長谷川聡他:肩甲胸郭関節を中心とした肩甲帯の運動パターンと機能改善の質的検証.理学療法学41(2):86-87,2014
研究の目的は筋電図と3次元動作解析装置を用いて運動パターンを解析することです。
対象は健常人17名、拘縮肩症例15名です。
方法は測定は4秒で上肢を挙上する運動を連続で5回行い、その時の肩甲骨の運動と筋活動を測定し、上肢挙上10°毎に肩甲骨の角度と平均筋活動を算出しています。
測定した筋は、僧帽筋上部線維、僧帽筋下部線維、前鋸筋です。
拘縮症例においてはリハビリを施行し、3ヶ月と6ヶ月に肩甲骨の運動パターンと筋活動について再評価しています。
結果は健常群は挙上初期では肩甲骨は前傾し、その後挙上角度が増加するのに伴い、後傾していき、挙上100°で後傾位となり、その後も大きく後傾方向へ大きく運動する結果となりました。
上方回旋に関しては30°〜120°において直線的に増加しました。
筋活動は僧帽筋上・中部線維、前鋸筋はは上肢挙上に伴い、直線的に増加し、挙上110°付近から僧帽筋上部線維はプラトーになり、下部線維と前鋸筋に関しては活動が急激に高まる結果となりました。
拘縮群における肩甲骨運動パターンは肢挙上に伴う肩甲骨の上方回旋、後傾運動の欠如が多くの症例で認めました。
筋活動パターンは僧帽筋上部線維の過剰な筋活動、下部線維と前鋸筋の筋活動の低下を認めた症例を多く認めました。
また、拘縮群に対して肩甲骨機能のトレーニングを集中的に実施した結果、初回に認めた僧帽筋上部線維の過活動と僧帽筋下部線維の低活動が6ヶ月後には僧帽筋上部線維の活動は抑制され、下部線維の活動が増加しました。
筆者は健常者の結果から上肢挙上初期〜中盤にかけて肩甲骨上方回旋を司る僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋をバランスよく働かせる必要があり、上肢挙上最終域の獲得には下部線維と前鋸筋の十分な筋力活動が必要であることが考えらたと述べています。
拘縮肩症例は健常肩と比較して肩甲骨の運動パターンにばらつきが大きくかったことから様々な原因で生じている肩甲上腕関節の可動域制限に対して、個々の状況に応じて肩甲骨運動により代償してことが予想されると述べています。
また、2群を比較すると各挙上角度において僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋の活動パターンが異なり、上肢挙上に必要な肩甲骨の上方回線がスムーズに行えていないことが分かったと述べています。
この文献から拘縮症例において上方回旋、後傾運動の欠如を認め、筋活動においては僧帽筋上部線維の過活動、下部線維と前鋸筋の低活動であることがわかりました。今回はこれら肩甲骨周囲筋に対してトレーニングを施行することで筋活動を正常に近づけ、上方回旋可動域を獲得しています。この文献を読んで、まず肩甲骨の上方回旋、後傾可動域を獲得し、その上で僧帽筋下部線維と前鋸筋の筋活動を高めていく必要があると感じました。
筆者も述べていましたが、拘縮症例においては健常人と比較して肩甲骨運動パターンに大きくバラつきがみられると述べており、症例に応じて詳細に評価していく必要があるとかんじました。