本日は、橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術後の長母指屈筋腱断裂について書かれた文献です。
三原 惇史ら: 整形外科と災害外科.63:(1)47-50(2014)
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレートでの内固定術は一般的な治療法とされていますが、手指の屈筋腱断裂のリスクがあり、Soongらは4.3%の症例に起きると報告しています。
本論文では、橈骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート術後に長母指屈筋腱断裂をきたした症例を対象に、断裂の原因とその再建方法を検討しています。
プレートの固定はSoongらの分類grade1が2例、グレード2が1例であり、断裂から16日で再建可能であった1例のみ長掌筋腱による腱移植術にて再建し、数か月要した2症例環指浅指屈筋腱の腱移行術にて再建しており、これら再建後の母指IP・MP関節の可動域、Quick DASH Scoreを評価し比較しています。
結果は、Quick DASH Scoreにいては腱移行術例よりも腱移植例にて良好であり、可動域は移植術では健側とほぼ同等まで改善したが、移行術例では2例ともに母指の可動域制限を認めました。この結果から、著者らは腱断裂の早期診断と腱移植術にて再建することが望ましいと考察しています。
FPL断裂は、Watershed lineより遠位でプレート固定される場合や、プレートの設置位置が橈骨掌側縁よりも掌側に突出していると腱断裂のリスクが上昇することが原因であるとされているため、今回学んだことを、臨床に活かしていきたいと思います。
投稿者:鷲見 有香