本日は、腱板断裂によって棘上筋の筋腹がどの程度脂肪変性に陥るのか、および筋萎縮や腱の退縮との関係について死体の肩関節を用いて検討されている論文を紹介させていただきます。
中垣、大城 他:腱板断裂後の棘上筋筋腹の脂肪変性 肩関節 1997. 21(2);p339-341
対象は解剖用死体22例41肩関節(男性13名・女性9名)。平均年齢は74歳(44~92歳)です。腱板断裂は18肩関節に認め、完全断裂は13関節、滑液包側断裂は4関節、関節腔側断裂は1関節。方法は棘上筋の筋腹の横断切片を作成・染色することで腱・筋繊維面積率や脂肪変性率を調べられています。
結果ですが、正常な腱板では棘上筋の筋腹において脂肪変性は認められず、腱板断裂を伴った筋腹では主に腱板に連続する腱組織や血管周囲の筋繊維に脂肪変性が認められたと示されていました。脂肪変性は腱板断裂の縦径や腱繊維面積率と相関関係にあることが認められましたが、筋繊維面積とは相関が認められなかったと報告されていました。
棘上筋の残存機能はその脂肪変性の程度に依存していると報告されており、腱板断裂に伴う萎縮・脂肪変性した棘上筋の機能を推定・把握することは関節可動域改善など治療を行う点でとても重要であると思います。この論文では腱板断裂の棘上筋の脂肪変性の程度は筋萎縮よりも腱板の退縮の程度に比例したと示されていました。今回の結果を病態理解の参考にして評価や治療に役立てたいと思いました!
投稿者:佐々木拓馬