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2017年10月24日火曜日

【文献紹介】ハムストリングスの再生とリハビリテーションへの応用


 本日は、ACL再建術後において筋力低下が生じる原因や採取腱の再生について書かれた文献を紹介させていただきます。
倉持梨恵子ら: 臨床スポーツ医学.Vo1.26,No.7(2009-7)

ACL再建術では、術後の膝関節機能においてSTG 法はBTB法に比べ脛骨前方移動量や、膝関節筋力回復が早く成績が良好であったという報告がなされている一方で、膝関節深屈曲位における膝関節屈曲トルクは大きく低下することが報告されています。


文献では術後膝関節深屈曲域での筋力低下の原因や採取腱の再生について書かれているため、その一部を紹介させていただきます。


術後深屈曲域での筋力低下においては、ハムストリングスを構成する各筋の形状が関与しているとしています。STは紡錘状筋、半膜様筋(SM)および大腿二頭筋(BF)は半羽状筋構造です。羽状筋では収縮時に羽状角が増大し、線維の発揮張力のうち羽状角の余弦成分のみが筋力発揮に有効に働くとされています。そのため、膝屈曲角度が深くなるにつれ、羽状角が増大することで余弦成分が減少し、発揮張力が減少します。

 一方で、筋束が長い紡錘状筋は筋力発揮に対する羽状角の関与がないため、関節角度の影響を受けづらいとされています。

 Herzogらによる屍体解剖結果報告によると、BF SMのモーメントアームは、膝屈曲角度増大とともに大きくなり、それぞれ屈曲75100 度、80度で最大となった後、深屈曲位では低下する。一方STは、膝屈曲角度増大とともに増加傾向を示し、最大屈曲位にてモーメントアーム値も最大値をとると報告しています。


採取腱の再生については、Crossらの報告によると、多くの場合はST腱を一度採取しても腱に類似した組織が再生すると報告しており、筆者らの検討によると、再生した腱が健側の腱よりも太かった場合、STの筋体積や筋力の回復がより良好であったことから、よりよい再生を促すことが機能低下を抑制することになると考えられます。

本文献には筋腱移行部の位置や再生ST腱の横断面積・成熟度について書かれていますが、ここでは成熟度のみ紹介させていただきます。


 組織の水分含量をMRIにて定量化するT2値を再生ST腱において測定すると、術後3ヵ月で最大値を示し、術後初期の線維芽細胞の増殖に伴う水分含有量の増大が示唆され、術後4ヵ月以降ではT2値が大きな変化をみせなかったと報告しています。4ヶ月以降で変化が得られなかったのは、時間経過とともに再生ST腱のコラーゲン線維の再配行を繰り返していくためだと著者らは考えています。


私はこの文献を読んで、STST/G法による再建術後の運動療法では、ハムストリングスの筋の形状と採取腱の組織修復を考慮して、術後3ヶ月まではSTの単独収縮による過剰な負荷は避けるべきだと改めて感じました。日々の臨床に活かし、今後もさらに知識を深めていきたいと思います。

投稿者:鷲見 有香

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