本日は障害された上腕二頭筋長頭筋腱の変性を組織学的に研究した論文を紹介します。
吉川玄逸ら:腱板断裂に伴う上腕二頭筋長頭腱障害の組織学的検討.肩関節25(2):249-252,2001
上腕二頭筋長頭は関節上結節と上方関節唇に起始しており、関節鏡においては12時のランドマークとなります。上腕二頭筋長頭腱は腱板筋群が損傷されると上腕骨頭の上方化を防ぐDepressorとして代償的役割を果たすされています。
本文献は、術中所見で肉眼的にLHBの明らかな変性が存在した症例より採取したLHBを対象とされています。結果は膠原線維の変性や血管増生を伴う肉芽組織が認められていますが、炎症所見や腱の肥厚化を呈した症例は認めなかったと述べられています。
本文献より、腱が肥厚していなかったことより変性の進んだ上腕二頭筋長頭腱は上腕骨頭のDepressorとして機能は弱くなることが考えられ、棘上筋など上方の腱板が損傷されている症例は骨頭が上方偏位しやすいことが考えられました。
腱板が損傷されていても理学療法により骨頭の上方偏位が改善する症例を経験することから、どの組織が原因で骨頭が上方偏位するのか、Depressorとして機能するのかを疑問に感じた論文でした。
投稿者:京都下鴨病院 中井亮佑