臨床において膝関節疾患の方に対して半月板の可動性を意識して評価、治療を行うことが増えました。膝関節内を勉強する機会もあり、半月板周囲構造と膝OAにについて調べています。
論文をまとめると、
Purpose
本研究の目的は、(1)半月板逸脱について説明(2)その画像的特徴を提示(3)臨床的相関を示すことである。
また、半月板逸脱と半月脛骨靭帯異常の関連性について検討した。
Materials and methods
3244件のMRIを検討し、全層半月板断裂、半月板手術歴、半月板逸脱なし、靭帯断裂、関節内骨折、腫瘍、軟骨軟化症、関節炎を有する患者を除外した。
各MRIにおいて、半月脛骨靭帯構造の異常は、信号の増加または減衰した外観を示したものと定義した。半月板の逸脱は、過去に報告された方法により、冠状画像で測定した半月板中央部のレベルで、半月板周縁と各脛骨プラトー間の距離として決定した。
半月板逸脱と半月脛骨靭帯の構造異常、臨床所見の関連性を検討した。
Result
研究対象は男女20名であった。68%の症例は半月板逸脱側と膝痛に相関があった。半月板の平均逸脱量は2.5mmで、45%(20名中9名)が3mm以上の逸脱を有していた。半月脛骨靭帯の異常は65%(20例中13例)に認められた。半月板が3mm以上逸脱している患者は、3mm未満の逸脱の患者(36%、11人中4人)に比べ、半月脛骨靭帯の異常を伴う可能性が非常に高かった。半月脛骨靭帯の異常や半月板逸脱量とK-L grade、性別、年齢、急性損傷、BMIの間に相関は認められなかった。
Conclusion
半月板逸脱は、半月板断裂や変形性膝関節症などある場合によく起こることが示唆された。半月板逸脱はまれな現象であり、臨床的には膝の痛み、特に逸脱した側の痛みを呈するが、半月板逸脱は常に症状を呈するとは限らない。半月板が無傷で膝の病変が少ない場合でも3ミリ以上の半月板逸脱があると、半月脛骨靱帯に異常があることが多いようである。
早期膝OAは半月板の逸脱が主たる構造変化であることが近年報告されていますが、著者が述べているように、画像所見と臨床所見が必ずしも一致するとは限りません。
半月板の逸脱が先か半月脛骨靭帯の異常が先かわかりませんが、「半月板の逸脱と半月脛骨靭帯の構造破綻は関連がある」という事実は、臨床における病態解釈の一助としたいと思います。
投稿者:尼野将誉