Purpose
膝関節伸筋群における内側広筋と中間広筋の起始部、挿入部、神経支配、機能に関する解剖学的相互作用を検討することである。
Materials&Methods
男性8名、女性4名、平均年齢77歳(67~86歳)18肢を調査した。
Results
VMは内側筋間中隔、粗線遠位部、転子間線、内側顆上線近位部、大腿内転筋腱、内転筋管、長内転筋の腱膜、大腿血管溝の動脈周囲結合組織で構成され、広いハンモック状の構造から内側と背側に広がる。内転筋の内側にある腱膜は常に内転筋の腱膜と強固に結合していた。
VIの筋線維は大腿骨軸の近位2/3の前方および側方から生じていた。大腿骨内側部への付着は近位部に限定され、転子間線に極めて近い位置にあった。VIは複雑な多層構造で、VIの遠位3分の2は大腿四頭筋腱に続く強い腱膜で覆われていた。このVI腱膜の内側は表層と深層に分かれている。
内側に位置するVI腱膜の表層と深層はそれぞれ中間広筋と外側広筋の腱膜と融合する。
Conclusion
VMは、VI全体に付着し複数の筋ユニットで構成されている。これらの筋ユニットが一体となって、VMは膝関節の間接的な伸筋として機能し、全可動域を通じて伸筋装置の長さを調節している。臨床的に重要なのは、VMの他にVIのかなりの部分が膝蓋骨の内側への牽引に直接寄与し、膝伸展時の膝蓋骨の内側への追従を維持するのに役立っていることである。膝関節の伸展に関与し、膝蓋腱の機能に影響を及ぼす靭帯とⅥの相互関係は、膝関節が可動性と安定性という相反する要求に応えようとする際に見られる。大腿四頭筋群の前内側が手術や外傷を受けると、VMとVIの間の繊細な相互作用が変化する可能性がある。これは全体として伸筋機構に影響を与える可能性がある。
MPFLは主としてVI腱の内側、内側膝蓋支帯へ付着します。本研究の結果からも膝蓋骨内側の安定化構造にはVIとVMが協調して相互にMPFLへ張力伝達することが考えられました。
また、VI・VL、 VI・VM、 VI・VL・TVIを一つのユニットと捉え、層構造などを考慮して評価・治療を行っていきたい思います。
投稿者:尼野将誉