本日紹介させていただく文献は膝内側側副靭帯損傷の生体力学的検討についてです。
廣川ら:膝内側側副靭帯損傷の生体力学的検討
society of biomechanisms japan 15巻 2000 51-62
本研究ではうさぎの膝関節に外反モーメントを加えた時のMCLの破断に至るまでの歪み強度を光弾性法で測定し、単軸引っ張りでの結果と比較した後、破断組織の顕微鏡観察を行った上でMCL損傷メカニズムの検討をされています。
①単軸引っ張り試験の結果
大腿骨付着部近傍でのMCL損傷は観察されず、脛骨付着部近傍での繊維走行方向に沿って断裂が観察されたと報告しています。また、脛骨付着部に骨膜剥離が生じていた。
②外反曲げ試験の結果
大腿骨側、とくに内側上顆近傍を中心に断裂がみられ、脛骨付着部近傍ではまったく断裂徴候は見られなかったと報告しています。
脛骨付着部では石灰化線維軟骨層の生成が大腿骨付着部に比べ不十分であり、機械的強度が弱いため、単軸引っ張り時に骨膜剥離が生じたと考察されており、外反曲げ試験において大腿骨付着部で破談が生じる理由としては、負荷時にMCLと大腿骨内側上顆のインピンジ点を境として脛骨側と大腿骨側とで張力の不釣り合いが生じ、構造上大腿骨側に強い張力が生じているためであると考察されています。
これらのことから、MCL断裂といっても外力や負荷のかかり方、方向によっても断裂部位が異なることがわかります。またMCLは線維によって伸張される部位が異なり、どの線維が損傷しているかによって後療法を決めなければなりません。受傷機転を細かく問診し、手術所見・画像所見と組み合わせることで運動療法の組み立てをすることの重要性を再認識しました。
投稿者:小林 駿也
[お知らせ]
平成30年7月15日に開催される整形外科リハビリテーション学会(滋賀・京都支部共催)の第4回ベーシックセミナーのご案内です。
今回のテーマは「股関節疾患における機能解剖学的評価と触診」です。
詳細・参加申し込みにつきましては京都&滋賀支部合同HPをご覧下さい。
たくさんの参加をお待ちしております。
Staff profile
COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について
整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。
2018年3月31日土曜日
2018年3月28日水曜日
【文献紹介】前腕回内外運動時の腕橈関節の接触圧について
本日は前腕回内外運動時の腕橈関節にかかる接触圧について報告されている文献を紹介させていただきます。
投稿者:天鷲翔太
大渕ら:前腕回内回外運動時の腕橈関節の接触圧分布.日本臨床バイオメカニクス学会誌.Vol.21,2000
前腕長軸荷重の伝達時の荷重の割合や肢位による変化について一定の見解が得られていない。このことから前腕骨に長軸荷重を加えながら回内外運動を行った際の腕橈関節の接触圧分布の変化を測定し検討することを目的にされています。
新鮮屍体上肢3肢を使用し、近位は上腕骨頭、遠位は各中手骨骨頭までで切断されています。
皮膚および方形回内筋を除く筋肉を除去し、TFCCや関節包、靭帯は温存されています。
腕尺関節を90°屈曲位で固定し、各回内外筋の走行に沿うようにワイヤーを張って回内外運動を再現されています。
報告では最大回内位では上腕骨小頭の中央内側に圧力は集中しており、最大回内位から中間位に回外していくとともに圧力は上腕骨小頭中央へ移動し、中間位では上腕骨小頭中央からやや内側に圧力が集中していたとされています。
中間位から回外するとともに上腕骨小頭外側後方へ圧力の移動を認め、最大回外位では外側後方部分に圧力の集中を認めたとも報告されています。
また、伝達荷重は回内位が強くなるとともに増加する傾向で、最大回内位で最大値となったとも報告されています。
報告から軸圧が回内で最もかかることが分かり、最も軸圧のかかる部位も分かりました。
この報告以外にも腕橈関節にかかる圧については報告されているので他の文献も読んでみようと思います。
臨床では骨折の症例を考えるときに、受傷機転からどのようなストレスが加わり骨折したのかを考えます。そのストレスが加わらないように理学療法を進めることはもちろんですが、骨折周囲の軟部組織について考えるときにも重要になると考えられます。
明日からの臨床に活かしていきたいと思います。
2018年3月20日火曜日
【文献紹介】手指屈曲運動における正中神経の横断的運動について
今回は正中神経の移動距離を超音波にて観察された報告を紹介させていただきます。
三浦雅文:個別的手指屈曲動作における正中神経の横断的運動について.理学療法科学.30(2).247-250.2015
健常成人の7名14肢を対象とし、正中神経の撮像には超音波画像診断装置を用いられております。プローブは手根管部に横断方向に当て、正中神経、大菱形骨、豆状骨が確認できる位置に調整されています。その状態で手指を個別的に自動・他動で屈曲し、正中神経の横断的移動距離を測定されています。
結果は、自動運動では第3指で他の手指に比べ有意に正中神経移動距離が大きく、他動運動では有意差は得られなかったと報告されています。
正中神経は浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋、橈側手根屈筋とともに手根管内を通過し、浅指屈筋腱に近い位置で走行しています。このことから、浅指屈筋の滑走性低下は正中神経の圧迫を助長し、神経圧迫による症状出現に繋がる可能性があることが本研究からわかります。
臨床を行っている中でも、正中神経領域に神経症状を訴える方は少なくありません。どの部位でもそうですが、神経絞扼や圧迫がどの部位で起こっているのかを特定し治療を進めていくことが重要であることが再確認できました。
[お知らせ]
今月31日に開催される京都支部定例会(腰部のスポーツ障害 分離症・仙腸関節障害)はおかげさまで満員御礼となりました。ありがとうございます。
※申込みをされた先生方へ
前回・前々回の定例会で、当日キャンセルをされる方が多数見受けられました。申込みをキャンセルされる先生はお早目のご連絡をお願い申し上げます。
投稿者:高橋蔵ノ助
2018年3月19日月曜日
第2回合同勉強会
昨日、三重県のみどりクリニックにて角谷整形外科、下鴨病院の3施設の合同勉強会が行われました。
今回は投球障害へのアプローチについてみどりクリニックの先生方にご講演いただきました。
今回は投球障害へのアプローチについてみどりクリニックの先生方にご講演いただきました。
瀬戸口先生のご講演は解剖学的に投球動作についてお話ししてくださったため、野球経験のないものでもわかりやすく、また興味深い内容で非常に勉強になりました。
野呂先生はPTの目線でどのように投球障害を診ていくかについてご講演してくださいました。同じ理学療法士でも考え方や見るポイントなどが違い、いろんな見方があることを学びました。
勉強会の最後には院内の施設見学もさせていただき、たくさんの設備や器具を見せていただきました。充実した設備、初めて見る器具などがあり、これも貴重な経験になりました。
充実した1日を過ごすことができました。今回学んだことを次に活かせるようにまた勉強していきたいと思います。
2018年3月16日金曜日
【文献紹介】脛骨高原骨折の術後成績~経過観察時における関節鏡の有用性について~
本日紹介させていただく文献は脛骨高原骨折の術後成績(経過観察時における関節鏡の有用性について)です。
中平ら:脛骨高原骨折の術後成績~経過観察時における関節鏡の有用性について~
中国・四国整形外科学会雑誌 1995
本研究は観血的治療を行った脛骨高原骨折の治療成績を調査するとともに、荷重開始前に行った関節鏡の有用性について検討されています。
対象は脛骨高原骨折に対して観血的治療が施行された13例13膝とされています。また骨折型としてはHohlの分類でminimally displaced3例、split depression3例、comminuted4例、分類不能1例です。手術としては全例に対しプレート固定が行われています。
治療成績についてはHohl Luckの判定基準を用いられ、解剖学的評価はexcellentが10例、good1例、fair1例であり、機能的評価はexcellentが12例、fair1例でした。fairの1例はどちらもsplit 型で荷重歩行開始後徐々に再陥没が進み、関節の側方動揺性とOA変化をきたしたものでした。
また、術後関節鏡において6例に軟部組織損傷が発見されています。関節鏡を用いることで、軽微な半月板やACL等の損傷も発見され、術後4~6週では軟骨様組織による修復が進み、骨折線部位に軟骨様組織の隆起がみられたと報告されています。
脛骨高原骨折に対する治療成績の不良因子として関節面の高度粉砕骨折、陥没、整復不良、後療法遅延、年齢、軟部組織損傷、多発外傷などが報告されています。
本研究の結果から、split depression型がfairとされているように骨折型によっても予後が考えられることがわかります。しかし、詳細な軟部組織の損傷や、陥凹の程度の記載がないため、画像所見・理学所見をもとに細かく評価していく必要があることがわかります。
これらのことから、骨折の患者様を担当した際には、受傷機転や骨折の型、画像所見から損傷されるであろう軟部組織を想定し、評価・運動療法を組み立てていくことの重要性を学びました。
投稿者:小林 駿也
中平ら:脛骨高原骨折の術後成績~経過観察時における関節鏡の有用性について~
中国・四国整形外科学会雑誌 1995
本研究は観血的治療を行った脛骨高原骨折の治療成績を調査するとともに、荷重開始前に行った関節鏡の有用性について検討されています。
対象は脛骨高原骨折に対して観血的治療が施行された13例13膝とされています。また骨折型としてはHohlの分類でminimally displaced3例、split depression3例、comminuted4例、分類不能1例です。手術としては全例に対しプレート固定が行われています。
治療成績についてはHohl Luckの判定基準を用いられ、解剖学的評価はexcellentが10例、good1例、fair1例であり、機能的評価はexcellentが12例、fair1例でした。fairの1例はどちらもsplit 型で荷重歩行開始後徐々に再陥没が進み、関節の側方動揺性とOA変化をきたしたものでした。
また、術後関節鏡において6例に軟部組織損傷が発見されています。関節鏡を用いることで、軽微な半月板やACL等の損傷も発見され、術後4~6週では軟骨様組織による修復が進み、骨折線部位に軟骨様組織の隆起がみられたと報告されています。
脛骨高原骨折に対する治療成績の不良因子として関節面の高度粉砕骨折、陥没、整復不良、後療法遅延、年齢、軟部組織損傷、多発外傷などが報告されています。
本研究の結果から、split depression型がfairとされているように骨折型によっても予後が考えられることがわかります。しかし、詳細な軟部組織の損傷や、陥凹の程度の記載がないため、画像所見・理学所見をもとに細かく評価していく必要があることがわかります。
これらのことから、骨折の患者様を担当した際には、受傷機転や骨折の型、画像所見から損傷されるであろう軟部組織を想定し、評価・運動療法を組み立てていくことの重要性を学びました。
投稿者:小林 駿也
2018年3月12日月曜日
水戸Physical therapy研究会&札幌研修
3日間、長距離の武者修行旅をしてきました。
3月10、11日は茨城県は水戸市の北水会記念病院にて、
水戸Physical therapy研究会主催
「膝関節障害に対する機能解剖学的運動療法の考え方」
講師は京都下鴨病院の小野志操先生で、私、為沢一弘も実技アシスタントとして参加させていただきました。
1日目は座学で、変形性膝関節症の理学療法に関して、機能解剖や文献的知見を踏まえて小野先生なりの解釈を聞くことができました。
2日目は実技を中心に、触診と、前日のお話を踏まえた上で、有用であると考えられる実技に重点を置いて講義を行われました。
やはり、治療を行う上でも、周辺解剖の知識や触診の技術がかなり大切で、そこに何の組織があるのかを理解し、指先でそれを捉えられているような先生ほど、治療の実技を行った時に結果が伴ってくるなと素直に感じました。
私個人的には、講義される時の時間配分や、抑揚の付け方、重要な部分の強調の仕方、反復の仕方など、聴講者を引き込む技術について勉強させていただきました。
講義終了後にはその足で羽田空港から新千歳→札幌へ
翌12日に羊ヶ丘病院整形外科の加谷光規先生の股関節鏡のオペ見学をさせていただきました。
加谷先生のオペは、股関節唇損傷の症状のない方には修復術を行わず、周囲の疼痛を起こしているであろう軟部組織に対して癒着剥離を中心になされ、早期復帰を目指すことをコンセプトにされています。
普段臨床で「ここを痛がる」「ここが硬いな」と感じている部位が、線維化した組織に埋め尽くされて周囲の軟部組織との滑走が得られなくなっている所見を見せていただきました。
また、それは炎症が強く起こって、血管が新生している部位ほどその徴候が強いようでした。
やはり、組織同士が交差しているようなところ、深層・浅層で組織が重なっているところ、骨の表面を滑るべきところ、滑液包が存在するところの組織間の滑走性が非常に重要であることを再確認させていただけました。
そしてその癒着が剥離され、組織間にかなりゆとりができたのをみて、これだけゆとりができると患者さん自身も動くのがすごく楽なんだろうなと感じました。
オペ技術だけでなく、加谷先生の臨床に挑む姿勢に対するお話を聞くこともでき、非常に感銘を受けるとともに、自分ももっと高まっていきたいと思いました。
総移動距離はなかなかのもので疲労もしましたが、それ以上に得たものが大きい3日間になりました。
今回得られたことを糧に、また臨床で頑張っていきたいと思います!!
3月31日開催の京都支部の定例会は定員まで残り枠があと少しあります。
参加ご希望の先生はお早目のお申込みをお待ちしております。
申し込みはホームページより
https://ohmi-rigaku.jimdo.com
京都支部代表
京都下鴨病院 為沢 一弘
3月10、11日は茨城県は水戸市の北水会記念病院にて、
水戸Physical therapy研究会主催
「膝関節障害に対する機能解剖学的運動療法の考え方」
講師は京都下鴨病院の小野志操先生で、私、為沢一弘も実技アシスタントとして参加させていただきました。
1日目は座学で、変形性膝関節症の理学療法に関して、機能解剖や文献的知見を踏まえて小野先生なりの解釈を聞くことができました。
2日目は実技を中心に、触診と、前日のお話を踏まえた上で、有用であると考えられる実技に重点を置いて講義を行われました。
やはり、治療を行う上でも、周辺解剖の知識や触診の技術がかなり大切で、そこに何の組織があるのかを理解し、指先でそれを捉えられているような先生ほど、治療の実技を行った時に結果が伴ってくるなと素直に感じました。
私個人的には、講義される時の時間配分や、抑揚の付け方、重要な部分の強調の仕方、反復の仕方など、聴講者を引き込む技術について勉強させていただきました。
講義終了後にはその足で羽田空港から新千歳→札幌へ
翌12日に羊ヶ丘病院整形外科の加谷光規先生の股関節鏡のオペ見学をさせていただきました。
加谷先生のオペは、股関節唇損傷の症状のない方には修復術を行わず、周囲の疼痛を起こしているであろう軟部組織に対して癒着剥離を中心になされ、早期復帰を目指すことをコンセプトにされています。
普段臨床で「ここを痛がる」「ここが硬いな」と感じている部位が、線維化した組織に埋め尽くされて周囲の軟部組織との滑走が得られなくなっている所見を見せていただきました。
また、それは炎症が強く起こって、血管が新生している部位ほどその徴候が強いようでした。
やはり、組織同士が交差しているようなところ、深層・浅層で組織が重なっているところ、骨の表面を滑るべきところ、滑液包が存在するところの組織間の滑走性が非常に重要であることを再確認させていただけました。
そしてその癒着が剥離され、組織間にかなりゆとりができたのをみて、これだけゆとりができると患者さん自身も動くのがすごく楽なんだろうなと感じました。
オペ技術だけでなく、加谷先生の臨床に挑む姿勢に対するお話を聞くこともでき、非常に感銘を受けるとともに、自分ももっと高まっていきたいと思いました。
総移動距離はなかなかのもので疲労もしましたが、それ以上に得たものが大きい3日間になりました。
今回得られたことを糧に、また臨床で頑張っていきたいと思います!!
3月31日開催の京都支部の定例会は定員まで残り枠があと少しあります。
参加ご希望の先生はお早目のお申込みをお待ちしております。
申し込みはホームページより
https://ohmi-rigaku.jimdo.com
京都支部代表
京都下鴨病院 為沢 一弘
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