文献紹介
橈尺骨遠位端骨折の治療経験-尺骨遠位端骨折に内固定を行う立場から-
骨折 第32巻No.3 2010 p468-471
本日は、橈尺骨遠位端骨折症例に対して、橈骨のみでなく尺骨遠位端骨折に対しても内固定を行うことの有用性について報告された文献を紹介します。
橈尺骨遠位端骨折では、橈骨を内固定することによって尺骨遠位端骨折部は安定することが多いことや、弱くて小さな尺骨遠位端の内固定が難しい等の理由から尺骨は保存療法が選択されることも多いようです。尺骨遠位端骨折に対して保存治療が選択された場合、もしくはpinningのみによる固定が行われ、尺骨遠位端骨折が不安定なまま早期ROM訓練を行うと骨折部に変形や再転位を生じることがあるようです。
この報告では、プレート固定を実施した症例ではそのような二次的障害はなく、良好な経過を得たとの報告が述べられています。
尺骨遠位端骨折に対してプレートによる強固な固定がなされた症例は経験がありませんが、尺骨に対してpinningにより固定された橈尺骨遠位端骨折の患者さんを現在担当しています。
その方の手関節は、術後少しずつROMが拡大してきていますが、運動時に尺骨遠位端部の鋭痛を訴えられ、鋭痛を出さないよう気を付けながらリハビリをすすめているところです。
ROMの獲得はもちろんですが、pinning固定で生じる可能性のある尺骨の委縮や変形、それに伴う遠位橈尺関節の変形の可能性にも注意しながら今後のリハビリをすすめていこうと思います。