本日は、肩関節拘縮症例の肩関節の動態がその後の経過とどのような関連があるかについて報告されている論文を紹介します。
君塚康一郎:肩関節拘縮に対する保存的治療の検討. 肩関節30(3): 515-518, 2006.
臨床において、障害のある関節は生理的な関節運動が出来ないことが多いです。これを是正することで疼痛が軽減したり関節可動域が広がったりすることから、生理的な関節運動を理解することは理学療法において重要かと思います。
肩関節の生理的な関節運動のひとつに、挙上に伴い大結節が烏口肩峰弓内(以下:肩峰下)を通過することが挙げられます。本日紹介する文献は、医者が肩関節拘縮症例における保存療法の適応を明らかにすることを目的に、大結節と肩峰下の位置関係について着目し治療成績を検討されています。
大結節が肩峰下に位置する群(Rotational Glide群)としない群(Prerotational Glide群)で比較されています。Rotational
Glide群は全例、6ヶ月後に肩峰下を通過していたのに対し、Prerotational
Glide群の約1/3の症例は肩峰下を通過できなかったとしています。
この結果から、生理的な肩関節運動が獲得されている症例の方が経過は良好であることと推察されます。関節を評価する際に、その関節が生理的な運動をしているか否かを評価すること、生理的な関節運動を制限する原因を判断することが関節障害の改善につながると再確認できました。臨床に生かしていきたいです。
投稿者:中井亮佑