股関節屈曲運動は骨盤大腿リズムで知られるように、複合運動になります。
FAISは主にhead neck junctionと臼蓋縁の骨性衝突が生じるといわれています。その病態において骨盤後傾の重要性が示された論文を拝読したので紹介します。
【Purpose】
FAI症例のコンピュータシミュレーションモデルを用いて、骨盤前傾を減少させることで得られる股関節可動域(ROM)の最適な改善効果を評価し、cam切除手術後に得られるROMの改善効果と比較すること。
【Method&Material】
関節鏡視下cam切除術を行ったFAI患者28名の術前・術後のコンピュータ断層撮影(CT)画像について評価した。ダイナミックコンピューターシミュレーションプログラムを用い、術前のCT画像から、仰臥位骨盤機能平面(ベースライン)より骨盤前傾が5°および10°減少した3次元モデルを作成した.また、cam切除前(ベースライン時)とcam切除後の股関節についても同様のモデルを作成した。骨盤傾斜5°変化モデル、骨盤傾斜10°変化モデル、cam切除モデルについて、屈曲45°、70°、90°における最大内旋のベースラインからの改善を評価し、その結果をすべての条件について比較した。
【Result】
骨盤傾斜10°変化とカム切除の組み合わせは、ベースラインからのROM改善が最も大きかった。cam切除モデルにおける内旋の改善は、骨盤傾斜変化5°モデルと比較して有意に高く、cam切除モデルと骨盤傾斜変化10モデルの間には有意差はなかった。
【Conclusion】
術前のコンピュータシミュレーションモデルで骨盤前傾角を10°下げると、cam切除術と同等の効果が得られ、骨盤傾斜角変化5°ではROMの改善という点でcam切除術に劣ることがわかった。臨床的な関連性骨盤前傾角の減少を十分に行うことで、cam切除術と同程度のROM改善効果が得られると考えられる。
FAIS症例では特に骨盤帯、脊柱を含めた評価を引き続き行っていきます。
投稿者:尼野将誉