COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年5月31日水曜日

【文献紹介】膝屈筋腱を用いたACL再建術後の採取腱の再生と膝屈筋力について

前十字靭帯損傷に対するACLRを行う際、膝蓋腱とならび多く使用される膝屈筋腱、中でも半腱様筋腱や薄筋腱を用いたSTG法で行うケースが多々あると思われます。

そこで今回は、膝屈筋群採取後の再生様腱組織が術後どのように機能するかについて報告している文献を紹介したいと思います。

中村英一ら:膝屈筋腱を用いたACL再建術後の採取腱の再生と膝屈筋力について:整形外科と災害外科.50(1).130-133.2001




対象はSTG法にてACLRを行なった20膝で、視診・MRIにて採取部に再生様腱組織が確認された群を再生群、それ以外を非再生群とされており、術後経過期間は平均24ヶ月でありました。
これらの対象に対し、Cybexを用いて等速運動での膝屈筋力の最大トルク値、最大自動膝屈曲角度の対健側差(flexion lag)を測定し、両群の比較を行われていました。

結果は、最大トルク値では有意な差は認められず、flexion lagで非再生群は再生群に比べ有意に大きな値を示していました。

膝屈筋群の収縮形態は各々の筋でで異なり、半腱様筋は大腿二頭筋に比べ、より屈曲角度が大きいほど筋力が発揮しやすいとされています。

今回の結果から、最大トルク値が変わらないものの、再生群でflexion lagが有意に小さかった原因として、採取後も半腱様筋の収縮動態が術後も変わらず残存していることが考えられます。

また、再生した半腱様筋腱は本来の脛骨付着部とは異なり、近位側で下腿筋膜へ移行する様に再生することが他の文献でも紹介されていますが、今回紹介した文献の中では、より中枢側では正常とほぼ同等の走行を示し、術後も本来と同様の働きをすることが示唆されています。


術式やその後の組織修復過程を知っておくことは、術後理学療法を進めていく中でとても重要になると考えています。さらに、組織の動態を理解しておくことも必要不可欠です。
今後も、病態理解や術後理学療法を行う上で必要な知識を積み重ねていき、より良い理学療法を提供できるよう、努力していきたいと思います。


投稿者:高橋 蔵ノ助





2017年5月30日火曜日

【文献紹介】ラット膝関節の運動制限と膝蓋下脂肪体の萎縮

本日紹介させていただく文献は、ラットを用いた膝蓋下脂肪体(以下IFP)の拘縮について書かれた文献です。


ラット膝関節の運動制限と膝蓋下脂肪体の萎縮:松崎太郎ら 日本理学療法大会2011



IFPの拘縮は深屈曲可動域、伸展可動域の制限因子となり、TKAの際には切除する場合もあります。しかし、IFP切除による膝蓋腱の変性や短縮、疼痛の出現など、デメリットも報告されています。そこで、今回はIFPの拘縮に着目してみました。

以前、IFPは関節固定にて脂肪細胞面積が減少するという文献紹介がありましたが、今回紹介する文献は9週齢のラットを5群(対照群、関節固定群、固定+運動群、脱神経群、脱神経+固定群)に分けたのち、2週間後のIFPを顕微鏡にて観察しています。

それぞれの群のIFPの面積をみていくと、固定群、固定+運動群、脱神経+固定群で面積が減少していたという結果であり、固定によって脂肪細胞が減少しました。

このことから、IFPは関節運動に関与することが考えられ、早期運動療法がIFPの拘縮予防につながることが予測できると思います。鏡視下手術やTKA術後の患者さんではIFPに侵襲が加わるため拘縮が生じやすく、侵害受容器が豊富なIFPでは疼痛が伴うと考えられるため、術後早期は炎症管理を徹底し、IFPが拘縮する2週間以内に可動性を獲得していく必要性を改めて感じました。

投稿者:鷲見 有香

2017年5月28日日曜日

第116回京都支部定例会

 昨日、第116回京都支部定例会を行いました。
今回は京都下鴨病院の中井亮佑先生による「腱板断裂に対する保存療法の可能性」についてレクチャーしていただきました。





腱板断裂に対し保存療法と手術の選択については議論があり、一定の見解が得られていません。
今回、中井先生のレクチャーを通して学んだことは、腱板断裂というす診断であっても病態や病気が様々であり、実際にどのファクターが症状を起こしているのかを明確にすることが治療方針を決定するにあたって重要だということです。
医師と理学療法士との間で議論を交わし個別に治療方針を決定していく大切さを感じました。

正確な評価を行うには、やはり正確な触診技術が重要となることを日々の臨床で痛感しています。
実技のレクチャーでは腱板筋群の触診とそれに対する治療を行っていただきました。
今回学んだことを踏まえて今後も触診の練習を積み重ねていきたいと思います。

次回の定例会は6月24日です。
京都下鴨病院の團野翼先生によつ肩関節疾患に対する評価と治療1「腱板断裂修復術後の際断裂を防ぐ工夫と考え」です。
定員24名で、お申込みは6月1日より先着順になりますので、お早めにお申し込みください。

投稿者:大渕篤樹

2017年5月22日月曜日

【文献紹介】自家半腱様筋腱・薄筋腱採取が前十字靭帯再建術後の膝屈曲筋力に及ぼす影響について


本日は前十字靭帯(以下、ACL)再建術後の膝屈曲筋力に及ぼす影響について書かれた文献を紹介させていただきます。
平田光司ら:自家半腱様筋腱・薄筋腱採取が前十字靭帯再建術後の膝屈曲筋力に及ぼす影響について 臨床スポーツ医学:Vol.14 No219972

ACL再建術には、BTB法やST/G法があり、BTB法に比べST/G法では膝関節前面の疼痛が生じにくく、大腿四頭筋の筋力回復が良好であることから、ST/G法が主流となっています。また、半腱様筋の形態は紡錘状筋であり、深屈曲域で筋力を発揮することからも、筋力低下を最小限に抑え早期復帰を目指すスポーツ選手に対しては半腱様筋腱を再建靭帯として使用するのが妥当だと考えられています。

今回紹介する文献では、再建材料の異なった(Ⅰ群:人工靭帯、人工靭帯+腸脛靭帯、Ⅱ群:STSTG2群を対象に術後1215週経過時の1)最大膝屈曲トルク、2)最大膝屈曲トルクの発揮角度、3)膝屈曲60°での発揮トルクを採取し、採取したデータから、4)ピークトルクが発揮されてから膝屈曲60°に至るまでのトルクの減衰率を算出し比較検討されています。

結果は一部を紹介させていただきます。
膝屈曲60°での発揮トルクの比較では、Ⅰ群は健側に対し患側-4Nm、Ⅱ群では健側に対し患側-31Nmでした。また、Ⅱ群の膝屈曲60°移行も急激に発揮トルクが減少していました。これらの結果からも、ST/G法では膝屈曲位での筋力は発揮しにくくなることが分かりました。

今回調べてみて、ST/G法にてACL再建術をされた患者さんでは、膝関節深屈曲トルクの低下が生じることを念頭に置き、術後のリハビリを行う必要性を改めて感じました。今後は、採取腱の修復過程についても知識を深めていきたいと思います。

投稿者:鷲見 有香

2017年5月20日土曜日

【文献紹介】膝前十字靱帯再建術後早期からの大腿四頭筋に対する電気刺激の有効性

 今回は、ACLR術後早期からの大腿四頭筋に対する電気刺激の有効性についての文献を紹介させていただきます。



和田 健征ら:膝前十字靱帯再建術後早期からの大腿四頭筋に対する電気刺激の有効性

昭和伊南総合病院 リハビリテーション科ACLR術後

ACLR術後に大腿四頭筋の等尺性収縮力が低下している症例に対して、EMSが有効とされており、術後早期からも使用されるようになってきた中で、今回は大腿四頭筋に対する術後早期からのEMSの有用性を検討する目的で調査されています。
 対象はACLRを施行された患者のうち、12例12膝(平均年齢30.2歳、男性6例・女性6例)とされ、術後4日から14日まで大腿四頭筋に対しEMSを施行し、術後4日、術後1週および術後2週の時期での大腿四頭筋の表面筋電図所見について比較検討されました。

 結果としてはRF,VMおよびVLにおいて有意な経時的変化を認めず、RFとVMは術後2週でのみEMS施行後が施行前より有意に大きかったが、VLはどの時期においても有意差は認めなかったと報告されいています。

 結果から、術後2週間を経過した時点でのEMSはRF、VMには効果的であると考察できますが、VLにおいては効果を認めていません。また、術後早期での施行も効果がないことがわかります。これは手術侵襲に伴う炎症が関与していることが推察でき、セラピストが介入していくうえで、まずはEMSの適応を理解しなければならないことが分かります。また、術後早期~2週間でEMSが使用できないことを踏まえた上で、他の方法での大腿四頭筋の等尺性収縮を促す方法を見出していかないといけないので、もっと患者さんの特異性に合わせたアプローチを身につけるため、日々精進していきたいと思います。

投稿者:小林駿也


2017年5月16日火曜日

【文献紹介】人工膝関節全置換術の膝関節屈曲可動域に関する考察ー内外側の大腿骨後顆の厚さの影響と術後理学療法についてー

人工膝関節全置換術(以下TKA)を施工された患者様に対して理学療法を行う際、可動域制限に対して様々なことが考察を考えられていると思われます。中でも、大腿骨後顆の厚さ(以下PCO)はCR型TKA術後の膝関節屈曲可動域と相関を示すと報告されていますが、詳細は依然として意見が分かれています。

今回の文献では、内外側 PCO と屈曲 ROM の変化の関係を検討し,インプラントの特性を考慮した術後理学療法を検討されています。 




諸澄孝宣 他:人工膝関節全置換術の膝関節屈曲可動域に関する考察ー内外側の大腿骨後顆の厚さの影響と術後理学療法についてー:第46回日本理学療法士学術大会(宮崎)


対象は、TKA を施行し、術後12カ月以上の経過観察が可能であった症例 98 名 106 膝関節(手術時平均年齢 72 歳(53-83 歳)、男性18名、女性80名)とし、手術は全例 Depuy社のMobile-Bearing型LCS人工膝関節システムを使用していました。術前後の屈曲ROM を計測し、3 次元下肢アライメント解析システムを用いて、内外側 PCO をそれぞれ計測した。結果より,各 PCO の変化量と術後屈曲可動域についてはスピアマンの順位相関係数を用いていました。

結果は、膝関節屈曲ROMは術前118±17.0°、術中115±8°、術後112±15° で、術前後差は-6±16° でした。内側 PCOは術前26.4±2.7mm、術後26.2±3.9mmで、術前後差は-0.2±3.6mm(増大 54 例,減少 52 例)であった。外側PCOは術前25.1±2.4mm、術後28.5±3.8mmで、前後差は3.4±3.8mm(増大89例、減少17例)でありました。内側・外側PCOの変化量と術後屈曲角度に相関は認められなかった。

今回の結果から、術後膝関節屈曲可動域制限の原因として、内外側PCOの厚さが関与する可能性は考えられるが、その他の軟部組織由来の制限が大きく影響しているのではないかと推察できるのではないでしょうか。

軟部組織由来の制限であるならば、理学療法によって制限が改善することが一番に考えられると思います。術後理学療法を行う際には、制限因子が一体何なのかをしっかりと評価することが大事になるのではないかと、再確認することが出来ました。


投稿者:高橋 蔵ノ助

2017年5月15日月曜日

【文献紹介】内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)の解剖



 
本日は、内側膝蓋大腿靭帯の機能解剖についての論文を紹介します。




望月智之  秋田恵一 MB orthop.287:51-54.2015

 
対象は解剖実習体817膝を用いてMPFLの剖出および付着部の同定を行なっています。
結果は、すべての標本においてMPFLは大腿骨内側より、外側に向かって扇状に広がって走行するのが観察でき、内側広筋には強固に付着しておらず両者は容易に剥離することが可能であったとのことです。
MPFLの近位部は中間広筋内側に強固に付着しており、遠位部は内側膝蓋支帯の深層に付着し、内側膝蓋支帯は膝蓋靱帯に連続していた。


本研究において最も重要な所見と感じたのは、MPFLの膝蓋骨側は内側広筋ではなく中間広筋に付着していたこということです。
MPFLの膝蓋骨側付着部に関しては膝蓋骨内側の近位3分の2に付着しているとの報告や、内側広筋に付着しているとの報告も多く、その結果は様々でした。
このことから術後早期の中間広筋の収縮を促すことは関節可動域の改善において重要であり、膝蓋上包の癒着を予防するだけでなく内側支持組織の拘縮にも関与する可能性があることが考えられます。


今後はMPFLと中間広筋の付着部構造を念頭に置き理学療法評価や治療を行なっていく必要があると感じました。


投稿者:大渕 篤樹

2017年5月13日土曜日

【文献紹介】膝半月板単独損傷術後患者の膝伸展可動域制限に影響を及ぼす因子について


今回は、膝半月板単独損傷術後患者の膝伸展可動域制限因子について書かれた文献を紹介させていただきます。

 加藤雄太ら:膝半月板単独損傷術後患者の膝伸展可動域制限に影響を及ぼす因子について
 第50回日本理学療法学術大会(東京)          

 本研究の対象は膝半月板単独損傷による手術を施行し、スポーツ復帰を目的とした患者66例です。 術後3ヶ月時点での膝伸展可動域をHHDを用い、1mm単位で測定されました。 HHD測定値より10mm未満を良好群(46例)、10mm以上を不良群(20例)に分類し、 ①年齢、②性別、③BMI
④術式、⑤損傷部位、⑥損傷サイズ、⑦手術までの期間を後ろ向きに調査されました。
 結果はHHD不良群に関与する因子として肥満群、LM損傷群が抽出されました。 結果から、LMは解剖学的特徴から膝関節伸展時の大腿骨顆部に伴う移動量、screw home movementによる下腿外旋に伴う前方移動が必要となるが、この動きが乏しいために可動域制限につながっていると考えられます。

  このことから今後、半月板損傷後の膝伸展可動域制限をもつ症例に対して、各組織に伴う半月板の動き、半月板の動きを制限する因子に十分着目してアプローチして行きたいとおもいます。

投稿者:小林駿也


2017年5月12日金曜日

【文献紹介】TKA後における術創部周囲の皮膚可動性について




 
膝関節可動域の制限因子として、寄与率が高いのは骨間筋や関節包であり、皮膚組織の寄与率は15%程度と言われています。

本日の論文は、他動膝屈曲時の膝前面の皮膚可動性に着目し、健常高齢者と比較することでTKA術後患者の皮膚可動性の特徴を明らかにすること。また、TKA術後患者を獲得している屈曲可動域に応じて群分けし、術後屈曲可動域と皮膚可動性の関係性を検証されています。尚、皮膚可動性の測定は、膝関節周囲の皮膚上に測定点をマークし、膝関節を他動屈曲させたときの縦と横方向の測定区間距離を計測されています。

結果から①TKA術後患者の皮膚は健常高齢者と比較して特に膝蓋骨上部と膝蓋腱付近の縦方向の可動性が低下していること。②皮膚の縦・横方向の可動性は術後屈曲可動域に対する強い制限因子ではないこと、の二点が明らかにされています。

結果①に関して、日々臨床の中で感じており、改めて術後早期より拘縮予防に努める必要があると思いました。また、皮膚だけでなく、その深部にある軟部組織の柔軟性や組織間の動きを評価することが大切だと思います。知識や評価・治療技術を高めてTKA患者の術後可動域の成績がより良くなるように日々精進します。

 
投稿者:佐々木拓馬

2017年5月10日水曜日

【文献紹介】膝関節筋の肉眼解剖学的観察


本日は、膝関節筋の肉眼解剖学的観察について書かれている文献を紹介させていただきます。




安岡武紀:膝関節筋の肉眼解剖学的観察
-膝関節筋の形態と中間広筋および膝蓋上包との関係-  
久留米医会誌雑誌.Vol 74,14222011

 

膝関節筋は中間広筋の遠位深層の一部から分岐する線維であり、中間広筋の深層に位置しているとされています。また、膝関節筋の機能としては、膝蓋上包に停止部が存在することから膝伸展時の膝蓋上包の挟み込みを防止するとも言われています。


本論文では、ご遺体36対の膝関節筋の形態と大腿神経筋枝の分布を観察しており、また、中間広筋や膝関節筋の筋長、筋幅、筋厚の測定や大腿神経筋枝についても詳細に述べられています。その中でも私が一番興味を持ったのは、膝関節筋は近位部では狭く、遠位へ向かうにつれて広がり三角形を呈していたことでした。


膝蓋上包の癒着は膝関節の屈曲制限やextention lagの一要因として考えられるため、今回学んだ中間広筋や膝関節筋の解剖学的特徴や機能に基づいて評価を行ったうえで制限因子を見つけ、理学療法を行っていきたいと思います。



投稿者:鷲見有香


2017年5月9日火曜日

【文献紹介】膝関節屈曲動作時の膝周囲の皮膚の伸張性について




今回は、膝関節屈曲動作時の皮膚の伸張性について述べられている文献を紹介させていただきます。

和田直子他:膝関節屈曲動作時の膝周囲の皮膚の伸張性について.関西理学1241-442012

 

対象は整形外科学的および神経学的に問題がない健常者30名の右下肢を用いて行われており、それぞれの膝関節に伸展位にて脛骨粗面から膝蓋骨尖までの距離を基準距離とし、計5か所にマーキングを行い、足底が床面に接した状態で膝関節を他動的に屈曲30°位、60°位、90°位、120°位、150°位、最大屈曲位と設定されていた。また、それぞれの角度による皮膚の伸張性を測定されていました。また各部位において以下のように伸張差と伸張率を算出していました。

伸張差(各屈曲角度間における距離の差)(mm

=(求める屈曲角度での距離)-(求める屈曲角度-30°の屈曲角度での距離)

伸張率(伸張差を基準距離と比較した割合)(%

     =伸張差/基準距離×100

 

結果は、各々の角度で皮膚の伸張は見られたが、全ての部位(大腿部、膝蓋上嚢、膝蓋骨部、膝蓋靭帯部)において屈曲0°から30°で有意に皮膚の伸張率が増加したと述べています。

 

膝関節周囲の疾患に対しての手術を施行した際、可動域制限の一つとして、皮膚の伸張性が挙げられる場面も多々あると思います。今回の研究から、どの肢位で皮膚の伸張性が得られやすく、アプローチする軟部組織を明確にすることで皮膚の伸張性の低下が防げるのではないかと考えました。

 

私自身がこのような問題点を抱えた患者様を担当させて頂いた際、治療に役立てられるよう、さらに知識を深めていきたいと思います。

 

投稿者:高橋 蔵ノ助

2017年5月7日日曜日

【文献紹介】拘縮を伴った腱板断裂における肩甲骨周囲筋活動量の検討

本日紹介させていただく文献は腱板断裂症例における上肢挙上時の肩甲骨周囲筋の筋活動について検討された文献です。

岩下哲他:拘縮を伴った腱板だ裂における肩甲骨周囲筋活動量の検討.肩関節37(3):1141-1144,2013


対象は腱板断裂患者です。腱板断裂患者をさらに拘縮あり群、無し群に分け検討しています。
電極を貼付した筋は僧帽筋上部線維と下部線維です。測定肢位は座位で挙上角度は30°、60°、90°、120°で測定しました。
結果は全可動域において拘縮あり群の方が僧帽筋上部線維、下部線維ともに活動量が多かったと報告しています。
筆者はこの結果からGHjtの著しい可動域制限により肩甲骨を過度に上方回旋させることで上肢挙上動作を代償していたと考察しています。

拘縮肩は臨床でも多く経験する症例であると思います。
拘縮肩は関節が動かないだけでなく、GHjtとSTjtの協調運動も破綻しています。この論文を読んで拘縮治療とともに肩甲骨周囲筋の過活動に対してもアプローチをしていかなければいけないなと思いました。

2017年5月1日月曜日

【文献紹介】伏在神経膝蓋下枝の走行について


本日は、伏在神経膝蓋下枝の走行について報告されている文献を紹介させて頂きます。
松永和剛ら:伏在神経膝蓋下枝の走行について
整形外科と災害外科46(3):838840, 1997.

本文献では、実際のご遺体にて大腿遠位内側で内転筋管(Hunter管)を出た膝蓋下枝が皮下に出るまでの走行と縫工筋の関係について調べられています。

結果は、約半数の伏在神経膝蓋下枝は縫工筋筋腹を貫通して筋表面に走行しており、その他には縫工筋後縁を回り筋表面を前方に向かうもの、2本に分岐しレベルを違えて2本ともに筋腹を貫通し筋表面を前方に走るもの、2本に分岐し分岐し1本は筋腹を貫通し、もう1本は筋後縁を回って筋表面に出るものがあったと報告しています。
また、海外の文献を散見すると、Sirangらは、筋腹を貫通するものが半数を占めていたと報告しており、Arthornthurasookらは、筋後縁を回るものが半数以上だったとの報告がありました。

 今回調べてみて、伏在神経膝蓋下枝と縫工筋は密接な関係にあることを学びました。TKAでは皮切により伏在神経膝蓋下枝へ侵襲が加わる場合が予測できるため、TKA施行後に神経由来の膝前内側部の疼痛を訴えられる際には知覚障害などの神経症状を確認するとともに、縫工筋との関係も念頭に置きながら病態解釈にあたりたいと思います。



投稿者:鷲見有香


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