COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年6月28日水曜日

肩甲骨の可動域変化について

本日は加齢による肩甲骨の可動域の変化について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。




田中ら:肩甲骨の加齢による可動域の変化についての検討 The Shoulder Joint,Vol.19,No.1,118-122,1995.


この文献では水平面での上肢屈曲、伸展運動の際に肩甲骨が体幹に対してどのように動作するのか、そして加齢によりその動作がどのような変化をするのかを知る目的で研究されています。

対象は3才、5才幼児46(3才児―男児11、女児7 5才児―男児16、女児12)、および30代男性20名、60代男性23名の成人である。
対象に対して水平屈曲、伸展を行わせ、以下3つのフェーズで上肢と左右の肩甲棘のなす角度を測定されています。
A) 外転90°
B) 屈曲90°
C) 最大水平屈曲位
また、成人についてはD)最大水平伸展位についても計測されています。

計測から以下のことが報告されています。
AB間 左右の上肢のAB(90°、計180°)の運動時に肩甲骨は幼児で平均79°、
30代で58°、60代で51°と減少している。
BC間 幼児で平均16°、30代で13°、60代で7°であった。
AD間 30代で15°、60代で7°であった。

上記報告から加齢と共に肩甲骨の可動性が低下していることが伺えます。また、上記した角度は平均値であり、同じ年代間でも個人差は大きいと感じました。
当然ではありますが、加齢により軟部組織や関節構成体は変性していきます。年齢だけでなく、個人差は様々な要素から生まれると考えられます。臨床で可動域を評価する際に健側の状態をしっかり把握することが重要であると改めて感じました。

肩関節運動では肩甲上腕関節のみでなく肩甲胸郭関節等、多くの関節が関与することが知られているかと思います。今回は肩甲胸郭関節に焦点が当てられていますが、肩甲骨の内外転の動作のみと限局しています。評価していく上で、関節の正常な動作を知ることは重要になると思います。他の動作時の肩甲骨運動や、他の関節運動も勉強したいと思います。


投稿者:天鷲翔太

2017年6月27日火曜日

【文献紹介】幼小児における外側円板状半月に対する鏡視下手術の検討

今回は小児の円板状半月板における臨床成績ついて述べられた文献を紹介させていただきます。


林哲生他:幼小児における外側円板状半月に対する鏡視下手術の検討.整形外科と災害外科.55(1).92-94.2006



 対象は関節鏡視下半月板切除を施行された12歳以下の小児膝7例8膝を対象とし、術前後の半月損傷治療成績判定基準(JOA)と単純X線を用いて臨床成績を評価されていました。尚、全例受傷機転は不明であり、明らかな外傷も認めませんでした。

 結果から、全例で半月板の水平断裂を認め、完全型のdiscoidが8膝中7膝で認められた。術式は7例が亜全切除で、1例のみ部分切除が施行されていました。また、JOAは平均が術前の50.0点から96.3点と著明に改善されていました。

 文献内で紹介されている症例もLMの完全型discoidと診断され、亜全切除を施行されており、JOAが40.0点から95.0点へと改善されていました。

 以上のことから、低年齢でのdiscoidは完全型が多いことがわかりますが、このようなことは他の文献でも紹介されています。


 ここで気になったのは、
「低年齢で完全型が多く、加齢により不全型が増加するのは何故なのか?」
というところです。

 本来半月板は、膝関節の運動に伴って移動するが、円板状半月板ではその動きが阻害されやすく、疼痛やロッキングといった症状が出やすいとされています。
 本来の半月板の動きを行わないということは、周辺の軟部組織にも少なからずストレスが生じていることでしょう。
 加齢により不全型が増加するのは、discoid部分にストレスがかかり続け、年月を重ねて磨耗し、完全型から不全型に変化しているのではないかということが考えられます。つまり、軟部組織のストレスが長年かかり続けているということにつながるのではないでしょうか。

 小児の段階でdiscoidの切除を行なった場合、術前にかかっていたであろう軟部組織バランスを修正してあげることが、術後のリハビリでは大切になるのではないかと思います。
そのため、小児のdiscoid切除術後のリハビリを担当させていただく際は、術前評価をしっかり行うことが重要であると考えています。

 今回紹介した症例だけでなく、すべての疾患においても術前評価は重要な意味を持ちます。最適な評価を行えるように、さらなる知識・技術の向上を図りたいと思います。


投稿者:高橋 蔵ノ助






2017年6月25日日曜日

【文献紹介】加齢に伴う腱板機能のX線学的検討

本日紹介させていただく文献は腱板の機能についてX線を用いて年齢別に検討された文献です。

上里元他:加齢に伴う腱板機能のX線学的検討.肩関節20(1):127−130,1996

対象は非検査側に肩関節障害がある患者の反対側30肩です。
撮影方法は下垂位とscapula planeでの45°挙上位で撮影されています。
X線からcuff indexを算出し、年代別に比較しています。
結果は加齢に伴いcuff indexの値は上昇した結果となりました。
筆者は加齢に伴いcuff indexが上昇した要因として三角筋と棘上筋のforce coupleの破綻により、相対的に腱板機能が低下するためもと考察しています。

今回紹介させていただいた文献から、X線より所見からcuff indexが増加が確認でき、腱板の機能低下が予測されることがわかりました。
force coupleの破綻の要因としては腱板の損傷、変性、拘縮が考えられると思います。
臨床では損傷、変性、拘縮または別の要因の何によってforce coupleが破綻しているかを見極める必要があると思います。
損傷や変性に関しては MRIやエコーでの評価が有用であると考えています。
拘縮に関しては触診で見極める必要があると考えています。どことの組織間で拘縮が生じているのか、それが癒着による滑走障害なのか、スパズムによるものなのかなど丁寧に評価するよう心がけています。
まだ触診技術に関しては未熟な点が多いため詳細な評価ができるよう触診の練習をしていきます。

第117回京都支部定例会

本日、第117回京都支部定例会を行いました。
今回は京都下鴨病院の團野翼先生に「腱板断裂術後の再断裂を防ぐ工夫と考え方」についてレクチャーしていただきました。










腱板断裂の分類や修復、解剖など基本的なことからレクチャーしていただきました。
今回は再断裂しやすい時期にすべきことは何か、治療を進めていく中で解剖学的にどの組織を操作すべきなのか文献的な報告を交えてレクチャーしてくださり、とても分かり易かったです。
実技では触診と再断裂予防を考慮した操作方法をレクチャーしていただきました。
患者さんを治療させていただく前に、まずは健常者の肩でしっかりと操作ができなければいけないので、朝の触診の時間を利用して練習していきたいと思います。


7月は滋賀支部と合同でベーシックセミナーを開催するため、定例会はお休みです。
次回の定例会は8月26日です。
当院の為沢一弘先生による「膝OAにおける歩行時痛の解釈」です。
定員は24名です。先着順になりますのでお早めにお申し込みください。

2017年6月20日火曜日

【文献紹介】前十字靭帯損傷患者における片脚スクワット中の膝周囲筋活動の特性

本日は、ACL損傷後の片脚スクワット時の筋活動について述べられた文献を紹介させていただきます。
福田航他:前十字靭帯損傷患者における片脚スクワット中の膝周囲筋活動の特性.理学療法科学28(2).201-204.2013


対象はACL損傷患者9名の健患側と、健常人8名の利き足の合計26膝としており、損傷群は全てノンコンタクトでの損傷とされています。また、損傷群は脛骨前方引き出し量が健患差4mm以上有する者とされています。

測定項目は、片脚スクワット時における動作側の膝周囲筋の筋活動を測定されています。
筋活動の測定は、表面筋電図計を用いて行い、内側広筋(VM)・外側広筋(VL)・内側ハムストリングス(MH)・外側ハムストリングス(LH)を測定し、表出された筋電図データから%MVCを求めた。

結果は、%MVCにおいて、4筋全てが3群間で有意差を認めていました。
また、多重比較の結果からVMVLにおいては患側が健側と比較して有意に小さく、VLは健側がコントロール群と比較して有意に大きくなっていました。
反対に、MHLHでは患側が健側及びコントロール群と比較して有意に大きくなっていました。

以上の結果から、ACL損傷膝では、VLVMといった膝伸展筋の筋活動が低下し、LHMHといった膝屈曲筋の筋活動が大きいことがわかります。このことは、ACL損傷により靱帯による前方引き出し制動力が低下し、膝屈筋群の代償による制動が行われているのではないかということは容易に考察できると思います。


前回も述べさせていただきましたが、ACLR後の理学療法を行う際は、
・再建靭帯の修復過程を把握すること
・いつ頃から再建靭帯にどの程度のストレスをかけていけばいいのか
などといったことに注意しながら理学療法を進めさせていただいています。

筋力も同様に、STG法にて再建靱帯を作成した場合、半腱様筋や薄筋の修復を考慮し、いつ頃から筋力トレーニングを行うかなども考慮して理学療法を行う必要があると心得ています。

保存療法で行う場合は、どのような筋バランスであることが、患者様の膝関節同様を最小限にすることができるかを考えて、筋力トレーニングの負荷量や頻度の決定を行う必要があると考えています。

今回紹介した文献の他にも、ACL損傷後の筋力についての報告は多数あるため、さらに知識を深めていきたいと思います。



投稿者:高橋 蔵ノ助

2017年6月19日月曜日

【文献紹介】膝蓋大腿関節の接触圧力分布および膝蓋骨Trackingの同時測定システム




 本日は膝蓋大腿関節(以下PF関節)の接触圧力分布および膝蓋骨trackingを研究された論文を紹介させていただきます。





今井和実ら:膝蓋大腿関節の接触圧力分布および膝蓋骨Trackingの同時測定システム.日本臨床バイオメカニクス学会.Vol,14,1992


著者らは、2方向ビデオ撮影法による膝蓋骨trackingと、電気角度計によるTF関節運動、管電圧導電ゴムセンサによるPF関節部の接触圧力をそれぞれ計測されています。



結果の一部を紹介させていただきます。

膝蓋骨関節面上の接触領域は膝屈曲とともに近位へ移動し、90°以上の屈曲角に対して大腿四頭筋腱の大腿骨関節面への接触が見られました。

膝蓋骨への作用荷重は屈曲とともに漸増し、膝屈曲90°付近で最大となった後減少し、また、60°以上の屈曲角では大腿四頭筋腱部の作用荷重は膝屈曲に伴い増加したと報告されています。



今後もPF関節のバイオメカニクスについて勉強し、PF関節障害の患者さんを担当する際には、このようなPF関節のバイオメカニクスを念頭に置いて患者さんの主訴を聴取し、PF関節の圧を高めている要因をみつけて治療ターゲットを絞りたいと思います。


投稿者:鷲見 有香

【文献紹介】人工関節全置換術後の深屈曲時の下腿の回旋について

本日紹介させていただく文献はTKA後の深屈曲時の下腿回旋について検討した文献です。


渭川徹秀他:人工膝関節全置換術後の深屈曲時の下腿の回旋について.日本関節病学会誌32(4):449−453,2013

対象はPS型のTKAを施行した156膝です。自然下垂位と他動屈曲にて下腿回旋可動域を測定しています。
結果は以下の通りでした。
屈曲可動域→下垂位:約124° 他動:約136°
回旋可動域→下垂位:約3°内旋 他動:約4°内旋
わずかしか内旋しなかった症例や、外旋した症例を存在したと報告しています。

筆者は結果からTKA後の深屈曲の動態は正常膝で見られるような下腿内旋や外側への亜脱臼などは見られず、下腿回旋方向や量も異なるものであったと述べています。

TKA後の下腿の動態については様々な報告がありますが、機種や術後成績なども異なり、一定の見解が得られていません。
下腿回旋についてだけでも多くの論文があるので、何本も読んでどのような報告が一番多いのか、下腿が外旋する背景には何か因子があるのか調べて見ようと思います。

2017年6月17日土曜日

【文献紹介】大腿骨前脂肪体の柔軟性と筋力・膝関節可動域の関係性


【文献紹介】大腿骨前脂肪体の柔軟性と筋力・膝関節可動域の関係性

今回は大腿骨前脂肪体(PFP)の柔軟性が筋力・可動域に与える影響についての文献を紹介します。


水島 健太郎ら:50 回日本理学療法学術大会(東京)

 

本研究の目的は,超音波エコー(US)のShear Wave Elastography を用いて、健常高齢者群(N群)とTKA群のPFP柔軟性を評価し、TKA群のPFP柔軟性とROMおよび筋力の関係性を比較検討されています。

対象は,N 1522膝(男性5人、女性10人、平均年齢73.1±4.0歳)、TKA 1316膝(男性3人、女性10人、平均年齢70.4±9.4 歳)とし、大腿遠位部の長軸走査にてPFPを同定し、大腿直筋筋腱移行部と膝蓋骨上縁を結ぶ中点において短軸走査に変更した上で、PFPの組織弾性を測定されています。測定角度は、膝関節伸展位と90°屈曲位の組織弾性を各3回測定し、その平均値を算出、膝伸展筋力は膝関節90°屈曲位で5秒間の最大等尺性収縮を2回行い、平均値の体重比(kgf/kg)を算出し、算出したPFP柔軟性を群間で比較、またTKA群におけるPFP柔軟性と膝関節屈曲および伸展ROM、膝伸展筋力との相関を求められています。

結果は膝伸展位・屈曲位ともにPFPの柔軟性は有意に低下し、TKA群におけるPFP柔軟性と膝ROMおよび伸展筋力との相関は、PFP柔軟性と膝伸展筋力のみ負の相関が認められ、膝ROMPFP 柔軟性には相関が認められなかったと報告されています。

結果から、TKA後における膝蓋上嚢の癒着・滑走性の低下だけでなく、この深層に存在するPFPも膝の屈伸運動に関与していることがわかります。また、筋力との相関も認めていることからPFPの柔軟性低下によって、膝蓋上囊に付着する膝関節筋や、膝蓋上囊およびPFP周囲の広筋群の収縮効率を低下させることが、膝伸展筋力の低下につながっていることが考えられます。

このことから、膝蓋上嚢をアプローチしてもextention lagが改善されない・疼痛が残存するといった症例に対して、表層にある膝蓋上嚢を評価・アプローチするだけでなく、深層まで評価していくことが大事であることが分かり、左右差であったり、アプローチ後どう変化するのかなどの即時効果も求めていくことがアプローチしていくこと上で大事であると感じました。

 
投稿者:小林 駿也

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