自然界には完全に滑らかな表面は存在せず、すべての面には違いはあるものの必ず粗さが存在する。したがって、2つの物体表面間に潤滑効果がなければ、表面に存在する突起の先端のみが直接に接触し、その接触圧は接触面積が小さくなればなるほど高くなるので、このときすべりが起きると大きな摩耗が生じる。凹凸のある関節軟骨面の間で生じる潤滑はいくつかあるが主な2つの潤滑を説明する。
境界潤滑
2面間に液体が存在すると表面エネルギーのために流体の成分が吸着されて膜を形成する。この吸着膜によって突起の先端が対向する表面と直接接触する機会が減り、摩耗が防止される。これを境界潤滑(boundary lubrication) という。
流体潤滑
滑膜性関節では、滑液という粘度の高い流体が関節軟骨表面を薄くおおっているので、固体と固体の摩擦でなく、流体自体の摩擦となり関節軟骨はすりへらない。
液体に覆われた平面上の物体を想定すると,その物体が一方向に滑るとき,液体は物体と平面の間の狭い隙間へ押し込まれ、その圧力は高くなる。このとき,流体の圧力と加えられた荷重とが釣り合えば,物体と平面は非接触状態を保ち,流体潤滑状態が実現する。この状態はたとえば,水溜りの上を車が通行した際に生じるハイドロプレーン現象と同じものである。これが流体潤滑である。
摩擦係数の変化についての研究
滑膜性関節の摩擦係数は、0.001~0.008と言われている。荷重(顎関節)における摩擦係数の変化をみた研究では、摩擦係数は時間経過とともに有意に大きい値を示し、負荷60分後の摩擦係数は 50 N で 0.0220、80 N で 0.0239となった。初期荷重が大きいほど、荷重時間が長くなるほど関節内の摩擦係数が増加した。荷重時間との関係については、持続的な荷重により滑液の分散が促進され、滑液による流体膜の厚さが減少したことと考えられる。関節に持続的な負荷を加えると、徐々に流体膜厚が減少して流体潤滑から境界潤滑に移行すると言われている。すなわち、荷重量が大きく負荷時間が長いほど摩擦係数は増加し続けるのではなく、流体潤滑から境界潤滑に移行した時点で 一定になると考えられた。
この研究から、荷重関節に対してやはり体重コントロールは必要なことだと感じました。
関節内の解剖学、生理学、運動学について知ることにより、病態解釈などをより深めていきたいと思います。
投稿者:尼野将誉