COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2016年7月29日金曜日

腱板断裂におけるdelamination発生関連因子の検討について

 本日紹介する文献は、腱板断裂におけるDelaminationの発生要因について検討された論文です。

 
 岩下ら:腱板断裂におけるdelamination発生関連因子の検討.JOSCAS 39 (3) : 614-618 . 2014
 
 臨床において腱板断裂に対して腱板修復術を施行された方をよく経験します。術後の理学療法を行う上で興味深い文献を紹介します。
 対象は鏡視下腱板修復術を施行された症例をDelaminationの有無によって2グループに分けて比較検討されています。まず、腱板におけるDelaminationの定義として筆者は、全層断裂が浅層と深層の2層に分かれている状態、としています。Delaminationの有無は良好なCuff integrityを得るために重要な所見となります。
 Delaminationがある群とない群では、腱板の断裂幅と断裂範囲に差があると報告されています。その要因として、進行性の変性断裂によりDelaminationを誘発している可能性と腱板の浅層と深層での異なる走行方向が剪断力を生じさせDelaminationを誘発している可能性が考察されています。

 臨床においてDelaminationを認める症例に関しては、断裂が経時的に変性していること、腱板筋群の過度な収縮によって剪断力を生み出している可能性があることを念頭に置き理学療法を進めることが重要だと考えられた論文でした。

投稿者:中井亮佑

2016年7月24日日曜日

第109回京都支部定例会


昨日第109回京都支部定例会を行いました。



今回は永井教生先生による「THAの運動療法の考え方」と佐々木拓馬先生による「FAIによる起立時に鼠径部痛が生じた症例」についての症例検討を行いました。


     
     


永井先生による「THAの運動療法の考え方」では理学療法を行う上で注意しなければならに脱臼リスクについてTHAの構造、opeによる侵襲、コンポーネントの設置角度、術前のアライメントなど様々な面からどのような状態の場合どの方向の運動に気を付けなければならないのか、どのような評価を行うのかなどをお話していただきました。



佐々木先生の症例検討ではグループごとにディスカッションを行っていただき、グループごとに意見をまとめていただきました。足りなかった評価や今後見ていくべき評価、疼痛の解釈などいくつも考え方、意見をいただくことができました。私も股関節の患者さんを担当させていただいていますが、今回の症例検討を通して評価しきれていない所見があるとを感じ、今回ディスカッションで出していただいた評価、考え方を参考にさせていただきたいと思います。




次回の定例会は8月27日に為沢一弘先生による「股関節の触診~外側の筋」です。
18:00より受付、18:30勉強会開始です。  


2016年7月23日土曜日

第110回定例会案内「股関節の触診〜外側の筋」ご案内


第110回定例会ご案内
  
開催日:平成28年8月27日 土曜日
時間:受付18時〜 開始18時30分
会場:京都下鴨病院 2階 リハビリ室
レクチャー:「股関節の触診〜外側の筋」 爲澤一弘先生(京都下鴨病院)

症例検討:募集中


参加費:会員無料、会員外500円
    事前参加登録不要

LINE@にご登録いただくと、10回の定例会参加で来年のベーシックセミナーが割引となるポイントカードサービスが受けられます。

LINE@登録はこちらから

※ 検討症例を募集しています。

  • 症例の個人情報の取り扱いには十分注意してください。必ず症例本人もくは家族に承諾を得てください。
  • 可能であれば単純X線、CT、MRIなどの画像や動作の動画などを準備してください。
  • Power Pointで作成したスライドおよびレジュメ30枚程度を準備してください。
  • 15分程度のプレゼンテーションを行って頂きます。

[検討症例応募] ⬅️症例検討応募はここをクリック

2016年7月20日水曜日

肩関節周囲炎による夜間痛が関節可動域の予後に及ぼす影響

 本日は、肩関節周囲炎による夜間痛が関節可動域の予後に及ぼす影響を検討した論文を紹介させていただきます。

 高橋康弘、振甫 久ら 他:肩関節周囲炎による夜間痛が関節可動域の予後に及ぼす影響 
                         第51回日本理学療法学術大会

対象は肩関節周囲炎と診断され機能面改善に至るまで運動療法を施行した40名(女性26名、男性14名、年齢65.5±10.8歳)。夜間痛は発症から消失までを週単位で記録し、夜間痛期間と屈曲・外転・外旋の可動域改善率、結滞差(脊椎の個数)について検討されています。

結果ですが、外旋改善率は夜間痛が長期に及ぶほど低くなるが、その期間が4週以内に治まれば予後が良いと示されていました。この結果をふまえて筆者らは炎症による夜間痛が続くほど烏口上腕靭帯と腱板疎部の関節包は肥厚し、伸張性が低下して予後に影響するのではと考察されています。

前回は夜間痛と肩峰下滑液包圧の関係性について報告してある文献を紹介させていただきました。今回の報告では、夜間痛が5週以上続くと特に外旋改善率の予後が悪くなることがわかり、改めて早期に夜間痛を消失させることの重要性を学びました。今後も夜間痛について勉強して臨床に活かしていきたいと思います。

 

投稿者:佐々木拓馬

2016年7月18日月曜日

【文献紹介】上腕筋の形態について

 今回は上腕筋の形態について肉眼解剖で観察された文献を紹介させていただきたいと思います。




山本ら:上腕筋は3頭筋である―肘関節屈曲拘縮への関与についての考察― 第16回臨床解剖研究会記録 2012.9.8



上腕筋は複数の筋頭を有するという報告があります。この文献でも上腕筋の筋頭、走行などを詳細に観察されています。


対象は研究用に供された解剖実習体1117肢で、上腕筋を起始部より分離して筋頭を同定し、起始部より剥離しながら翻転して肘関節包との付着の有無を確認されています。


結果としては観察した全肢において、三角筋後部繊維より連続する筋頭(外側頭)、三角筋の前方の集合腱に連続する筋頭(中間頭)、上腕骨前面より起始する筋頭(内側頭)に分けられたと報告されています。
また、肘関節部において外側頭と中間頭は浅層、内側頭は深層を走行し、内側頭の一部が肘関節包前面に付着する例もあったと報告されています。関節包に付着する例では肘の屈曲と共に関節包の前面と内側頭が浮き上がる様子も確認されたとのことです。


上腕筋は肘関節の屈曲拘縮に関与することが言われています。しかし、上腕筋は上肢の深層に位置し、上腕二頭筋が浅層を走行しているため、体表からの観察は困難であるかと思います。
 起始部、停止部の把握はもちろんですが、筋の走行を把握し、触診していくことが重要であると日々感じています。また、関節包への付着や筋頭により走行が異なること、浅層と深層が存在するなど形態の把握は病態やアプローチを考える上で大切になると思いました。


投稿者:天鷲翔太

2016年7月17日日曜日

【文献紹介】膝軟部組織(半月板)の応力解析について

本日紹介させていただく文献はMRIを用いて半月板の三次元モデルを作成し、力学的解析を行った文献です。
中嶋一晶他:MRIから構成した三次元FEMモデルによる膝軟部組織の応力解析―半月板損傷のメカニズム解明に向けて―.日本臨床バイオメカニクス学会誌vol.27:131~135,2006

対象は膝に明らかな既往および愁訴のない22歳健常男性の左膝でした。負荷は単純圧縮負荷150N、回旋モーメント10Nm、内外反モーメント10Nm加えて応力分布を観察しています。
結果は単純圧縮時は内側半月板(以下MM)では後方に応力が集中しており、外側半月板(以下LM)では前方と後方で応力が集中していました。回旋モーメントを加えた時の応力は、内旋時にMM後方とLM後方に応力が集中しており、外旋時はMM前方とLM後方に応力が集中していました。内外反モーメントを加えた時の応力は、内反時にはMM後方に応力が集中しており、外反時にはLM前方と後方の応力が集中していました。
内側半月板に作用する応力に関して筆者は圧縮荷重時に応力が後方に集中しており、かつ内旋,内反時でも同様に内側半月板の後方に幅広く強い応力がかかっていることからMM後方には応力や衝撃が加わりやすいと考えられ、半月板損傷においてMM後方から発生する割合が高いという報告とも一致すると考察しています。

今回の文献よりどの方向の運動で半月板のどの部分にストレスが加わりやすいかが分かりました。半月板損傷の際にどの方向に運動で損傷したのか予測でき、また運動療法を展開する際にも運動方向には注意していく必要があると感じました。

2016年7月14日木曜日

【文献紹介】腱板断裂患者の夜間痛について


本日は、術前に夜間痛がある腱板断裂患者を対象として術前と術後の肩峰下滑液包圧の変化を分析し、夜間痛との関係性を検討した論文を紹介させていただきます。

山本、岡村 他:腱板断裂患者の夜間痛について―術前・術後の肩峰下滑液包圧の変化― 肩関節 2004. 28(2)p279-282
 
対象は術前に夜間痛のあった腱板断裂患者6肩(男性5肩・女性1肩)。平均年齢は57歳(49-72歳)、術後、全例において夜間痛は消失。方法はマイクロ圧センサーを用いて烏口肩峰アーチ直下に挿入し、仰臥位、立位、患側下の側臥位の姿位で測定されています(測定中の上肢の姿位は下垂位・内外中間位)。

結果ですが、術前・術後の圧を比較するといずれの姿位においても術前の肩峰下滑液包圧は有意に高かったことが示されていました。

夜間痛と肩峰下滑液包圧に関するこれまでの報告として、夜間痛には睡眠時の体位が関係しており、特に仰臥位で肩峰下滑液包圧が増加すること。また、夜間痛の出現頻度が高い五十肩も腱板断裂同様に肩峰下滑液包圧が増加していることが報告されています。今回の結果からも肩峰下滑液包圧の増加は夜間痛の一要因であると考えられることができます。夜間痛に対するアプローチを行う際は、理学療法士として肩峰下滑液包の圧を減少させるために棘上筋や棘下筋上方繊維、上腕二頭筋長頭など肩峰下滑液包周囲の軟部組織に注目することの大切さを学びました。

投稿者:佐々木拓馬

2016年7月11日月曜日

【文献紹介】三角筋内の腋窩神経の走行について

本日紹介させていただく文献は解剖実習用屍体を用いて、三角筋内の腋窩神経の走行について調査した文献です。

城戸正喜他:三角筋内の腋窩神経の走行.肩関節20(1):27~30,1996

日本人解剖実習用屍体のうち肩関節周囲に創瘢痕、著しい不良拘縮、肩甲帯部骨折、腱板広範囲断裂を認めない25体48肩関節を用いて、肩峰前外側角,後外側角の三角筋底面基部から腋窩神経本幹までの距離、上腕長の測定が行われました。
結果は以下の通りでした。



手術書の多くは三角筋内側の腋窩神経の走行について肩峰外縁から約5.0cmを走行すると記載がありますが、Burkheadは102肩のうち全体の20%が肩峰から腋窩神経までの距離が5cm未満であったと報告しています。今回の調査結果において5cm未満の部位を走行していたのは肩峰前外側で男性12%,女性50%、肩峰後外側で男性20%,女性50%であったと報告しています。
傾向としては上腕長が短い症例は肩峰から腋窩神経までの距離も短いと報告しており、上腕長が長い症例においても肩峰から腋窩神経までの距離が5cm未満の症例もいると報告してます。

三角筋の解剖を勉強している中で腋窩神経の走行について日本人で検討してる文献を読み、興味深かったため今回紹介させていただきました。
また興味深い文献がありましたら報告させていただきます。




2016年7月8日金曜日

【文献紹介】腱板断裂後の棘上筋筋腹の脂肪変性



本日は、腱板断裂によって棘上筋の筋腹がどの程度脂肪変性に陥るのか、および筋萎縮や腱の退縮との関係について死体の肩関節を用いて検討されている論文を紹介させていただきます。

中垣、大城 他:腱板断裂後の棘上筋筋腹の脂肪変性 肩関節 1997. 21(2)p339-341

対象は解剖用死体2241肩関節(男性13名・女性9名)。平均年齢は74歳(4492歳)です。腱板断裂は18肩関節に認め、完全断裂は13関節、滑液包側断裂は4関節、関節腔側断裂は1関節。方法は棘上筋の筋腹の横断切片を作成・染色することで腱・筋繊維面積率や脂肪変性率を調べられています。

結果ですが、正常な腱板では棘上筋の筋腹において脂肪変性は認められず、腱板断裂を伴った筋腹では主に腱板に連続する腱組織や血管周囲の筋繊維に脂肪変性が認められたと示されていました。脂肪変性は腱板断裂の縦径や腱繊維面積率と相関関係にあることが認められましたが、筋繊維面積とは相関が認められなかったと報告されていました。

棘上筋の残存機能はその脂肪変性の程度に依存していると報告されており、腱板断裂に伴う萎縮・脂肪変性した棘上筋の機能を推定・把握することは関節可動域改善など治療を行う点でとても重要であると思います。この論文では腱板断裂の棘上筋の脂肪変性の程度は筋萎縮よりも腱板の退縮の程度に比例したと示されていました。今回の結果を病態理解の参考にして評価や治療に役立てたいと思いました!

投稿者:佐々木拓馬
 

2016年7月7日木曜日

肩関節下垂位内外旋における肩甲上腕リズム

今回、紹介する文献は肩関節下垂位内外旋における肩甲上腕リズムについてです。



関ら:肩関節下垂位内外旋における肩甲上腕リズム 関節外科Vol.28 No.11

 肩甲上腕リズム(以下SHR)はInmanらにより提唱され、肩外転時に肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の運動が2:1の比であることは広く受け入れられています。そこで筆者らは日常生活での基本肢位である下垂位での内外旋においてもSHRが存在するのかに着目して解析しています。

 対象は肩関節に関して愁訴や既往のない平均年齢29歳(23~34歳)の男性10名としており、下垂位内・外旋0°を開始肢位とし、そこから最終可動域までの内外旋を計測しています。それぞれ2回ずつ行い、内外旋とも0~60°までで、磁気センサー式三次元空間計測装置にて解析しています。

 結果ですが、0~60°までの内旋のSHR6.6:1であり、外旋は2.4:1であったと報告しています。その他にも回旋角度10°ごとにSHRを検討し、内旋では大きく変化しなかったのに対して、外旋では角度の増加につれてSHRが低下、つまり動き出しで肩甲上腕関節の動きが大きく徐々に肩甲胸郭関節の動きが大きくなったとしています。この違いに関しては上腕骨に付着する筋の走行に起因するのではないかと考察されています。

 日常生活における下垂位での回旋はとても重要な要素であり、SHRがどのようにして乱れていくのかと着目することは臨床において病態の解釈につながる一つの視点として活用できるのではないかと感じました。


投稿者:服部隼人

人気の投稿