本日紹介させていただく文献は上腕二頭筋腱の安定化機構について解剖学的位置関係より検討された文献です。
新井隆三他:上腕二頭筋腱の安定化機構.肩関節32(3):549−552,2011
対象は解剖実習用屍体10体20側で、肩関節前上方の観察をしています。
結果は肩甲下筋の付着部は小結節上面に停止し、そこから腱性組織が舌部を形成し、foveaに付着します。
SGHLは関節内壁前上面から外側にねじれるように走行し、前下方を支える樋様構造をし、舌部に付着していました。
LHBが関節外に出ていく場所はSGHLとCHLを含む疎性結合組織がLHBの下面を巻き込むようにして肩甲下筋腱の舌部に付着し、舌部下端から結節間溝にかけて経路を形成していました。
筆者は肩甲下筋の全層断裂は舌部によるLHBの支持、舌部に付着する膜様構造の破綻によりLHBの前内方へ脱臼しやすい状態になると考えられると述べています。
CHLの解剖についての勉強していく中で、今回紹介させていただいた文献を見つけました。
CHLはLHB腱の安定にも関与していることがわかり、1つの組織の解剖を理解した上で、その組織が周辺組織とどのような関係にあるのかについても理解を深めていく必要があると感じました。
Staff profile
COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について
整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。
2017年8月27日日曜日
人気の投稿
-
文献紹介 大腿骨転子部骨折において後外側支持欠損が lag screw sliding に与える影響 (徳永真己・他 : 骨折 第35巻、98-102、2013) 大腿骨転子部骨折をshort femoral neck (SFN) で...
-
今回は、腱板断裂肩における上腕二頭筋長頭腱の病態と処置について記載されている論文を紹介したいと思います。 近年、鏡視下手術が普及してきておりLHBの損傷に伴う疼痛が再認識されてきているためLHBの腱固定または切離の適応が拡大しています。 臨床上でも腱板断裂に伴う...
-
本日は Bertolotti症候群について紹介させて頂きます。 Bertolotti症候群は1917年にBertolottiが提唱した症候群であり,最尾側の腰椎横突起が肥大し仙骨との 間に関節を形成,あるいは骨癒合した症例に腰痛が生じる症候群とされています。 ...
-
人工膝関節全置換術(以下 TKA )後の理学療法では、屈曲可動域の増大や ADL の改善が主に進められていると思います。しかし、術後の伸展可動域や自動伸展不全(以下 extention lag )の有無が歩行能力や ADL に制限を生じるケースも少なくありません。 そこ...
-
本日は、半膜様筋-内側側副靭帯にある滑液包(STBと略す)について述べられた文献を紹介します。 Christopher P.et al.:AJR 1996;166:875-877 STBは逆U字型をしており、その深層部は内側半月板後節に隣接し、半膜様筋腱と脛骨内側顆の間に...