椎間関節障害症例のX線画像はどのような特徴があるのか調べています。
【目的】
椎間関節障害症例のX線画像はどのような特徴があるのか調べています。
【目的】
膝外側組織の拘縮治療において重要な要素の一つと考えている解剖の論文を共有します。
膝OA症例で半月板に付着する軟部組織の評価・治療を行うことが増え、学術的な報告を調べています。膝OAを対象に徒手療法・運動療法を実施し、MMEに及ぼす影響を検討した報告を紹介します。
Purpose
膝OA患者に対する理学療法がMMEに及ぼす影響と膝痛および ROMの変化との関連性を明らかにすることである。
Materials and methods
選択基準は、(1)内側型膝OAの診断 (2) 超音波で確認された 3 mm を超える MME (3) 膝関節伸展の可動域制限がある (4)歩行時の膝の内側の痛み(5) 週に 2 回、8 週間 (8w) 継続して理学療法を受けている(6) 2 週間ごとに8週間、継続的な超音波検査と ROM および痛みの評価を行なっている者。
除外基準は、(1)両側膝OA(2) 半月板損傷および以前の半月板手術後(3) 内側側副靭帯 (MCL) 損傷。 (4) 膝関節の関節腔周囲の骨棘。 (5) 膝の関節水腫(6) 神経学的、炎症性、または全身性疾患の存在(7) 測定値の欠落(8)フォローアップの喪失。
KLGradeは、grade1:5人、grade2:9人、grade3:11人、grade4:5人だった。
すべての外来患者は、1 人の経験豊富な理学療法士による膝関節の理学療法を週 2 回、8 週間各1単位で受けた。ストレッチと受動的 ROM エクササイズを行なった。半膜様筋腱直頭線維はすべての患者で触診に圧痛があったため、徒手的にストレッチと膝関節を他動的に伸展および内旋させた。
2w、4w、6w、および8wの各値からベースラインの値を差し引くことにより、すべてのパラメーターの変化を算出した。 スピアマンの順位相関係数を用いてすべてのパラメーターの変化間の関係を調査した。
Result
すべてのパラメーターは、NWMME (non-weight-bearing )で有意性を示した。
NWMME と WMME (weight-bearing )がそれぞれの期間で有意差を示したが、6w と 8w の間は例外だった。
NWMME は、ベースライン時 (3.6 ± 0.3 mm) よりも 8w (3.0 ± 0.4 mm) で有意に低かった。
WMME も、ベースライン時 (4.3 ± 0.4 mm) よりも 8w (3.8 ± 0.5 mm) の方が有意に低かった。
ボンフェローニ検定では、ROM と痛みが 4 週、6 週、8 週で有意差を示した。
ROM は、ベースライン時よりも 8 週で有意に大きかった 。
疼痛は、ベースライン時 (7.0 ± 0.9) よりも 8w (1.1 ± 1.4) で有意に低かった。
ベースラインと 8w の間の平均差は、NWMME で 0.6 ± 0.4 mm (0.8 ~ 0.5 mm)、0.6 ± 0.2 mm(0.7~0.5 mm) に達した。8wで、半膜様筋腱直頭線維の圧痛はすべての患者で消失した。
各パラメータの相関関係は、NWMME と痛みの間、および WMME と痛みの間で中程度の正の相関を認めた。 ただし、ROM と MME の間に有意な相関はなかった。
Conclusion
理学療法が膝OA患者のMMEの程度を減らす可能性があることを明らかにした。超音波所見は、伸展ROMの改善がMCL 緊張の再獲得につながった可能性があり、それが MME の減少に影響を与えた可能性がある。 理学療法は、MMEを減少させるための実行可能な保存的治療である可能性がある。
膝OAに対して運動療法、徒手療法が有用であることを示した論文の一つです。
一方で、症例にはKL glade3,4が含まれています。構造破綻が顕著な症例は様々な問題が混在しているので「MMEを減少させる」ということの意義からブレてしまうのではないかと感じました。
伸展制限の除去は膝OA症例を治療していく上で重要な要素であると再認識しました。
投稿者:尼野将誉
変形性股関節症の患者さんから、本やテレビの特集で貧乏ゆすりが有効と聞いたのですが、効果はありますか?と質問されました。実習のときにエビデンスがあると聞いたことがあり、指導している様子をみたことがありました。今回の質問をきっかけに詳細を調べてみました。
はじまりは、
Porpose
滑膜関節の生体内連続受動運動が、思春期および成体ウサギの膝関節の軟骨下骨を貫通する関節軟骨欠損の治癒に及ぼす生物学的効果を検討すること。
Methods&Material
147匹のウサギの588膝軟骨欠損を評価した。連続的な受動運動を行い、その一般的な生活は妨げられなかった。週間隔で4週間までの欠損の治癒は、肉眼検査と、光学顕微鏡によって評価された。(1)修復組織の性質、(2)トルイジンブルー染色によって示されるマトリックスのメタクロマシアの程度であった。
連続的な受動運動の効果と固定および間欠的な能動運動の効果と比較した。
Result
4週目に関節軟骨欠損が評価された。膝が固定された10匹の8%、断続的な能動的運動が許された10匹の9%、および手術直後に膝が連続的受動運動で管理された10匹の52%に存在したことを明らかにした。
Conclusion
欠損内の未分化間葉組織から硝子軟骨への治癒組織の形質転換は、固定や間欠的な能動運動よりも、連続的な受動運動の方が迅速であるだけでなく、はるかに完全であった。
持続的他動運動は軟骨再生を促すという報告を背景にジグリング運動は考案されたようです。
ジグリング効果は、股OA(進行期、末期)、キアリ術後を対象に7割程度に関節裂隙が2mm開大した(広松ら:整形外科と災害外科.2013)、40例中14例でJOAスコアが改善した(佐々木ら:Hip joint2018)などの報告がある一方で、股OA77例のうち2年間でX線学的指標に変化はなかったという報告(古市ら:Hip joint 2018)もありました。
これらの事実から、統一した見解は得られていないが、関節に負担のかかる運動ではないと考えられます。
投稿者:尼野将誉
臨床において足底腱膜炎の患者さんを担当することが増えました。解剖を復習します。
この論文は足底腱膜の正常な解剖学的構造を超音波検査とMRIを用い解剖学的な相関性をもって説明されている論文です。
解剖
足底腱膜は中央部、外側部、内側部に区分される。中央部は最も太く、短趾屈筋腱起始部より後方の踵骨内側結節の後面に付着し、幅1.5~2.0cmである。この部分は、内側では長趾屈筋を覆い、背側腱膜と混ざり合い、外側では踵骨の外側溝と接している。遠位では中足趾節関節の高さで足底腱膜の中央部が5つの筋膜に分かれ,各足趾に1つずつ挿入される。
各腱膜は表在枝と深在枝に分かれている。深在枝は中足趾節関節に挿入される。表在枝は膝窩靭帯に線維を送り、各足指の屈筋腱を包む2つの矢状隔壁に分かれ、その鞘に癒合する。第2、3、4、5趾では、これらの矢状隔膜は足底板、骨間靭帯、深横中足靭帯に挿入される。母趾では矢状隔壁は外側と内側のバンドに分かれ、足底板と中足骨に挿入される。両足底隔は、皮膚に挿入されるいくつかの垂直線維と連続している。
足底腱膜の外側部分は、踵骨内側突起の外側面に付着し、小足趾外転筋の表面を覆っており、幅は1.0~1.5cm、中央部分と同様に後方は太く、前方は細い。この部分は,内側では中央部分と,外側では背側筋膜と連続している。遠位では2つの帯に分かれ内側は小指外転筋の周りを回って第3、時には第4中足趾節関節の足底板に挿入され、外側は第5中足骨の基部に挿入されて中足趾節関節靱帯となる。
足底腱膜の内側は薄く、屈筋支帯の後方に付着し、長母指外転筋の表面を覆っている。この部分は、内側では背側筋膜と、外側では足底腱膜の中央部分と連続している。
超音波画像診断
足の軸平面に対して90°の角度で超音波画像診断を行うと、正常な足底筋膜の中央部と外側部は均一な高エコーであり、その繊維の縦方向に起因する筋状の外観を呈している。足底腱膜の踵骨挿入部は遠位部よりもよく観察された。踵骨の内側結節にある足底腱膜の中央と外側の挿入部と、立方骨の高さまでの足底腱膜の遠位部を確認することができた。それ以上の遠位構造は視認できなかった。
磁気共鳴画像
高解像度MRIにより足底筋膜の3つの部分と筋膜周囲の構造が3つの撮影面すべてで確認でき、軸方向面より矢状面において良好であった。T1強調画像では、3つのコンポーネントは、すべての撮影平面で信号強度が低く、筋状の外観と帯状の形状を呈していた。
中央部に関しては、5つの腱膜に分かれており、軸方向と冠状面で低信号強度の分岐した紐状の構造として現れた。これらの筋膜の表層部と深層部の分岐は、冠状面では遠位足底筋から生じる低信号強度の細い蛇行状の構造として見られた。各表層枝から派生する2本の矢状隔壁と、隔壁を皮膚に接続する垂直線維は描出されなかった。
この論文は組織学的に検討はされていませんが、付着部位を知ることができました。これら組織との関わりを考えて評価・治療を進めます。
投稿者:尼野将誉
前回に引き続き膝OAに伴う半月板やその周囲組織の構造変化について調べています。
論文をまとめると、
Purpose
MRIとT2マッピングMRIを用いてMMEと骨棘を含むOA関連変化との関連性を検討することである。
Methods
早期膝関節OA患者(n = 50)を対象とした。MRIで検出されたOA関連の変化は、MMEに加えて、Whole-Organ Magnetic Resonance Imaging Scoreに従って評価された。内側半月板と骨棘のT2値は、T2マッピング画像で測定された。末期膝関節症患者から手術で摘出した骨棘を組織学的に分析し、X線撮影とMRIで得られた所見と比較した。
Result
T2マッピングMRIで測定した骨棘距離(骨と軟骨部分の合計)は、MRIで算出したMME距離(3.3 ± 1.9 mm対3.0 ± 1.6 mm)と同様であることがわかった。
組織学的に骨棘の骨部は軟骨に覆われていることが確認された。軟骨部と骨部の合計である脛骨内側骨棘距離をT2マッピングMRIと組織学で別々に測定したところ、T2マッピングMRIで測定した骨棘距離は、軟骨部と骨部の合計である脛骨内側骨棘距離と同じであった。
膝関節内側の骨棘の有病率はラジオグラフィーで40%,MRIで48%であった。一方、T2 マッピングMRIでは、早期膝関節症患者の98%に骨棘が認められた。
脛骨内側骨棘距離(骨棘の骨部分と軟骨部分の合計)は、MMEのグレードと正の相関があった。
Conclusions
脛骨内側部骨棘が早期膝関節症患者によく認められ、MMEと密接な関係を示すこと、MMEは内側半月板変性と正の相関を示すことを明らかにし
上記の図のように、本研究により早期膝OAのMMEは骨棘幅と関連することが明らかとなりました。MMは半月脛骨靭帯で脛骨と強固に連結しているため、その解剖学的特徴が影響しているのか想像しました。骨棘やextrusionはいずれにせよそこにメカニカルストレスがかかっている結果と考えます。半月板変性、OA進行の一つの最新知見として本論文を捉えます。
投稿者:尼野将誉
臨床において膝関節疾患の方に対して半月板の可動性を意識して評価、治療を行うことが増えました。膝関節内を勉強する機会もあり、半月板周囲構造と膝OAにについて調べています。
論文をまとめると、
Purpose
本研究の目的は、(1)半月板逸脱について説明(2)その画像的特徴を提示(3)臨床的相関を示すことである。
また、半月板逸脱と半月脛骨靭帯異常の関連性について検討した。
Materials and methods
3244件のMRIを検討し、全層半月板断裂、半月板手術歴、半月板逸脱なし、靭帯断裂、関節内骨折、腫瘍、軟骨軟化症、関節炎を有する患者を除外した。
各MRIにおいて、半月脛骨靭帯構造の異常は、信号の増加または減衰した外観を示したものと定義した。半月板の逸脱は、過去に報告された方法により、冠状画像で測定した半月板中央部のレベルで、半月板周縁と各脛骨プラトー間の距離として決定した。
半月板逸脱と半月脛骨靭帯の構造異常、臨床所見の関連性を検討した。
Result
研究対象は男女20名であった。68%の症例は半月板逸脱側と膝痛に相関があった。半月板の平均逸脱量は2.5mmで、45%(20名中9名)が3mm以上の逸脱を有していた。半月脛骨靭帯の異常は65%(20例中13例)に認められた。半月板が3mm以上逸脱している患者は、3mm未満の逸脱の患者(36%、11人中4人)に比べ、半月脛骨靭帯の異常を伴う可能性が非常に高かった。半月脛骨靭帯の異常や半月板逸脱量とK-L grade、性別、年齢、急性損傷、BMIの間に相関は認められなかった。
Conclusion
半月板逸脱は、半月板断裂や変形性膝関節症などある場合によく起こることが示唆された。半月板逸脱はまれな現象であり、臨床的には膝の痛み、特に逸脱した側の痛みを呈するが、半月板逸脱は常に症状を呈するとは限らない。半月板が無傷で膝の病変が少ない場合でも3ミリ以上の半月板逸脱があると、半月脛骨靱帯に異常があることが多いようである。
早期膝OAは半月板の逸脱が主たる構造変化であることが近年報告されていますが、著者が述べているように、画像所見と臨床所見が必ずしも一致するとは限りません。
半月板の逸脱が先か半月脛骨靭帯の異常が先かわかりませんが、「半月板の逸脱と半月脛骨靭帯の構造破綻は関連がある」という事実は、臨床における病態解釈の一助としたいと思います。
投稿者:尼野将誉
手指骨折の患者さんを担当する機会があり、手指の解剖について調べています。今回は2つの論文の解剖についての記載部分をまとめます。
Anatomy
指屈筋鞘滑車系は、屈筋腱の正常かつ効率的な機能を可能にする複雑な構造である。この鞘滑車系は、深部の滑膜成分と表層の網膜成分から構成されている。滑車は線維性組織であり、屈筋腱をほぼ取り囲み、線維と骨を連結して、腱を骨に隣接させるように機能する。これにより、筋-腱ユニットから発生する並進力を指骨にかかる回転モーメントに変換することができる。腱鞘は近位から遠位に向かって順に5つの環状滑車(A1~A5)と3つの十字滑車(C1~C3)がある
A2は基節骨に、A4は中節骨に直接付着し靭帯性腱鞘といわれる。A1、A3、A5は、より柔軟で膜性腱鞘のといわれ、主に掌側板に付着し、十字滑車とともに、それぞれ指の屈曲・伸展時にインピンジメントを回する役割をもつ。A1、A3、A5滑車はそれぞれ中手指節関節(MCP)、近位指節間関節(PIP)、遠位指節間関節(DIP)の上に位置している。十字滑車はC1、C2、C3からなり、それぞれA2とA3、A3とA4、A4とA5滑車の間に位置している。A1滑車の近位には掌側腱膜滑車があり,掌側腱膜の横靭帯がLegueuとJuvara膜に付着し,A1滑車の表層と近位の屈筋腱の上にアーチを形成している。A2は大きく重要であると考えられており、A2とA4の滑車は、指や性別に関係なく、同様の生体力学的特性を持つといわれている。
バイオメカニクスの観点では、指の屈曲量は腱の伸展量とモーメントアームに比例する。無傷のプーリーは屈筋腱を指関節の回転軸に近づけ、指の総屈曲量を最大にする。モーメントアームはプーリーの不全に伴って増加し、指の完全な屈曲が得られる前に腱の最大伸展に至る。
手指の屈筋腱損傷Zone 2には深指屈筋腱と浅指屈筋腱の交叉(Chiasma)部があるためその複雑な走行から縫合手術後に高率に癒着を生じ、術後成績が良くなかったことから、No man's landとしてよく知られています。chiasma以外にも、上記のような滑膜組織である腱鞘があれば炎症の波及、拘縮をきたしやすい部位と考えます。A2は大きく滑走幅も必要となる部位ですが、A1.3.5は掌側板と連続し、膜性腱鞘であるため重要と考えます。各レベルにおける腱の評価を見落とさずに臨床に望みます。
投稿者:尼野将誉
患者さんから「ヒアルロン酸注射の効き目はどのくらい?」と質問され、答えられなかったためヒアルロン酸について調べ直しました。3つの論文をまとめました。
基本構造はグルクロン酸とN-アセチグルコサミンの2糖がグリコシド結合した繰り返し構造であり、生体内ではB型滑膜細胞や線維芽細胞によって産生される。
一般診療で広く利用されるヒアルロン酸は、関節内だけでなく筋・腱付着部における役割も大きいことを学びました。軟部組織に対する効き目は1日以下であり、注射直後に運動療法を行うことでその効果は増すのではないかと考えます。
投稿者:尼野将誉