京滋支部京都会場代表世話人の小野志操です。このブログを閲覧いただきありがとうございます。
2014年8月29日にこのブログを開設して今日までで2週間が経過しました。
この間京都会場のスタッフが日替わりで日々更新してくれています。そのおかげで開設2週間で2000ヒット以上と驚異的なスピードで閲覧数が増えています。
このブログを開設するにあたって、私がスタッフのみんなにお願いしたことは、整形外科リハビリテーション学会京滋支部京都会場が運営するブログですから、
①「当会の運営情報を発信すること、つまり定例会の案内、報告をする」
ということが1点目です。
次に、
②「京滋支部のみならず、整形外科リハビリテーション学会の学術集会や全国研修会の案内、報告をする」ということが2点目です。
さらに、
③「整形外科領域に関連する学会や研修会の案内、報告をする」ということが3点目です。
そして、
④「読んだ文献を紹介する」
⑤「日常診療における疑問や雑感などを研究や個人情報に支障が無い範囲で書くこと」
の以上5点です。
このブログを開設した目的は、閲覧頂いている皆さんに情報を発信することは勿論ですが、スタッフのみんながブログを書くことで…、
「文章や構成を考える練習になること」、
情報を発信するために「情報収集する癖がつくこと」、
「如何に情報を提供すると分かり易く伝わるかを考えること」、
「日々文献を読むようになること」、
「日常診療の疑問や雑感を学術的に表現すること」、
(閲覧されておられる先生方にも「そういうことあるよな」的な問題提起になる等の波及効果も期待出来るかもしれません…)
そんなこんなを考えて、このブログをスタッフのみんなに開設してもらいました。
お願いした①~③はこの2週間でクリア出来ているんじゃないかと思っています。
開設2週間でそろそろ①~③の内容も現状では出尽くしてきていますので、そろそろ④・⑤に着手してほしいと思っていたりもします。
閲覧されておられる先生方も「○○勉強会案内」や「○○研修会案内」ばかりでは、「このブログはただの研修会案内ブログかぁ~」てな印象を持たれるように思います。
そこで、(本来私はあまり登場しないつもりをしているのですが…)今回は先陣を切って最近読んだ文献を紹介したいと思います。
Dr. Marc J Philippon先生が書かれたSingle Case Studyの紹介です。
(Journal of Sport Rehabilitation, 2009, 18, 118-134)
Philippon先生は股関節鏡の分野では世界的権威といっても過言ではない先生です。
FAIの概念は股関節痛の解釈に大きな影響を与えました。近年、股関節鏡下手術も盛んに行われるようになり、手術の適応や手技について学会でも多くの報告がなされています。
私が勤務する京都下鴨病院でも、今年の7月から産業医大若松病院の内田宗志教授が定期的にお越しくださるようになり、股関節痛を有する患者さんが増えていますし、私自身股関節鏡視下手術術後患者さんを担当させて頂く機会が増えてきました。
術後患者さんの中にはスポーツアスリートも少なくありません。
一定期間術後の運動療法を行なったのち、競技復帰をするための判断基準のひとつとして、この論文に記載されているReturn to sports testがあります。
写真は論文より引用しています。
このテストの臨床的印象としての感受性はいいように思います。
(a)は70°までの膝屈曲を繰り返します。疼痛や違和感なく30秒出来れば1点、3分出来れば6点です。
(b)は疼痛や違和感なく20秒出来れば1点、100秒出来れば5点です。
(c)も(b)と同じで20秒出来れば1点、100秒出来れば5点です。
(d)は30秒出来れば1点、2分出来れば4点です。
合計20点満点中17点以上あれば合格で、競技復帰に向けた練習再開が許可されます。
実際、日本でも幾つかの施設で採用されているテストですし、当院でも判断基準のひとつとして取り入れています。
患者さんにする以上、その意味や成り立ちをおおよそ理解する必要があると思い、今回紹介した論文に辿り着きました。
私が渉猟した限りではこの論文が元になっているようです。
術後療法の内容をフェーズ分けして段階的に行い、最後にこのテストを競技復帰の判断として採用し、良好な結果が得られていると書かれています。
術後9週で幾つかの評価とこのテストを行い、問題なければ競技復帰への練習を始め、問題があれば術後12週まで運動療法を行い再テスト、同様に問題があれば更に術後16週まで運動療法を行い再テストと記載されています。
このテスト以外にも幾つかの評価が健患側差無しになる必要がありますが、このテストが重要視されています。
論文を見つけて「なるほど根拠があるんだ」と思いましたが、読んでみると、
論文中に「現在、何の有効性や信頼性もないけれども、臨床的にこのテストがスポーツへの復帰支援に有効であることを発見した。」と記載されています。
つまり、「根拠はないけど使えるテスト」ということです。
決してこのテストを否定している訳ではありません。
この論文を読んで私が感じたことは、この「スポーツテスト」は現在世界的な基準の一つとして使われている「有用なテスト」であるということと、どのような形であっても有用である可能性があるのであれば、「ちゃんと論文にするべき(出来れば英語で)」ということです。
股関節のリハビリテーションについては自分自身がまだまだ勉強中です。でも、臨床で得たものは一つ一つ発表し、いいものはみんなで共有できるように情報を発信していきたいと思います。
投稿者:小野志操