本日は、投球障害肩に対する有用な理学所見が報告されている論文の紹介します。
林田賢治ら:投球障害肩病変の診断に有用な理学的所見.肩関節16:32-34,1992.
臨床において投球障害肩を呈する症例は、疼痛の訴えが複雑であり、疼痛を誘発する要因が推察しにくいことを経験します。これは投球障害肩には多くの病変が混在していることが原因かと思います。投球時の疼痛の原因を明確にするためには、どの組織由来の疼痛かを再現する評価が必要であると考えます。
本論文は、医者が投球障害肩を診断する時に有用な理学所見について考察されています。対象はオーバーヘッドスポーツを行う症例で、関節唇損傷、Bankart病変、腱板断裂、肩峰下滑液包病変の4群を比較検討されています。その中でも、関節唇損傷群はprocain test(局所麻酔下での疼痛の有無を評価)が有意に陰性であり、投球時痛は減速期に有意に多いとされています。
しかし、投球時の減速期において他の軟部組織に目を向けると、後下方組織は伸張位にあり、棘下筋や小円筋は遠心性に収縮します。
このことから、炎症症状がなく投球障害肩症例が減速期の疼痛を訴える場合、関節唇由来の疼痛か後下方組織由来の疼痛か判断が難しくなります。ここで関節可動域測定や圧痛、収縮時痛などを用いて投球時痛の再現をすることが大切だと思いました。再現性を正確に得ることが治療ターゲットをはっきりさせることにつながると思いますので、今後も丁寧に評価を行いたいと思います。
投稿者:中井亮佑