変形性膝関節症(膝OA)において、軟骨がすり減り軟骨下骨まで変形が進んでいくと骨髄性の疼痛が生じることはよく言われています。そこで今回は、軟骨下骨について調べてみました。
河漕孝治:ラットにおける軟骨下骨支配神経の特性.日本運動器疼痛学会雑誌(5):132−138,2013
本文献は、軟骨下骨を支配するDRG(後根神経節)細胞を逆行性神経トレーサーを用いて標識し、その神経科学的特性(CGRP、NGF受容体(TrkA)、NF200、IB4の発現)や脊髄高位分布、DRG細胞の大きさを明らかにすることを目的に行われており、さらに、軟骨下骨支配神経と膝関節内組織支配神経の違いを比較検討されています。
方法は3週ラットを用いて大腿骨遠位骨端外側に骨孔を作成し、Fast Blue(FB)1.5μlを膝関節腔にDil 10μl注入後、14日目にL1~6のDRGを摘出し、FBによる軟骨下骨を支配するDRG神経細胞の変化、Dilによる膝関節内組織を支配するDRG神経細胞の変化を蛍光顕微鏡を用いて観察。各脊髄高位でFBおよびDilで標識される細胞数をカウントし、DRG細胞断面積を計測しました。また、免疫組織化学染色を行い、FBおよびDilで標識されるDRG細胞のうち、CGRP、TrkA、NF200、IB4の発現の割合を計測しました。
結果の一部を紹介させていただきます。
各脊髄高位での細胞数の結果では、FB標識細胞(軟骨下骨支配神経)の60%がL3に局在し、有意に多くのFB細胞を認めました。また、Dil標識細胞(膝関節内組織支配神経)の67%がL3とL4に分布しており、L3,4はL1およびL6と比較して有意に多くのDil標識細胞を認めました。この結果から、筆者らは骨壊死が限局した痛みを訴える場合が多いのに対して膝OAでは限局のはっきりしない痛みを訴える一因となっていると考察しています。
DRG細胞の神経科学的特性では、CGRP(炎症性疼痛と関係する細胞)およびTrkA陽性はFB標識細胞で多く、NF200(有髄神経線維(A線維)を有する細胞)陽性はDil標識細胞で有意に多かった。一方、IB4(神経因性疼痛と関係する細胞)陽性はFBおよびDil標識細胞でほとんど存在しませんでした。また、CGRPおよびTrkA陽性細胞の割合では、軟骨下骨支配神経の方が膝関節内組織より有意に多い結果となりました。
CGRPやSubstancePを含むpeptidergie neuronは神経性炎症を生じさせる働きがあると言われており、筆者らは、研究の結果から軟骨下骨は炎症性疼痛に鋭敏であると考察しています。
今回調べていく中で、軟骨下骨由来の痛みを理解することが出来ました。膝OAでは軟骨下骨由来の痛みだけでなく軟部組織由来のものもあるため、軟部組織と骨の問題を区別していくために必要となる画像の勉強もしていきたいと思います。
投稿者:鷲見 有香