COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年12月31日日曜日

【文献紹介】肩甲胸郭関節を中心とした肩甲帯の運動パターンと機能改善の質的検証

本日紹介させていただく文献は健常肩と拘縮肩で肩甲胸郭関節の運動パターンと筋活動を比較、検討した文献です。


長谷川聡他:肩甲胸郭関節を中心とした肩甲帯の運動パターンと機能改善の質的検証.理学療法学41(2):86-87,2014

研究の目的は筋電図と3次元動作解析装置を用いて運動パターンを解析することです。
対象は健常人17名、拘縮肩症例15名です。
方法は測定は4秒で上肢を挙上する運動を連続で5回行い、その時の肩甲骨の運動と筋活動を測定し、上肢挙上10°毎に肩甲骨の角度と平均筋活動を算出しています。
測定した筋は、僧帽筋上部線維、僧帽筋下部線維、前鋸筋です。
拘縮症例においてはリハビリを施行し、3ヶ月と6ヶ月に肩甲骨の運動パターンと筋活動について再評価しています。
結果は健常群は挙上初期では肩甲骨は前傾し、その後挙上角度が増加するのに伴い、後傾していき、挙上100°で後傾位となり、その後も大きく後傾方向へ大きく運動する結果となりました。
上方回旋に関しては30°〜120°において直線的に増加しました。
筋活動は僧帽筋上・中部線維、前鋸筋はは上肢挙上に伴い、直線的に増加し、挙上110°付近から僧帽筋上部線維はプラトーになり、下部線維と前鋸筋に関しては活動が急激に高まる結果となりました。
拘縮群における肩甲骨運動パターンは肢挙上に伴う肩甲骨の上方回旋、後傾運動の欠如が多くの症例で認めました。
筋活動パターンは僧帽筋上部線維の過剰な筋活動、下部線維と前鋸筋の筋活動の低下を認めた症例を多く認めました。
また、拘縮群に対して肩甲骨機能のトレーニングを集中的に実施した結果、初回に認めた僧帽筋上部線維の過活動と僧帽筋下部線維の低活動が6ヶ月後には僧帽筋上部線維の活動は抑制され、下部線維の活動が増加しました。
筆者は健常者の結果から上肢挙上初期〜中盤にかけて肩甲骨上方回旋を司る僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋をバランスよく働かせる必要があり、上肢挙上最終域の獲得には下部線維と前鋸筋の十分な筋力活動が必要であることが考えらたと述べています。
拘縮肩症例は健常肩と比較して肩甲骨の運動パターンにばらつきが大きくかったことから様々な原因で生じている肩甲上腕関節の可動域制限に対して、個々の状況に応じて肩甲骨運動により代償してことが予想されると述べています。
また、2群を比較すると各挙上角度において僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋の活動パターンが異なり、上肢挙上に必要な肩甲骨の上方回線がスムーズに行えていないことが分かったと述べています。

この文献から拘縮症例において上方回旋、後傾運動の欠如を認め、筋活動においては僧帽筋上部線維の過活動、下部線維と前鋸筋の低活動であることがわかりました。今回はこれら肩甲骨周囲筋に対してトレーニングを施行することで筋活動を正常に近づけ、上方回旋可動域を獲得しています。この文献を読んで、まず肩甲骨の上方回旋、後傾可動域を獲得し、その上で僧帽筋下部線維と前鋸筋の筋活動を高めていく必要があると感じました。
筆者も述べていましたが、拘縮症例においては健常人と比較して肩甲骨運動パターンに大きくバラつきがみられると述べており、症例に応じて詳細に評価していく必要があるとかんじました。










2017年12月25日月曜日

【文献紹介】舟状骨骨折偽関節のバイオメカニクス

本日は、舟状骨骨折における変形について書かれた文献を紹介させていただきます。

   森友寿夫:舟状骨骨折偽関節のバイオメカニクス:関節外科31(8)16-24.2012

 舟状骨骨折では、転位や骨折部の離開の程度、骨折のタイプ、生活状況、年齢などによって治療選択がなされています。保存療法の予後としてhumpback変形やDISI変形などが報告されていますが、どのような骨折のタイプに変形が起こりやすいのか、またどのようなメカニカルストレスが加わることで変形していくのか疑問に思い、今回調べてみました。

 本文献では、Herbert分類B1型とB2型骨折による変形とキネマティクス、画像所見、手術法の比較などが書かれています。今回は変形について一部紹介させていただきます。
 中央1/3骨折での舟状骨偽関節の中には変形の進行に伴い疼痛の強いタイプと、長期間経過しても軽度なタイプがありますが、この違いは骨折線の位置に大きく関係しているとされています。
 B2型骨折では骨折線が舟状骨腰部掌側から舟状骨突起の遠位に向かって斜めに存在しています。この骨折では、背側舟状月状骨間靭帯が付着する舟状骨突起より遠位に骨折線が存在し、不安定型とされています。手関節掌背屈運動の際に舟状骨遠位骨片は遠位手根列と一緒に、近位骨片は月状骨と一緒に動き、骨片間でのブックオープン様の異常な動きを示すとしています。このように、B2型骨折は時間の経過とともに掌側骨折部に骨欠損が生じていきます。また、橈尺屈運動においても近位手根列のリンクは分離すると報告しています。

今回、舟状骨骨折後に偽関節が生じるバイオメカニクスを知り、骨折部位を把握する重要性はもちろんのこと、手根骨に付着する靭帯など解剖の必要性を再認識しました。今後に活かしていきたいと思います。


投稿者:鷲見 有香

第3回野球障害セミナーに参加してきました

本日は医療法人MSMCみどりクリニックにて開催された、第3回野球障害セミナーに参加してきました。



午前中はプロ野球チームである広島東洋カープのヘッドトレーナーである石井雅也氏、同じく投手コンディショニングを担当されている三浦真治氏がプロ野球の現状や実際のコンディショニング方法などをレクチャーしていただきました。

午後からは医療法人MSMCみどりクリニックの野呂吉則先生が実際に臨床やトレーナー活動にて行われている野球障害肩に対しての治療や独自の理論を丁寧に講義していただきました。また、同院の院長でもある瀬戸口芳正先生からは、投球障害肩を考える上で必要な知識や解釈を、3D映像やデータを用いて分かりやすく講義していただきました。

今回のセミナーに参加させていただき、投球障害肩を考える際は、なぜその選手にトラブルが起こっているのか、本当に原因は肩なのか?などと、様々な視点から評価し、実際に治療やコンディショニングを行い、選手のパフォーマンス向上に努めることが重要であることが再認識されました。

野球障害肩だけでなく、他の疾患に対してもそのような視点で評価を行うことも重要であると重ねて再認識されました。

今後は日々の臨床だけでなく、スポーツ選手の治療や復帰までをアプローチできる理学療法士になるためにさらなる知識・技術の習得に努めていきます。



投稿者:高橋 蔵ノ助

2017年12月16日土曜日

【文献紹介】掌側ロッキングプレートを用いた橈骨遠位端骨折の遠位骨片へのスクリュー刺入本数の違いによる固定性の検討

本日紹介させていただく文献は掌側ロッキングプレートを用いた橈骨遠位端骨折の遠位骨片へのスクリュー刺入本数の違いによる固定性の検討についてです。




黒岩ら:掌側ロッキングプレートを用いた橈骨遠位端骨折の遠位骨片へのスクリュー刺入本数の違いによる固定制の検討,藤田学園医学会誌 2016




本研究は橈骨遠位端関節外骨折に対して、遠位部スクリューを1列と2列挿入した固定本数の違いによる成績を検討されています。


対象は橈骨遠位端関節外骨折に対しMODE Distal Radius Plateを用いて手術を施行された21例21手です。プレートの遠位部1列目のみにスクリューを4本挿入した症例を1列群、2列目までスクリュー7本全て挿入した症例を2列群とされています。1列群は9手で骨折型はA2:3手、A3:6手、2列群は12手でA2:10手、A3:2手です。


評価項目は術後6か月時点での手関節可動域、握力、MMWS、DASH、単純X線評価として術直後と6か月後のRadial inclination(RI)、volar tilt(VT)、ulnar variance(UV)を計測し、矯正損失の有無を検討されています。


結果は手関節可動域(屈曲・伸展・回内・回外)で有意差は認めず、握力、MMWS、DASHにおいても有意差はなかったと報告されています。単純X線評価でも両群に有意差は認めませんでした。しかし、1列群で骨癒合不全を1例認めたとされています。


本研究を通して、両群を比較しても臨床的評価、画像評価に有意差は認めなかったことがわかります。しかし先行研究ではMehringらは関節外骨折において、1列群に対し2列群は強度が高いと報告しています。本研究では1列群に骨癒合不全を1例認めていることから、スクリュー挿入本数の違いが固定性に関与していることが考えられます。
これらのことから、臨床では、画像所見からスクリューの本数にも着目することで、固定性の検討に役立てていきたいと思います。


                                       投稿者:小林 駿也

2017年12月15日金曜日

【文献紹介】立位での膝関節屈曲位保持課題が膝蓋骨の前額面上回旋角度変化に及ぼす影響

本日紹介させて頂く文献では、立位での膝関節屈曲運動がFrontal Rotationに及ぼす影響とその変化量について報告をしています。


橋谷祐太郎他:立位での膝関節屈曲位保持課題が膝蓋骨の前額面上回旋角度変化に及ぼす影響:関西理学.14.37-41.2014


 方法は体幹垂直位で膝関節屈曲0°位を開始肢位とし、屈曲0°~60°までの各10°ごとの膝蓋骨回旋角度を計測しています。計測に関してはレントゲンを用いて、大腿骨軸と膝蓋骨上端-下端を結んだ直線がなす角度を膝蓋骨回旋角度としています。

 結果は、膝関節屈曲角度の増大に伴い外旋角度は増大傾向にあり、屈曲0°と比較し40°~60°で有意な増加を示したと報告しています。また、変化量は屈曲0°~10°での外旋角度の増大が最大であったと示しています。

膝関節は屈曲・伸展運動時において膝蓋大腿関節では膝蓋骨が大腿骨顆間溝上を滑走するとともに、膝蓋大腿関節の適合性を保つために前額面上で回旋運動が生じる膝関節屈曲運動に伴い、膝蓋骨は前額面上で約7°の外旋、水平面上で約11°の内旋運動を行うことが知られています。前者はFrontal Rotation、後者はCoronary Rotationと呼ばれています。


 臨床の中で、徒手的に膝蓋骨運動を促す際には非荷重での操作を行うことは多々ありますが、荷重時での運動を考慮する場面は少なかったと思います。今後、膝蓋骨の運動を評価する際には、荷重時・非荷重時と条件を変えた中での膝蓋骨運動にも着目していきたいと思います。

投稿者:高橋 蔵ノ助

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