本日は、TKA施行時のLateral releaseと膝蓋大腿関節(以下PF関節)の関係について書かれた文献について紹介させていただきます。
近藤 桂史他:人工膝置換術時のLateral releaseと膝蓋大腿関節Gapとの関連性
整形外科と災害外科58:(3)351~354,2009
TKA時に良好な膝蓋骨トラッキングを獲得する為のLateral releaseは通常よく行われる手技の一つとされています。Lateral releaseによる大腿脛骨関節への影響は数多くの報告がなされていますが、PF関節への影響について書かれた論文は少ないです。
本文献では、PF関節を開大させることによって生じる距離をGapと定義し、このPF関節GapをLateral release前後で計測しています。
対象は、変形性膝関節症の診断にてTKAを施行されたものであり、Lateral releaseは外側上膝動脈・下膝動脈間でconventional extra synovial lateral retinaculum releaseが行われています。PF関節Gapはrelease前では膝関節伸展位、release後は膝関節伸展位・30°屈曲位で行われています。
結果は、Lateral release前と比較しrelease後の膝伸展位でのPF関節のGapは有意に増大し、屈曲位ではrelease後の膝伸展位でのPF関節Gapと比較して有意に狭くなっていたそうです。
本文献を読んで、Lateral releaseを行うことでPF関節の裂隙間距離が拡大したことから、TKA術後の拘縮予防として膝蓋骨の浮き上がりを改善させておく重要性を改めて痛感しました。また、膝伸展位でPF関節のGapの拡大があったとしても、膝30°屈曲位ではGapは減少しており、Lateral release前とほぼ同等の数値を示していたため、膝伸展位でだけでなく、膝屈曲位でも膝蓋骨の生理的運動が阻害されないよう拘縮予防を行っていく必要性を再確認しました。
明日からの臨床に活かしていきたいと思います。
投稿者:鷲見 有香