三角線維軟骨(以下、TFCC)損傷は必ず疼痛を生じる障害ではないとされています。これは、腱板損傷や半月板損傷にも言えることですが、損傷した組織にメカニカルストレスが加わることにより疼痛が惹起されると考えられます。同じ衝撃でも損傷の形態によって損傷部位に加わるメカニカルストレスが変化するため、疼痛の有無に関わるかと考えました。
そこで今回は、TFCCの損傷形態と疼痛の関連性について検討された論文を紹介します。対象を骨疾患を認めないTFCC損傷症例を疼痛群と非疼痛群に分けて、損傷形態などを比較されています。
疼痛群に存在して非疼痛群に存在しなかった損傷形態として、TFCCの周辺部損傷が上がっています。周辺部の損傷はTFCC損傷における尺側部痛を惹起しやすいと考えられます。一方、実施部の損傷においては両群とも差がありませんでした。このことから、実質部の損傷による尺側部痛においてはTFCCのみならず他の組織由来の疼痛や特徴的な動態があるのではないかと考えました。
TFCC実質部の損傷は何らかのメカニカルストレスを軽減させることにより疼痛が改善する可能性を示唆している論文でした。今後の参考にしたいです。