びており、腹側では lumbosacral hood(以下 LSH )を形成しています。
LSH は、内側は L5/S 椎間板または L5 椎体外側,後方は LSL,頭側は横突起起始部,尾側は仙骨翼に囲まれた非常に狭い空間であり,それら構成体の変性や LSL の骨化により L5 神経根が容易に圧迫されうることが予測されます。


骨増殖や骨の変形に対しては理学療法士で改善することは困難ですが、SLSなど軟部組織に対して伸張や弛緩させる操作を行うことは可能です。
SLS下にL5神経根が走行している解剖学的構造とLSLを切除することにより症状改善が得られたという報告から、理学療法士で改善できる病態もあるかもしれないと感じました。
実際にエコーなどを用いて探求していきたいと思います。



投稿者:大渕篤樹

【文献紹介】肩関節拘縮例の肩甲骨の傾き及び動き

本日紹介させていただく文献は、拘縮肩症例における挙上時の肩甲骨の傾きを検討した文献です。


山田正幸他:肩関節拘縮例の肩甲骨の傾き及び動き.整形外科と災害外科33(2):388-393,1984

拘縮肩における肩甲骨の傾きを検討することを目的としています。
対象は肩関節拘縮例20例です。
45°、最大挙上位でレントゲン撮影し、内方傾斜角(内外転)、下方傾斜角(前後傾)、上方回旋角を計測しています。
健側と患側の撮影をし、比較しています。
今回の結果から発症後2ヶ月未満とそれ以上で結果が異なっていたため、2ヶ月未満をグループ1、それ以上をグループ2としています。
グループ1
内方傾斜は有意差なし
下方傾斜角は有意に大きく、前傾していた
上方回旋は有意大きかった
グループ2
内方傾斜は有意差なし
下方傾斜は有意に小さく、後傾後傾していた
上方回旋は有意差なし(個々で異なった動態を示した)
安静立位時の肩甲骨の傾きには病期による違いが見られ、2ヶ月以前とその後で特に下方傾斜に変化が見られることがわかりました。
グループ1とグループ2の下方傾斜の強かった1例においては疼痛の訴えが強く、夜間痛も認めていました。
これらのことから下方傾斜を増大させる要因の1つに疼痛があると筆者は考察しています。
過去の報告では下垂位から150°挙上位まで内方傾斜はほとんどしないと報告しており、今回の結果と合わせて考えても内方傾斜は肩関節疾患があっても安定した角度と言えると述べています。

拘縮してからの期間によって肩甲骨の傾きが異なることがわかりました。
いつから疼痛が出現し、可動域制限が生じたのか詳細に問診することはどの方向に可動域が制限されているのかを知る手がかりにもなると感じました。
また疼痛が強い症例において肩甲骨の前傾が大きかったと述べられています。逆に考えれば肩甲骨の後傾が出るようにすれば疼痛の軽減につながることも考えられます。疼痛の強い症例において肩甲骨の前傾角を評価するのも1つポイントになると感じました。

2018年9月15日土曜日

【文献紹介】腸脛靭帯の構成繊維とその機能解剖学的意義について

今回は腸脛靭帯(以下ITT)近位部の解剖について書かれた文献を紹介します。

三浦ら:腸脛靭帯の構成繊維とその機能解剖学的意義について 9回臨床解剖研究会記録 2005.6.11

 遠位部に関しては過労性障害との関わりが多く、腸脛靭帯炎などの疾患で着目されます。しかし、近位部においても構成繊維は複雑であり不明な点も多いことから、筆者らは肉眼解剖ならびに電顕的検索を行っています。報告として、まずITT近位部は浅・深2層の繊維束に区別され、その中でも深層は3つの繊維束から複合形成されていると確認しています。また興味深いのはこれらの深層繊維束の大部分は大転子後下方(殿筋粗面上部)において指状に噛合うように立体交差して集束したのちに大腿骨に付着した点です。ITT深層部分の繊維束の立体交差が大転子を後方から支持することで、ITTには股関節を伸展位に保持する作用があることが推測でき、股関節の安定化にも重要な役割を担っていると考えられます。

このことから近位部に関しては特に股関節の安定化にも関与することがわかり、臨床上で着目すべき報告だと感じました。



投稿者:小林 駿也

2018年9月12日水曜日

【文献紹介】前鋸筋の解剖について


本日は前鋸筋の機能解剖について書かれている文献を紹介させていただきます。





浜田ら:前鋸筋の機能解剖学的研究 肩関節.2007;31巻第3号:629-632


この文献では献体510肩を対象とし、前鋸筋の上部、中部、下部筋束に分けて各筋束の支配神経、機能的役割を構造と走行方向から評価されています。


神経支配 上部はC5.6C5C5.6.7C4.5と支配神経根が分かれていた
     中・下部はC6.7C4.5.6.7C5.6.7と分かれているのが観察された。

構造と走行 前鋸筋は肩甲挙筋、菱形筋と一体となっている
      各筋束の肩甲骨付着部は上部と下部筋束でそれぞれ上角、下角に広く付着する
      上角の付着部は腹側だけでなく背側にも付着していた
      中部筋束は内側縁に上下に長く、狭い範囲に付着する形態をとっている
      上部筋束は大きい断面積、短い筋長
中部・下部筋束は下方になるほど扁平化し筋長は長く扇状であった
これらのことが報告されています。

この文献から前鋸筋の支配神経、走行形態が分かりました。
長胸神経支配でありますが、C4.8なども関与することがあるということが分かりました。
また、上部筋束と中部・下部筋束で筋の形状、走行形態、付着形態が異なることが分かりました。
各線維の形態を理解した上で理学療法に活かしていくことが重要であると思いました。
明日からの臨床で活かせるように勉強していきたいと思います。



投稿者:天鷲 翔太

2018年9月11日火曜日

【文献紹介】膝蓋骨上脂肪体(SPF)が膝関節屈曲運動時にどのような変化がみられるか

今回は膝蓋骨上脂肪体(SPF)が膝関節屈曲運動時にどのような変化がみられるかを超音波画像診断装置を用いて観察された文献を紹介させていただきます。


SPFは膝蓋骨底と膝蓋上嚢、大腿四頭筋共同腱遠位で形成される三角形を埋めるように存在する。
・機能としては膝関節屈曲運動時の大腿四頭筋共同腱の滑走や伸展機構効率を高める
・大腿骨と膝蓋骨間での膝蓋上嚢のインピンジメントの予防
とこれまでの研究で報告されている。
しかし、今回の文献では膝関節運動時のSPFの動態に関する報告はほとんどないため、観察・検討されていました。

対象
健常男性10名の左下肢
測定肢位は背臥位とする。
SPFの大腿四頭筋腱側の長さ(腱側長)の測定には膝関節伸展時および屈曲90度・120度・最大屈曲・正座時の長軸像を超音波画像診断装置にて撮影。


文献では膝関節伸展時から90度、120度、最大屈曲、正座の順に腱側長は増加したと報告されている
また、増加率について、膝関節伸展はその他の膝関節屈曲角度、膝関節屈曲90120度では最大屈曲・正座時、最大屈曲は正座時に有意差があったとも報告している。

この文献の報告から膝関節屈曲角度の増加に伴い、SPFの腱側長は増加していくことが分かりました。このことから膝関節の屈曲角度を獲得するためにはSPFの柔軟性に注目していく必要があると考えられます。
また、SPFが充分に伸張できるように大腿四頭筋をはじめ、周囲の軟部組織の柔軟性を獲得することも重要だと考えます。
臨床の中で自分自身膝関節の屈曲制限に直面する事がありますが、今回の文献が屈曲制限の原因の1つになるという事を念頭に臨床に活かせたらと思います。


投稿者 茂木孝平


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