人工膝関節全置換術(以下TKA)を施工された患者様に対して理学療法を行う際、可動域制限に対して様々なことが考察を考えられていると思われます。中でも、大腿骨後顆の厚さ(以下PCO)はCR型TKA術後の膝関節屈曲可動域と相関を示すと報告されていますが、詳細は依然として意見が分かれています。
今回の文献では、内外側 PCO と屈曲 ROM の変化の関係を検討し,インプラントの特性を考慮した術後理学療法を検討されています。
諸澄孝宣 他:人工膝関節全置換術の膝関節屈曲可動域に関する考察ー内外側の大腿骨後顆の厚さの影響と術後理学療法についてー:第46回日本理学療法士学術大会(宮崎)
対象は、TKA を施行し、術後12カ月以上の経過観察が可能であった症例 98 名 106 膝関節(手術時平均年齢 72 歳(53-83 歳)、男性18名、女性80名)とし、手術は全例 Depuy社のMobile-Bearing型LCS人工膝関節システムを使用していました。術前後の屈曲ROM を計測し、3 次元下肢アライメント解析システムを用いて、内外側 PCO をそれぞれ計測した。結果より,各 PCO の変化量と術後屈曲可動域についてはスピアマンの順位相関係数を用いていました。
結果は、膝関節屈曲ROMは術前118±17.0°、術中115±8°、術後112±15° で、術前後差は-6±16° でした。内側 PCOは術前26.4±2.7mm、術後26.2±3.9mmで、術前後差は-0.2±3.6mm(増大 54 例,減少 52 例)であった。外側PCOは術前25.1±2.4mm、術後28.5±3.8mmで、前後差は3.4±3.8mm(増大89例、減少17例)でありました。内側・外側PCOの変化量と術後屈曲角度に相関は認められなかった。
今回の結果から、術後膝関節屈曲可動域制限の原因として、内外側PCOの厚さが関与する可能性は考えられるが、その他の軟部組織由来の制限が大きく影響しているのではないかと推察できるのではないでしょうか。
軟部組織由来の制限であるならば、理学療法によって制限が改善することが一番に考えられると思います。術後理学療法を行う際には、制限因子が一体何なのかをしっかりと評価することが大事になるのではないかと、再確認することが出来ました。
投稿者:高橋 蔵ノ助