橋下淳ら:肩峰下圧の動態計測.臨床スポーツ医学vol.15,No.3,1998:263-266
この論文では、肩関節に対して観血的治療を行った患者260人を対象に、麻酔下にて肩峰下滑液包内に圧計測用のバルーンカテーテルを挿入した状態で肩関節の運動(前方及び肩甲骨面上の挙上及び下降、下垂位内外旋、肩90度外転位での内外旋)を行い、その時の肩峰下圧の計測を行われています。
結果、前方挙上と肩甲骨面挙上では後者の方が変動は少ないが、ほぼ同様の圧変化を示し、80度から圧が高まり始め130度から最大挙上にかけて圧が高くなるとされています。
下垂位内外旋では圧はほとんど変動せず、90度外転位での回旋では外旋では圧はほぼ変化せず、内旋では圧が著名に変化し、前方挙上時の約2倍の圧がかかるとされています。
また挙上に関しては30%の症例に関節拘縮や腱板や肩峰下滑液包の癒着を認め、この群は、肩90度外転位での内旋時と同程度の圧上昇を認めたとのことでした。
考察では、肩峰下インピンジメントでは、最も病態の進行したとされる腱板断裂でも肩峰と骨頭が直接衝突している実証はなく、滑液包内の圧が変動するだけで、腱板が挟まれている可能性は少ないことが考えられるとしています。
この論文を通して考えると、日々の臨床で肩関節の症例を診ていても、Hawkin's testが陽性で、Neer testが陰性もしくは両方が陽性である症例が多く、Neer test単独で陽性になる症例はあまり目にしない印象を持っていますが、それを裏打ちできる内容であったように思います。
またHawkin's testが陽性でNeer testも陽性である場合、後下方の拘縮や挙上に伴う外旋制限など、特に前方挙上を制限し圧の上昇を招くような著名な拘縮が存在している可能性を示唆できるのではないかと思いました。
投稿者:為沢一弘