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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年8月24日木曜日

【文献紹介】内側型変形性膝関節症における前十字靭帯損傷の予測〜顆間窩骨棘とACLの関係〜

 今回は、人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行する際の前十字靭帯(以下ACL)温存型機種(BCR type)を使用する際の、ACL損傷程度の評価の重要性について述べられた文献を紹介させていただきます。



村山雅俊 他:内側型変形性膝関節症における前十字靭帯損傷の予測〜顆間窩骨棘とACLの関係〜.整形外科と災害外科.65(4).692~695.2016


 内側型変形性膝関節症(以下膝OA)に対してTKAを行なった3751膝を対象とされており、全例Kellgren-Lawrence分類はglade3以上でありました。
評価項目は以下の通りとされています。
・術前CTで内側脛骨関節面のcontact point
・大腿骨顆間窩骨棘の部位と大きさ
これらがACL損傷形態とどのように関与しているかを検討されています。ACLの損傷形態は筆者が5段階に分類されています。


結果は以下の通りとなっていました。
ACL損傷形態は軽度損傷例が最も多く(31%)、完全損傷例が次に多かった(23%)
・内側脛骨関節面のcontact pointでは、平均して前方から53%と軽度後方で骨欠損を認めており、ACL損傷の程度との相関では有意な正の相関を認めていた。
・大腿骨顆間窩骨棘は外側になるほど大きくなる傾向であり、顆間窩の外側下部の骨棘面積とACL損傷形態との間では、強い有意な正の相関を認めていた。

以上の結果から、内側脛骨関節面のcontact pointが後方へ位置しており、骨棘が顆間窩外側下部での骨棘が大きいほど、ACL損傷形態の程度は強くなることが分かります。

TKAを行う際、ACLは切除されること場面は多々あります。同時に、ACLを切除しているため、TKA術後の膝はACL損傷膝に近いとされていることも周知されています。

ACL温存型TKAを行うことが可能となれば、術後の膝関節の安定性はより向上することは容易に考えられます。

将来的にTKAを施工せざるを得ない患者様に対して行う治療として、本文献で挙げられている結果で考察しますと、脛骨関節面のcontact pointを修正することで、ACL損傷の程度が緩和され、ACL温存機種の選択により、術後の膝関節の安定性に繋げることも可能になるのではないかということが考えられます。

TKAの機種に関しては、現在も様々な開発が進められています。機種の特徴を把握することはもちろんのこと、どのような病態に適応され、術後どのようなことが考えられるかを知識として身につけることも大事であると感じました。



投稿者:高橋 蔵ノ助

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