本日は前十字靭帯の力学的評価を加える負荷の種類を変えて行った研究論文を紹介します。
高柳津富ら:引張りおよび引張り−ねじり試験によるブタ前十字靭帯の力学的特性評価.日本臨床バイオメカニクス学会誌.Vol25:167−171,2004.
靭帯損傷は過度な外力負荷が加わることによって起こるとされています。本論文によって取り上げられている前十字靭帯損傷は若年層に多く、運動時に接触・非接触ともに損傷の原因となります。中でも非接触損傷は特異的な動作によって損傷され、その動作による外力はねじり負荷を伴っていることが多いです。
そこで、本論文は引張りのみで負荷を与えた時と引張りにねじりを加え負荷を与えた時の最大負荷、剛性、変位の変化について比較し研究されています。
結果は、ねじり加わることで前十字靭帯の耐久負荷量が有意に低下しました。この結果を、筆者らはねじり負荷を与えることによる剪断力の増加や反復負荷によるマイクロダメージの影響と考察しています。
このことから、靭帯は剪断力が加わることによって損傷しやすくなり、その負荷が反復されることで靭帯は脆弱化することが考えられました。靭帯損傷や靭帯再建を行った症例に対し、剪断力が生じにくい身体バランスを整えることの重要性を考える論文でした。