本日は、人工膝関節全置換術における膝蓋骨アライメントと術後可動域について書かれた文献を紹介させていただきます。
稾 賢一ら:人工膝関節術における深屈曲縫合後の膝蓋骨アライメントと
術後可動域の関係 中部整災誌 Vol.52(2009)95-96
本文献は、膝蓋骨非置換TKA症例を対象に深屈曲縫合後の膝蓋骨アライメント変化と術後可動域の関係について検討されています。
術後平均観察期間は14.1ヶ月であり、手術方法は内側傍膝蓋アプローチにて展開し、機種はBi-Surface
kneeを使用しています。検討項目は、JOA、PF関節痛の有無、膝蓋大腿関節痛の有無及びROMを、X線評価としてFTA、膝蓋骨厚(PD)、Insall-Salvati比(I-S比)と、膝蓋骨のtilting angle(TA)、外方偏位(LS)およびPF関節の接触を術前と経過観察時に測定しています。
結果の一部を紹介させていただきます。
術後平均ROMは改善したが、不良例も数症例認めていた。ROM変化例と不良例を比較すると、改善不良例はPDが有意に高く、I-S比が有意に低い結果であった。また、TAおよびLSは術後増大を認めたがROMとの関係は認めない結果であったと報告しています。
この文献を読んで感じたことは、TKA術後の膝蓋骨周囲組織に対するアプローチの重要性でした。本論文においてPDが厚くI-S比が低い症例はROMが不良であったとの報告から、術後PF関節や膝蓋靭帯部での拘縮はROM制限につながることが考えられ、膝蓋骨周囲の軟部組織や膝蓋靭帯及び深層組織の滑走性かつ柔軟性の改善がROM獲得に必要であることを再認識しました。
TAやLSのROMへの影響については、BindelglassらはTKA術後TAとLSが悪化したとし、膝蓋骨傾斜と術後屈曲角度との関連は乏しいと報告しており、一定の見解は得られていません。
今後さらにTKAについて調べ、良好な可動域を獲得できるよう知識・技術共に日々研磨していきたいと思います。