本日は、舟状骨骨折における変形について書かれた文献を紹介させていただきます。
森友寿夫:舟状骨骨折偽関節のバイオメカニクス:関節外科31(8)16-24.2012
舟状骨骨折では、転位や骨折部の離開の程度、骨折のタイプ、生活状況、年齢などによって治療選択がなされています。保存療法の予後としてhumpback変形やDISI変形などが報告されていますが、どのような骨折のタイプに変形が起こりやすいのか、またどのようなメカニカルストレスが加わることで変形していくのか疑問に思い、今回調べてみました。
本文献では、Herbert分類B1型とB2型骨折による変形とキネマティクス、画像所見、手術法の比較などが書かれています。今回は変形について一部紹介させていただきます。
中央1/3骨折での舟状骨偽関節の中には変形の進行に伴い疼痛の強いタイプと、長期間経過しても軽度なタイプがありますが、この違いは骨折線の位置に大きく関係しているとされています。
B2型骨折では骨折線が舟状骨腰部掌側から舟状骨突起の遠位に向かって斜めに存在しています。この骨折では、背側舟状月状骨間靭帯が付着する舟状骨突起より遠位に骨折線が存在し、不安定型とされています。手関節掌背屈運動の際に舟状骨遠位骨片は遠位手根列と一緒に、近位骨片は月状骨と一緒に動き、骨片間でのブックオープン様の異常な動きを示すとしています。このように、B2型骨折は時間の経過とともに掌側骨折部に骨欠損が生じていきます。また、橈尺屈運動においても近位手根列のリンクは分離すると報告しています。
今回、舟状骨骨折後に偽関節が生じるバイオメカニクスを知り、骨折部位を把握する重要性はもちろんのこと、手根骨に付着する靭帯など解剖の必要性を再認識しました。今後に活かしていきたいと思います。
投稿者:鷲見 有香