今回は、「肩甲骨傾斜角の検討」について記載されている論文を紹介します。
この文献は、肩甲骨関節窩の傾斜角を実際の軟骨面から計測したものであり、肩関節唇損傷に対するアンカーを用いた修復時の、至適刺入角度を決定することを目的とされています。
対象は、ホルマリン固定された6例10肩の献体を用いて行われています。
方法は、関節面に垂直に0,2,4,6,8,10時の位置で6等分した関節窩の横断面を作成し、各部位における関節軟骨面と肩甲骨頚部へ向かう面との角度を計測されています。
結果は、関節窩は上方や上前方、後下方に比べて前下方後上方が鈍角になっていたとされています。
この文献では、前述したように関節唇損傷に対する手術時のアンカー刺入角度を決定するために行われたものですが、この結果から上腕骨頭が前下方や後上方へと移動しやすいのではないかと思われます。他の論文を読んでみても、関節窩の軟骨変性は下方に強く認められたとされており、肩関節挙上時に骨頭からの力学的ストレスが関節窩下方に加わることで生じたとされています。
つまり、肩関節挙上時には上腕骨頭が少なくとも後下方に移動だけるだけの軟部組織の柔軟性が重要ではないかと考えられます。
臨床上、肩関節疾患の症例を担当することがよくありますが、操作方法を少し変更するだけで緊張が軽減することなどもあり、解剖学や運動学に沿った徒手操作が必要であるとその都度感じます。
まだまだ、知識、技術ともに不足しており結果を出すことが出来ていないので日々努力していきたいと思います。
投稿者:団野翼