COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2015年8月30日日曜日

TFCC障害の治療法


今回はTFCC障害の治療法についての文献を紹介します。
 



中村俊康:特集 スポーツによる手関節・肘関節障害に対する最新の治療

 TFCC障害の治療法

関節外科 Vol.30 No.3 2011

 
三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex ; TFCC )は手関節尺側部に存在
する靭帯・線維軟骨複合体で、背側・掌側遠位橈尺靭帯、三角軟骨、尺側側副靭帯から構
成されています。TFCCの機能として、尺骨手根骨間の支持性、尺骨と尺側手根骨の荷重
伝達・分散・吸収、遠位橈尺関節の支持などがあります。
TFCCが損傷されると尺骨手根骨間および遠位橈尺関節の不安定性、クッション機能低下
に伴う尺骨手根骨間の圧上昇などが生じ、手関節の尺側部痛や回内・外の制限などが生じ
ます。
本文献においてはスポーツ外傷・障害の特性について述べられています。スポーツでの
TFCC損傷には、野球の走塁やゴルフ中の転倒など一度の外傷によって生じるものと、テ
ニスで過度にスピンをかけるフォアハンドストロークの多用により変性断裂させてしまう
ものがあるとしています。スポーツ復帰にはスポーツの特性に即したプログラムを組む必
要があるとし、テニスを例にすると受傷原因になりうるフォアハンドでのトップスピンス
トロークなどは筋力増強の後に行う必要があるとしています。
理学療法の勉強はもちろんのこと、スポーツの競技特性についても学んでいき、少しでも
治療に活かせていければと思います。

投稿者:吉田雄大
 

肩関節周囲の筋活動評価におけるPETの意義


 今回は肩関節周囲の筋活動評価におけるPETの意義についての文献です。


黒川:肩関節周囲の筋活動評価におけるPETの意義 関節外科 vol34 No6 2015


 肩関節の動態解析には筋電図を用いた研究が多数報告されています。筋電図にも針や表面電極などが存在しますが、それぞれ問題点があげられます。特に肩関節に至っては肩甲下筋や前鋸筋を正確に導出することが手技的に難しく、針筋電図では解析する動作が大きい場合には皮膚と筋の位置が保てないことや、肩関節が胸郭に近いため侵襲による気胸リスクが伴うことがあります。また表面筋電図では隣接する他の筋活動の影響を受けるため筋特異性が低くなり、特定の筋の活動量を定量的に測ることが困難です。
 こうしたなか、positron emission tomography(以下PET)が肩関節周囲筋の筋活動を評価できることから、近年さまざまな肩関節運動の筋活動評価や肩関節疾患の病態解明に応用されています。

 本文献ではPETによる肩関節周囲筋の筋活動評価の実際を評価に至るまでの手順について詳細にまとめられており、実際に行われた過去の報告の紹介をされています。その中でPET画像とMRI画像の重ね合わせ像で筋を部位に分けて一つの画像から各筋の活動評価ができることが利点であると述べられています。

 肩関節疾患の治療では、肩関節運動における筋活動がどのように起きているのか、また運動制限においてどの筋が代償的に働き、過負荷になっているのかを理解することはとても重要です。このような新しい報告にも目を向けることで、より肩関節の運動メカニズムや病態解釈につながると感じました。

投稿者:京都下鴨病院 服部隼人

2015年8月28日金曜日

文献紹介:投球動作が肩関節の可動域と筋力に及ぼす影響について

こんばんは。

 本日は、スポーツ障害のひとつとして挙げられる、投球障害についての論文です。野球の投球練習の方法として、シャドーピッチングという練習方法を取り入れられます。シャドーピッチングの特徴としては、実際にボールを投げないため投球フォームに注意が向きやすい事、投球できない環境でも投球フォームの確認ができる事などがあげられるかと思われます。このことから、臨床においてシャドーピッチングにより投球フォームを確認することが多いと思います。しかし、シャドーピッチングと実際の投球は身体にどのような違いを及ぼすかによっては、練習方法を再考する必要があるかと考えます。


岡本 翔吾ら:シャドーピッチングの連続動作が肩関節回旋可動域と筋力に及ぼす影響.
理学療法科学 30 (2):161-165,2015


 本論文では、連続して行ったシャドーピッチングと実際の投球を、肩関節内外旋可動域、内外旋筋力、主観的疲労度に着目しそれぞれを比較して報告されています。
 本論文の内容より、実際の投球に比べシャドーピッチングでは、動作時の負荷量が小さく、肩関節への回旋ストレスは小さくなることが考えられました。このため、投球フォームチェックの際に適している方法であることが想定でき、投球障害の再発リスクを軽減させられることが考えられます。
 よい投球フォームの指導方法は指導者によって様々であり、統一の見解を求めることは難しいですが、投球において発生するストレスの把握は動作分析により可能であると思われます。そのため、投球障害を抱える患者さんや選手に対し、再発を防止するためにもより正確な投球フォームの分析が必要だと考えます。反復して投球フォームを確認するには、より障害リスクの少ない方法で動作分析を行い、適切に投球動作指導を行うことが必要だと感じました。

投稿者:京都下鴨病院 中井亮佑

2015年8月27日木曜日

第5回関西肩コラボミーティングのご案内

第5回関西肩コラボミーティング(KKCM)のご案内です。





日時  :9月27日(日)
    受付:9時30分 開始:10時〜
時間  :時間10時から15時20分
会場  :新大阪丸ビル別館 H号室
参加費:医師 5000円  コメディカル3000円  学生500円


「講演1」
 吉村 直心先生(やまぎわ整形外科 リハビリテーション科 科長 理学療法士)

「講演2」
 菅原 順二先生(株式会社arancia  代表取締役 NSCA-CSCS)

「講演3」
 八木 茂典先生(東京関節外科センタースポーツリハビリテーション部 部長 理学療法士)

「講演4」
 川崎 隆之先生(順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科・スポーツ診療科 肩関節診グループ 助教 医師)

「一括討論」
 演者と参加者全員でのディスカッション

今回のKKCMのテーマはコリジョンスポーツ選手におけるコンタクト開始時期をどうするか?
についてです。
肩脱臼後の競技復帰の時期に関しては、組織の修復が行われたら復帰するのか、機能的に回復してから復帰するのかなど意見が別れることもあり、どの時期に復帰するかは難しい問題だと感じています。
再脱臼を防ぐためにもこの問題は大事なことだと感じており、御高名な先生方の考え方を聞き臨床上の悩みを解決することが出来る良い機会になると思います。
是非興味のある先生方はご参加ください。


また、当日は、新たな試みとして全員参加型の討論会を実施するため、スマホアプリの「clickest(クリッケスト)」を使用し、皆様の意見を集計してスライドに投影予定です。
ご参加の皆様はあらかじめダウンロードをされた上でご参加いただきますようよろしくお願い致します。



詳細の確認および「clickest」のダウンロードは京滋支部ホームページからも可能です。
http://ohmi-rigaku.jimdo.com/学会-研修会案内/

投稿者:団野翼

2015年8月24日月曜日

第101回 整形外科リハビリテーション学会京滋支部定例会が開催されました

第101回 整形外科リハビリテーション学会京滋支部定例会が開催されました!!

今回は、

症例検討 : Bankart修復術後に肩関節拘縮が生じた症例  京都下鴨病院 服部先生

症例検討の様子

今回の症例は、術後約6週で挙上が120°passive、90°activeと可動域改善が滞っている例でした。

検討内容としては、今後の治療を進めていく上で必要な評価や治療についてを検討しました。

肩脱臼患者では前方が緩く骨頭も前方に偏移していることが多いですが、この症例の場合は術前MRI画像の水平断から、骨頭が後方に偏移し内旋位となっており、骨頭を後方に偏移さすことで安定性を保っていたのではないかと考えられます。

この結果、前方の組織が固くなり内旋位を呈していたと考えられ、この肢位で関節唇が縫合されているので外旋制限が出現しやすいです。

関節唇が修復してくる約6週後から、積極的に外旋可動域の拡大をしていかないと拘縮が起こりやすいため、画像から得られる情報と、実際の臨床所見をとったうえで理学療法を実施していかなければいけないことを再確認できました。



レクチャー:上腕骨近位端骨折後の運動療法について 京都下鴨病院 永井先生

レクチャーの様子
レクチャーは、永井先生による上腕骨近端骨折についてでした。

解剖学的、生理学的な事や手術内容、固定性がいいのと悪いのはどう見ていくかなど、理学療法士も知っておくべき内容を詳しくレクチャーしてくださいました。

また、実際の症例のレントゲン写真を使用して説明してくださりとても勉強になりました!!


次回の定例会は、10月24日の予定です!!

また、9月20日~21日は毎年恒例の整形外科リハビリテーション学術集会が行われますので、ぜひご参加下さい☆
http://www.seikeireha.com/

投稿者:一志有香

2015年8月21日金曜日

文献紹介:超音波検査による棘上筋萎縮の評価

日本整形外科超音波学会研究会会誌
The Journal of the Japan Society of Orthopedic Ultrasonic Vol.17 No.1 2005

『超音波検査による棘上筋萎縮の評価 高槻赤十字病院整形外科:三幡輝久』

この文献では、MRIにて広範囲腱板断裂と棘上筋萎縮、自動挙上制限を有する患者を対象に、超音波診断装置を用いて棘上筋の厚さを計測し、健側と比較検討しています。

また、コントロールとして筋萎縮の存在しない肩拘縮患者でも同様の検討をし比較しています。

結果、MRIにて萎縮が著名な場合は、エコーによる厚さにも有意差を認め、萎縮がない場合は厚さに有意差が認められなかったとされています。

エコーによる腱板断裂肩の萎縮の評価を行った文献はなく、今回の研究により棘上筋萎縮の程度を評価する上で新たな補助診断になりうることが示唆されるとしている。


エコーを用いれば、患者さんの負担も少なく定量的な評価もできるため簡易的に筋萎縮を評価でき、理学療法士でも診断補助にできるのではないかと感じました。

投稿者;一志有香



肘関節の内側構造について

こんばんは。
本日は肘関節の内側構造について報告されている文献を紹介します。

大歳憲一ら:肘関節の内側構造.MB Orthopaedics28 7:19-25.2015

 先月発売されました、Orthopaedicsの7月号は、もっと知りたい!関節手術に役立つ機能解剖、という特集がされており、関節ごと詳細な知見が報告されています。
 本日はその中でも、肘関節の内側構造について報告された文献を紹介します。
 本文献は、内側側副靭帯の機能解剖、力学的特性と屈曲回内筋群の機能解剖、またそれに対する考察がなされています。前腕屈筋群の前方共同腱が、内側側副靭帯の前斜走線維を沿うように走行しており、前斜走線維とともに前方共同腱が内側の支持機構としての役割を持つと報告されています。
 当院は、スポーツ障害の患者さんも来院され、その中には内側型野球肘など肘関節の内側にトラブルを抱える方もいます。スポーツ障害は同じストレスを反復することで発症していることが多いため、解剖を詳細に把握し、構造、機能、動作など様々な角度より評価を行う事が重要だと思います。本論文より、肘関節においては、前腕屈筋群を詳細に評価しアプローチを行うことで、機能回復に繋がるのではないかと考えられました。

投稿者:中井亮佑
 
 
 

2015年8月16日日曜日

小胸筋の停止についての解剖学的研究


今回は小胸筋の停止についての解剖学的研究についての文献を紹介します。


吉村英哉ら:小胸筋の停止についての解剖学的研究
肩関節2007 ;31巻 第2

小胸筋は第25肋骨の前面に起始し、肩甲骨の烏口突起に停止します。作用として烏口突起を前方に引いて肩甲骨の前傾運動を起こしたり、肩甲挙筋や菱形筋らとともに肩甲骨の下方回旋に働きます。また、肩甲骨が固定された状態では胸郭を持ち上げて吸気を補助する作用もあります。
今回の文献では解剖実習体を用いて小胸筋の延長腱の頻度、形態を調査されています。
また、文献の中で延長腱の停止の広がりを大結節に向かうもの、関節窩後上縁に向かうもの、大結節と関節窩後上縁の2方向に広がるものの3つの型に分類しています。その中で小胸筋の停止腱が烏口突起を越えて関節包に達して、関節窩後上縁ならびに大結節に停止する例が34.6%あったと報告しています。
小胸筋の延長腱についての報告は散見され、棘上筋腱停止部や前方の関節包に付着して肩甲上腕関節の外旋の制限にも関与する可能性があると述べられているものなどもあります。
解剖の知識をもっと増やして、患者さんの動作が何によって制限されているかを正確に評価していけるよう努力を続けていきたいと思います。


投稿者:吉田雄大

2015年8月15日土曜日

肩挙上時の上腕の回旋について

こんばんは。
今回は肩関節の挙上時における上腕の回旋についての文献を紹介させていただきます。

乾浩明:挙上動作における上腕回旋リズム-健常者と腱板断裂例の違い.肩関節,2014;Vol.38,No 3:78-790 



肩関節自動挙上時における上腕の回旋に関しては、様々な報告がなされており、一般的に挙上初期には内旋し、挙上するにつれて外旋していくと言われていることが多いです。

この文献では、肩甲骨と上腕骨にモーションキャプチャを使用し、肩関節の運動時の上腕の回旋様式を健常者の左右の肩、腱板断裂肩の罹患側と非罹患側とで比較し、検討されています。

結果として、健常者では初期は内旋し、挙上するにつれて外旋していくことは共通していたが、最大挙上手前で再び内旋する群と、しない群の2つのパターンが存在していました。
また、腱板断裂の罹患側では、20%に挙上が途中で終了、もしくは回旋がみられないパターンを呈し、80%では健常者と同様のパターンを呈したものの、内旋の可動域が健側や非罹患側と比較して半分程度になっていたとされています。

このことから、肩関節を自動で挙上するにあたり、健常肩であれば支点形成を行いながら挙上していく過程が、腱板断裂肩では上手く行えずに、支点形成を求められなくなることが考えられ、挙上に際してこの回旋を考慮しながら、支点形成の再獲得を図っていくことが重要なのではないかと思いました。



投稿者:為沢 一弘

アスリートの関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨細胞移植術


今回はアスリートの関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨細胞移植術についての文献を紹介します。


亀井ら:アスリートの関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨細胞移植術 臨床スポーツ医学:vol 30.No4(2013-4)


 関節軟骨は血管、神経やリンパ管を欠き、また細胞密度が低いため、通常の組織修復機転が起こりにくく、自己修復能力がきわめて乏しい組織です。現在の関節軟骨損傷に対する治療としては骨穿孔術(drilling法、microfracture法)、骨軟骨柱移植術などが一般的な方法として広く行われています。しかし、各方法にはそれぞれ問題点が指摘されており骨穿孔術は線維性軟骨での再生であり、将来的に再び変性が進んでくることが挙げられています。また骨軟骨柱移植は、本来の硝子軟骨で被覆することが可能ですが、軟骨修復部の曲率がことなること、採取部が限られ広範囲の軟骨損傷には適応しにくいなどが挙げられています。これらの問題点から関節軟骨を確実に硝子軟骨で修復することは困難であると考えられてきましたが、近年の組織工学や再生医療の進歩により、自家培養軟骨細胞移植術(以下ACI)が注目されています。ACIは非荷重部の関節軟骨より分離した軟骨細胞を培養により増やし、その培養軟骨(以下JACC)を骨膜にてパッチした軟骨欠損部に移植するという手技です。

 今回の文献ではこのACIについてスポーツ選手に行った治療成績を手術手技、患者因子、有症状期間、損傷部位・範囲の各項目で現在まで報告されている成績を紹介しています。治療成績のみに着目するとACIによる治療が最も有効であると考察していますが、過去の報告の中には、ACI後の移植部は12ヶ月では線維軟骨様であり、平均19.5ヶ月で硝子軟骨様組織になるため経過とともに移植部が成熟していくと述べられています。以上の報告を踏まえるとスポーツ復帰には1~2年以上の期間が必要であるため、早期復帰を望むスポーツ選手には適用の決定に難渋するのではないかと考えられます。

 当院においてもJACCを用いたACI術後の患者さんを担当する機会が増えてきていますので、手術手技や特徴を理解することはとても大切であると感じています。また運動療法を行う上で気をつけなければならないことや組織の修復過程に合わせた思考を持つためにも、これまでの運動療法においての報告を読み、臨床に還元していきたいと感じました。

投稿者:服部隼人

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