COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年12月3日月曜日

【文献紹介】尺骨茎状突起骨折に対しての放置症例について

今回は、尺骨茎状突起骨折の何も介入を加えずに放置していしまった症例についての文献を紹介します。

対象
橈骨遠位端骨折に尺骨茎状突起骨折を合併した14名(15肢)

方法
15肢を尺骨茎状突起の先端部骨折と基部骨折に分類
疼痛の有無
骨癒合
尺屈回旋テスト
ulnar variance
について調査しています。

結果
先端部骨折と比較して基部骨折は偽関節を生じやすく、疼痛も残存しやすい傾向にあると報告されています。
また、疼痛を生じる例では、3mm以上のplus varianceを持つか尺屈回旋テストが陽性であったと報告していま
す。橈骨遠位端骨折の画像所見として尺骨茎状突起骨折の有無は画像所見として着目します。しかし、骨折の
有無だけでなく部位についても観察して行く事が大切なのではないかと感じました。さらに、尺骨茎状突起の
周囲にはTFCCや尺側手根伸筋腱などの軟部組織も存在します。その点に関しても注意して評価する事が多節
なのではないかと考えました。


久枝啓史、萩原博嗣・他:橈骨遠位端骨折に合併する尺骨茎状突起骨折放置例の治療成績・整形外科と災害外科.2000492):p481-484

2018年12月1日土曜日

【文献紹介】腰痛診断のpitfallとなりやすい上・中殿皮神経の絞扼ついて

本日は腰痛診断のpitfallとなりやすい上・中殿皮神経の絞扼ついて紹介させて頂きます。
 

  

殿皮神経の絞扼性神経障害は疾患概念が認知されておらず、MRIでも描出されません。また腰椎疾患に類似した紛らわしい症状を呈することもあり、診断上pitfallとなりやすいと言われています。

殿皮神経は、SCN(上殿皮神経)・MCN(中殿皮神経)・ICN(下殿皮神経)から構成され、頻度が高いのはSCN、MCN障害とされています。

SCNは腸骨稜上縁に筋膜が密に付着する部位を複数の内側枝が走行するところで絞扼されやすく、外側枝は腸骨稜より頭側で筋膜を貫通するため絞扼されにくいと報告されています。

MCNはS1からS3椎間孔へ出た後、分岐・吻合しつつ交錯しながら殿部皮下組織へと走行します。筆者らの解剖学的研究では、MCNの枝は84%がLPSL(後仙腸靭帯)の背側を通過しますが、16%はLPSLを貫通するためLPSLによる絞扼をうけると報告されています。



PSIS付近の疼痛の多くはOne finger testが特徴とされる仙腸関節障害を疑う所見の一つです。仙腸関節障害は特異的な症候学的所見や画像所見がなくブロックの有効性によって確定診断されてきました。
仙腸関節を後方で連結するLPSLは仙腸関節の支持性を担う重要な靭帯であり機械的ストレスの大きい靭帯です。村上先生らの報告では、仙腸関節内へのブロックよりもLPSLのブロックの方が有効な症例が多いと述べられています。筆者らはLPSLによるMCN絞扼が実在することを解剖で確認しLPSL切開によるMCN剥離術を行い、臀部痛の症例に対して良好な治療成績をえられたと報告しています。

LPSLへのブロックが有効なMCN絞扼と仙腸関節ブロックが有効な真の仙腸関節障害とは分けて考えるべきですが、重症例では両者を併せ持っている可能性もあります。

実際の臨床でも腰殿部痛を主訴とする症例が多く、病態解釈に難渋することがあります。
SCNやMCN絞扼では座位での疼痛が多いとされていますが、梨状筋症候群や仙腸関節障害、仙結節靭帯障害、椎間板ヘルニア、その他にも座位姿勢にて腰殿部痛が出現しやすい病態があります。椎間関節障害でも殿部に疼痛が出現します。
しかし、すべて病態が異なるため適応となる治療も変わってきます。やはり診断、理学療法士としては評価が重要と考えます。少しでも多くの患者さんを良くできるよう、これらの知識を念頭において毎日患者さんを診て悩んでいこうと思います。


投稿者:大渕篤樹

【文献紹介】三角線維軟骨の損傷形態と疼痛との関連性についての検討

 今回は、TFCCの損傷形態と疼痛の関連性について検討された論文を紹介します。

 


 対象は骨疾患を認めないTFCC損傷症例を疼痛群と非疼痛群に分けて、損傷形態などを比較されています。
    三角線維軟骨(以下、TFCC)損傷は必ず疼痛を生じる障害ではないとされています。これは、腱板損傷や半月板損傷にも言えることですが、損傷した組織にメカニカルストレスが加わることにより疼痛が惹起されると考えられます。同じ衝撃でも損傷の形態によって損傷部位に加わるメカニカルストレスが変化するため、疼痛の有無に関わるかと考えました。
 疼痛群に存在して非疼痛群に存在しなかった損傷形態として、TFCCの周辺部損傷が上がっています。周辺部の損傷はTFCC損傷における尺側部痛を惹起しやすいと考えられます。一方、実質部の損傷においては両群とも差がありませんでした。このことから、実質部の損傷による尺側部痛においてはTFCCのみならず他の組織由来の疼痛や特徴的な動態があるのではないかと考えました。
 TFCC実質部の損傷は何らかのメカニカルストレスを軽減させることにより疼痛が改善する可能性を示唆している事がわかりました。損傷している組織を同定することはもちろん、疼痛を惹起しているであろう組織を細かく評価する事が症状改善につながる事がわかりました。





投稿者:小林 駿也

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