COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年2月26日日曜日

【文献紹介】膝窩筋機能の肉眼解剖学的検討

本日紹介させていただく文献は肉眼的に膝窩筋の大腿骨付着部位を明らかにし、膝関節屈曲に伴う形状変化、機能変化について検討した文献です。

江玉睦明他:膝窩筋機能の肉眼解剖学的検索.スポーツ障害vol8:47-19,2013


対象は解剖用固定遺体9体16膝で膝関節伸展0°で検討されています。検討はLCLとの位置関係で分析されています。
結果はLCLの下方に付着(下方型)していたしていたのが9膝、前下方に付着(前下方型)していたのが7膝であったと報告しています。形態的変化については屈曲に伴い脛骨関節面に対して長軸方向に垂直位と報告しています。膝窩筋腱溝にはまり込み伸張されていく角度は下方型で136±6°、前下方型で129±4°と報告しています。

考察においては過去の報告と比較しても一定の見解が得られておらず、人種差が示唆されるとしており、形態・機能変化については大きなトルクは生じないが、膝関節深屈曲位では膝窩筋は伸展方向に作用する可能性が示唆されたと述べています。

膝窩筋については多数の報告があり、一定の見解が得られておらず、非常に興味深い組織であると感じています。
今後も膝窩筋について調べていこうと思います。

2017年2月23日木曜日

【文献紹介】投球障害肩病変の診断に有用な理学所見のついて

 本日は、投球障害肩に対する有用な理学所見が報告されている論文の紹介します。

林田賢治ら:投球障害肩病変の診断に有用な理学的所見.肩関節1632-341992

 臨床において投球障害肩を呈する症例は、疼痛の訴えが複雑であり、疼痛を誘発する要因が推察しにくいことを経験します。これは投球障害肩には多くの病変が混在していることが原因かと思います。投球時の疼痛の原因を明確にするためには、どの組織由来の疼痛かを再現する評価が必要であると考えます。
 本論文は、医者が投球障害肩を診断する時に有用な理学所見について考察されています。対象はオーバーヘッドスポーツを行う症例で、関節唇損傷、Bankart病変、腱板断裂、肩峰下滑液包病変の4群を比較検討されています。その中でも、関節唇損傷群はprocain test(局所麻酔下での疼痛の有無を評価)が有意に陰性であり、投球時痛は減速期に有意に多いとされています。
 しかし、投球時の減速期において他の軟部組織に目を向けると、後下方組織は伸張位にあり、棘下筋や小円筋は遠心性に収縮します。
 このことから、炎症症状がなく投球障害肩症例が減速期の疼痛を訴える場合、関節唇由来の疼痛か後下方組織由来の疼痛か判断が難しくなります。ここで関節可動域測定や圧痛、収縮時痛などを用いて投球時痛の再現をすることが大切だと思いました。再現性を正確に得ることが治療ターゲットをはっきりさせることにつながると思いますので、今後も丁寧に評価を行いたいと思います。


投稿者:中井亮佑

2017年2月19日日曜日

【文献紹介】膝関節後外側支持機構および後十字靭帯の内反制御機能について


 今回、紹介する文献は膝関節後外側支持機構および後十字靭帯の内反制御機能についてです。

 膝関節の内反制動には外側側副靭帯(以下:LCL)が大きく関わります。過去の報告では膝屈伸運動の際に伸展位付近では緊張するが屈曲位では弛緩することから、LCLの内反制動は伸展位のみに限局するとされていましたが、近年では屈曲位においても内反制動に関わることや伸展位から軽度屈曲位にかけては強いが、それ以上の屈曲位では機能が低下することなどが報告されています。

 また膝後外側複合体(以下:PLC ; 膝窩筋腱、ファベラ腓骨靭帯、弓状靭帯、後外側関節包より構成される)および後十字靭帯がともに損傷されると重度の膝内反不安定性が出現することから、今回の文献では膝関節角度を0°15°30°60°90°と変化させ、LCLPLCPCLを異なる順序で切離し、その際に生じる内反量の変化について検討されています。
 結果はLCLを単独で切離すると全可動域を通じて内反量が増加するが、軽度屈曲位(15°〜30°)では大きく、60°以上では小さくなったとあり、LCLに加えてPLCを切離するとさらに内反量が増加したことから、LCLについでPLCは内反制動の因子であること。またPCLを切離すると60°以上でLCLについで内反制動の因子であると報告しています。

 以上の結果から内反ストレステストを軽度屈曲位と屈曲60°以上で評価することで損傷されている組織が鑑別できる一つの指標になるのではないかと考えます。もちろん臨床では画像所見やその他の理学所見と合わせて病態を解釈していく必要がありますが、内反ストレステストを行う際には今回の報告を踏まえて行っていきたいと思いました。

投稿者:服部隼人

2017年2月16日木曜日

【文献紹介】棘上筋腱の線維移行形態について

 本日は、付着部における棘上筋腱の線維移行形態について報告されている論文を紹介します。
中島知隆ら:棘上筋腱の線維移行形態.肩関節18(1): 19-25, 1994.

 棘上筋は肩甲骨の棘上窩から起始し、烏口肩峰靭帯の下を通過したのち大結節の前面に付着する筋です。棘上筋の付着部は棘下筋などと腱板となることや、大結節の前面の中でも前下方よりに付着することが知られています。隣接する軟部組織は棘下筋や肩甲上腕靭帯など存在しており、これらは複雑な構造となっています。
 本文献は、棘上筋の付着部に関して腱の三次元構造や棘下筋との相互関係を明らかにすることを目的としています。方法は腱板の加齢的影響が少ない比較的低年齢のご遺体を対象に、肉眼的及び顕微鏡下にて観察されています。
 棘上筋の前方部は線維密度が密であり縦走線維群を構成されるとされています。棘上筋の中央から後方部は線維密度は疎となっていますが、棘下筋腱を覆いながら層を成して付着するようです。また、棘上筋腱の付着部を観察すると後方部に比べ前方部は約2倍の厚さであったとされています。
 このことから、棘上筋の中でも前方部は棘上筋としての機能を発揮しやすく、後方部は棘下筋と複合的な機能を発揮すると考えます。棘上筋の機能を評価する際には、この構造を元に病態の推論を立てていきたいと思います。
 

投稿者:中井亮佑

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