吉村英哉他:烏口上腕靭帯の肩甲下筋腱付着部に関する解剖学的研究:その意義について.肩関節25(3):707-710,2011
対象は解剖実習体10体20側です。腱板疎部周辺を観察し、CHL,肩甲下筋の付着部を観察しています。
結果は肩甲下筋の最頭側部は小結節凸面と結節間溝に強固に停止していました。CHLの烏口突起から起始する線維は肩甲下筋の最頭側部を前面と後面から挟み込むような形で走行しています。
この線維の付着部は上部な関節窩より近位内側、下方は小結節を超えて肩甲下筋下部の筋線維に停止します。
腱板疎部周辺は層構造を成すと報告しており、CHLは後方で棘上筋の上面と下面を覆っており、肩甲下筋腱の部分では前面と後面を覆う形で走行しています。
上腕骨運動に伴ったCHLの変化として内旋位で弛緩、棘上筋の付着してくる線維は屈曲で弛緩、外旋位で伸張、肩甲下筋腱に付着してくる線維は伸展で伸張しました。
筆者は解剖学的特徴からCHLは肩甲下筋最頭側部の安定化に関与することが示唆されたと述べている。また、内旋させた際にたわむ肩甲下筋をCHLを内上方に引き上げ、形状を保つ役割も果たしていると述べている。
肩関節挙上最終域ではCHLが緊張し、これにより肩甲下筋腱上部と結節間溝の樋構造(CHLとSGHLが連続して構成された膜様構造)が緊張することでLHBの安定化作用を発揮すると考察しています。
腱板疎部周辺の解剖の論文を見ていくととても複雑な構造をしていることが分かります。
腱板修復術でCHLに侵襲がある症例を経験します。CHLを拘縮させてしまうと、その後可動域にかなり制限が出ることに加え、治療も大変になることが予測できます。腱板の修復期間に過度なストレス加えずにCHLの拘縮予防に努める必要があり、さらに機能解剖学的知識を深める必要があると感じました。