PCL損傷のスポーツ復帰における最新のエビデンスを調べています。
独立PCL損傷に対する保存的治療と外科的治療のいずれにおいても、高いスポーツ復帰率を達成することが可能であり、文献的にもどちらの治療法も支持されている。スポーツ復帰は、患者の活動レベルに応じて異なる時期に行われる。客観的な検査はプレー復帰の重要な要素であり、患者の弛緩性、筋力、持久力、機能的動作を評価する必要がありる。通常、質の高い動きの評価に加えて、機能的ホップテストとアイソキネティックテストが実施される。四肢の十分な機能的性能を示すには、片脚ホップテストの時間 とクロスオーバーホップテストが最適であると指摘されている。Schreierらは、スポーツ復帰テストを使用し、筋力テストと機能テストで90%以上の機能が認められ、患者が精神的に陸上競技に復帰する準備ができている場合に競技復帰を認めている。非競技者は、術後6ヵ月で活動許可が出るが、競技者は、筋力や機能的/適切な受容能力の回復により、6~9ヵ月でスポーツへの完全復帰が許可される論文もあるが、症例の特殊性に応じて、一般的には1年を推奨する。
Patelらは、非手術的治療を受けたグレードA/BのPCL損傷患者58人を平均6.9年間追跡調査し、最終追跡調査時のTegner活動性尺度に差はなく、エリート選手の100%が同じレベルのプレーに復帰し、65%の患者がレクリエーション活動に復帰していることを明らかにした。Shelbourneらは、非手術的治療を受けたPCL損傷患者133人の大規模コホートを追跡調査し、同様の結果を得た。膝関節の弛緩にかかわらず、スポーツに復帰できなかった患者はわずか17%であった。Boyntonらの長期追跡調査では、受傷後13年での競技復帰率はわずか13%であった。
しかし、このデータは、患者が年齢を重ねるにつれて、エリートアスリートから自然に遠ざかっていくことを反映していると思われる。また、アスリートが最小限の制限でリハビリを行った後にプレーに復帰できることを示す研究もある。鳥塚氏は、グレードA/BのPCL損傷を負ったラグビー選手16名を追跡調査し、可動域と筋力強化のプロトコールを用いて治療を行った。88%の選手が受傷後2ヵ月でトレーニングを再開できたが、2名の選手は持続する痛みと自覚的不安定性のために復帰できなかった。Agolley氏もまた、グレードB/CのPCL損傷を負ったラグビーとサッカーのアスリートを追跡調査し、16週間のリハビリテーション・プログラムによる保存的管理を実施した。患者は、受傷後平均10.6週でトレーニングに復帰し、受傷後16.4週でフル活動に復帰した。グレードB/Cの損傷では、練習やスポーツへの復帰に差はなかった。2年後の追跡調査では、91.3%の患者が受傷前のレベルでプレーしていた。より低いレベルでスポーツに復帰した患者では、グレードCの傷害の割合が高かった。5年後の追跡調査では、82.6%の選手が競技スポーツを続けており、69.5%が受傷前のレベルでプレーしていた。
Cheらは、大腿四頭筋自家移植によるPCL再建術を受けた患者コホートを平均3年間追跡調査し、Zayniらは同様のコホートを29ヵ月間追跡調査した。両研究とも、非手術的治療を受けた患者群と比較した場合、スポーツ復帰率が低いことを挙げており、Cheらは、術後3年の時点で激しい運動への復帰率は60%であったと報告している。Zayniらの報告によると、術後29ヵ月でのピボット運動やコンタクトスポーツへの復帰率は71.5%であった。
投稿者:尼野将誉