【目的】
FADIR陽性者における股関節内旋時の関節包と小殿筋のin vivoでの相互関係を明らかにすることである。
【対象と方法】
10股関節をFADIR陽性群とし、FADIR検査で股関節痛のなかった10股関節を対照群とした。
4つの股関節回旋条件(外旋20°、内旋10°、外旋/内旋0°、内旋10°)の4条件における超音波画像に基づき、小殿筋(筋腹部)と関節包の方向性を測定した。筋腹部と関節包の方向計測を行い、FADIR陽性群と対照群間で定量的に比較した。さらに、対照群とFADIR陽性群からそれぞれ3名ずつ無作為に臀部3個を選び、磁気共鳴画像解析を用いて分析した。
【結果】
超音波画像上、外旋0°/内旋10°および内旋10°において、FADIR陽性群の小殿筋および関節包の線維は、FADIR陽性群の小殿筋および関節包の線維よりも有意に同じ方向を向いていた。FADIR陽性群の小殿筋と関節包の線維は、対照群に比べ有意に同じ方向を向いていた。磁気共鳴画像では、小殿筋と関節包の間の緩い結合組織は、対照群では10°内旋位で顕著であったが、FADIR陽性群では顕著ではなかった。
【結論】
90°屈曲位での股関節内旋時、小殿筋の筋腹部と関節包は、対照群よりもFADIR陽性群の方が同じ方向を向いていた。関節包は、FADIR陽性群では対照群よりも同じ方向を向いていた。
これは、両者間の疎性結合組織の形態学的変化によるものである。疎性結合組織の病理学的変化は、関節包に対する小殿筋のスムーズな動きを阻害している可能性がある。
FADIR陽性の疼痛を有する患者では、関節包に対する小殿筋のスムーズな動きが阻害されている可能性がある。
FADIRテストはなにをみているのか日々仮説検証を行っていましたが、本論文により軟部組織の構造と形態が可視化されたことによりターゲットとなりうる組織が明確化しました。屈曲時痛を呈する症例には小殿筋と関節包、この深層に走行している大腿直筋半回頭の評価を行うべきと考えます。
投稿者:尼野将誉