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2019年4月4日木曜日

【文献紹介】関節靭帯を刺激した際の周囲筋の活動

本日は手関節靭帯を刺激した際の周囲筋の活動を筋電図を用いて調査れている研究を紹介します。



 2009 Apr;34(4):642-51. doi: 10.1016/j.jhsa.2008.12.001. Epub 2009 Feb 26.


対象はボランティアで参加された女性4人、男性5人の計9人です。
平均年齢26歳で超音波ガイド下で細いワイヤ電極を背側骨間靭帯に挿入して靭帯を刺激した際のECRB、ECU、FCR、FCUの筋電図活動をみています。


結果、関節靭帯を刺激すると周囲の筋肉が収縮する様子が確認されます。
これは、関節を保護する反射(ligament musclar reflex)の可能性があるとこの論文では報告されています。



    


このように関節靭帯を刺激すると周囲の筋肉が過剰に収縮する反応は膝関節においても証明されています。
Am J Sports Med. 2001 Jan-Feb;29(1):83-7.
Direct evidence of the anterior cruciate ligament-hamstring reflex arc in humans.


これは他の関節でも同様の反応が生じるのではないかと考えます。
関節が動揺したり正常な軌道から逸脱して支点形成ができなくなる時に、それを制動するために靭帯は緊張します。その際に周囲の動的支持機構である筋肉に過剰な筋活動を余儀なくされるのではないかと考えます。
正常な軌道で関節運動が出来ている状態を安定、正常な軌道から逸脱した運動を不安定と考えると筋スパズムが生じる原因も理解できるのではないかと思います。
局所の疼痛を改善するために筋スパズムを改善することは臨床ではよくあることです。
しかし、スパズムが生じている筋が必ずしも治療ターゲットとなるとは限らず、スパズムが生じる要因を評価することが重要だと考えます。


関節が不安定になる病態は様々です。関節構成体や靭帯などの静的支持機構が破綻した場合にも関節は不安定となります。
軟部組織の拘縮が原因でも関節運動が不安定となります。例えば凹凸の関節の中で内外転といった運動が引き起こされますが、ある一方を外面として、どちらかに伸びないという組織が存在するとすれば動こうとしても伸びないので途中で関節の回転が止まってしまいます。それを無理に動かそうとするとヒンジとなって正常な軌道から逸脱してしまいます。これが拘縮を起因とした不安定性であると考えます。

このように不安定性の要因は様々であり病態によって適応となる治療は異なります。
これはどこの関節でも同じことが言えると思います。機能改善をする理学療法士にとってこの考えは大切だと思っています。


投稿者:大渕篤樹

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