今回は肩関節周囲の筋活動評価におけるPETの意義についての文献です。
黒川:肩関節周囲の筋活動評価におけるPETの意義 関節外科 vol34 No6 2015
肩関節の動態解析には筋電図を用いた研究が多数報告されています。筋電図にも針や表面電極などが存在しますが、それぞれ問題点があげられます。特に肩関節に至っては肩甲下筋や前鋸筋を正確に導出することが手技的に難しく、針筋電図では解析する動作が大きい場合には皮膚と筋の位置が保てないことや、肩関節が胸郭に近いため侵襲による気胸リスクが伴うことがあります。また表面筋電図では隣接する他の筋活動の影響を受けるため筋特異性が低くなり、特定の筋の活動量を定量的に測ることが困難です。
こうしたなか、positron emission tomography(以下PET)が肩関節周囲筋の筋活動を評価できることから、近年さまざまな肩関節運動の筋活動評価や肩関節疾患の病態解明に応用されています。
本文献ではPETによる肩関節周囲筋の筋活動評価の実際を評価に至るまでの手順について詳細にまとめられており、実際に行われた過去の報告の紹介をされています。その中でPET画像とMRI画像の重ね合わせ像で筋を部位に分けて一つの画像から各筋の活動評価ができることが利点であると述べられています。
肩関節疾患の治療では、肩関節運動における筋活動がどのように起きているのか、また運動制限においてどの筋が代償的に働き、過負荷になっているのかを理解することはとても重要です。このような新しい報告にも目を向けることで、より肩関節の運動メカニズムや病態解釈につながると感じました。
投稿者:京都下鴨病院 服部隼人