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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2023年5月22日月曜日

【論文紹介】大腿骨の前・後捻がFAIに対する股関節鏡視下手術に影響を与えるのか?








【背景】 
過去数十年の間に、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)や唇裂傷に対して股関節鏡手術が普及しており、最近のメタアナリシスでは87.7%の症例で成功したと報告されている。一方、FAIに対する股関節鏡視下手術の失敗率は2.9%~13.2%と報告されている。女性性、高齢、股関節形成不全、高体重指数、関節軟骨損傷、寛骨臼被覆率の増加に加え、大腿骨捻転異常(FV)も股関節鏡視下手術失敗の危険因子として報告されている。大腿骨前捻は、特に発育不全の股関節では、大腿骨頭を十分にカバーできないため、股関節の不安定性につながる可能性がある。一方、大腿骨後捻は前方インピンジメント、機能的屈曲の減少、内旋制限につながる。FV異常は、股関節インピンジメント、不安定性、変形性関節症と相関があり、股関節手術の予後不良因子である可能性があることが判明している。しかし、FV異常が股関節鏡手術の術後成績を損なうかどうかはまだ議論の余地がある。


【目的】
FVが正常な患者と異常な患者のFAIまたは関節唇断裂に対する股関節鏡視下手術の結果を検討する。


【方法】
大腿骨後転(<5)、大腿骨前転(>20)、正常FV(5~20)の患者におけるFAIまたは関節唇断裂に対する一次股関節鏡手術後の転帰を報告する研究について、2020年7月にEmbase、PubMed、Cochrane Libraryが検索された。主要アウトカムはmodified Harris Hip Score(mHHS)、副アウトカムは痛みのvisual analog scale(VAS)、Hip Outcome Score-Sport-Specific Subscale(HOS-SSS)、非関節性股関節スコア(NAHS)、失敗率、患者満足度であった。また、術前と術後のスコアの差(D)も該当する場合は算出した。


【結果】
このレビューに含まれるのは、FAIまたは関節唇断裂に対して股関節鏡手術を受けた822人の患者を対象とした5つの研究で、後捻の患者166人、正常の患者512人、前捻の患者144人である。後捻と正常では、術後のmHHSスコアおよびDmHHSスコアが同程度だった。同様に、前捻と正常の患者では、術後のmHHSスコアおよびDmHHSスコアは同等であった。副アウトカムについては,後捻および前捻の患者は正常位と同様にDNAHSスコア,DHOS-SSSスコア,DVASスコア,患者満足度,失敗率が高かったが,術後のNAHSスコアについては後転の患者と正常位の患者の間に有意差が認められ、術後HOS-SSSスコアについては、後捻と正常の間に有意差が認められた。

【結論】
本検討の結果、FAIや関節唇断裂に対する股関節鏡視下手術後のアウトカムにFV異常が有意に影響することはないことが示された。





投稿者:尼野将誉











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