COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年4月6日木曜日

【文献紹介】烏口上腕靭帯は肩関節内旋制限に関与するのか


 日常生活動作には結滞や下肢更衣など内旋動作が多く、内旋制限の改善は臨床上重要であると思います。
本日は、烏口上腕靭帯に着目して、内旋制限の原因となる病態を調査した論文を紹介させていただきます。
 
 

この研究では内旋制限を主訴とする23症例(病態:凍結肩、平均年齢:61.5歳)に対して、局所麻酔下に非観血的授動術を行い、断裂する解剖学的組織をMRIで同定し、内旋制限に対する内旋授動術の効果を調査されています。

結果は授動術後のMRIより関節窩よりの烏口突起起始部での烏口上腕靭帯の断裂が確認され、その他の組織断裂は認められなかったことが示されていました。また、授動術後の可動域は下垂位内旋、水平内転、外転位内旋、屈曲位内旋で有意に改善したと報告されていました。この結果に対して筆者は烏口突起から棘上筋・棘下筋を連結するCHLの癒着が肩前方組織の滑走性を低下させ上腕骨頭の動きを制限している可能性があると考察しています。

内旋制限を改善させるためには後方組織由来だけでなく、前方組織にも着目して評価・治療を行う必要があると思いました。自分の中の病態解釈の幅を広げて治療成績があがるように努めていきたいと思います。
 
投稿者:佐々木拓馬

2017年4月4日火曜日

【文献紹介】肩関節最大等尺性収縮時の筋活動変化

本日は筋力低下の部位の違いにより肩関節の筋活動がどのように変化しているのかを実際の症例を通して検証された文献を紹介します。



井尻朋人ら:筋力低下の部位の違いによる肩関節最大等尺性収縮時の筋活動変化―開始肢位からの変化量に着目して―、関西理学1533-37,2015

対象は有疾患者2名で、1(症例1)は肩関節脱臼の診断であり、肩甲上腕関節(以下GHJ)を中心に筋力低下が認められるが、著明な関節可動域の制限がない症例。もう1(症例2)は上腕骨骨頭骨折の診断で、観血的骨接合術を施行されており、GHJの筋力よりも肩甲胸郭関節(以下STJ)の筋力の低下がみられる症例です。2名とも疼痛はなく、受傷から半年以上経過しており、症状は安定していたと報告されています。この2肩と症例2の非受傷側、1肩を正常肩として、測定、分析されています。

筋力測定を行う動作としては、肩関節屈曲、1st外旋、1st内旋の3つの運動で、筋電計を用いて筋力を計測されています。計測した筋は先行研究をもとにしたGHJSTJの動作筋で、屈曲は三角筋前部、前鋸筋、僧帽筋上部、中部、下部で、外旋は棘下筋、僧帽筋上部、中部、下部、内旋は大胸筋、前鋸筋とされています。

結果はGHJの筋に注目すると症例1は症例2、健常肩に比べ、開始肢位に対する抵抗負荷時の相対値が小さい傾向にあり、STJの筋に注目すると症例2、健常肩に対して、症例1では小さい値を示す結果となっています。症例2と健常肩の比較では著明な差はみられなかったが、筋力低下が生じている筋では症例2が小さくなる傾向にあったと報告されています。

筆者らは症例1ではGHJで肢位が保持できず、外力はSTJにまで伝達できなかったと考え、症例2ではGHJで肢位が保持できており、隣接関節であるSTJにまで外力が伝わり、筋力が発揮できたと考察しています。
この研究から筋力が低下している部位の違いにより筋力発揮の際のSTJにおける筋活動に差異がみられていたとも考えられています。

肩関節は筋をはじめ、軟部組織を中心に安定している関節であり、運動する関節が安定していない状態では筋力が発揮しづらいことが考えられます。臨床においても腱板断裂、肩関節脱臼など関節の不安定性がみられる症例は少なくないかと思います。自分自身、そのような症例で、どの組織が不安定性の原因となっているのかを評価し、安定させるためにどのようなアプローチをするか悩むことも少なくありません。GHJSTJの評価をし、考察していくことが大切だと改めて感じました。
また、今回は外力に対しての筋活動であり、自発的に筋力を発揮させているものではないこと、疾患の異なる2症例で検討していることも含め、他の文献も参考にして臨床に活かしていこうと思います。


投稿者:天鷲翔太

第26回整形外科リハビリテーション学会学術集会演題募集のご案内


第26回整形外科リハビリテーション学会学術集会演題募集のご案内
<演題募集期間:2017年 4月1日~5月28日>
会期:2017年9月23日(土・祝)、24日(日)
会場:吹上ホール(名古屋中小企業振興会館)

演題登録:
整形外科リハビリテーション学会スポーツ支部ウェブサイトより

いよいよ今年も当学会 学術集会の演題募集がスタートしました。
皆様の臨床における日頃の成果を発表し、新たな知見をシェアしてください。
そして同時に第三者による複数の目でチェックしてもらい、論理的に正しいかどうかを確認しましょう。
発表は筆頭演者が当学会の会員であることが必要です。
手順に沿ってエントリーしていただけたら、査読の上、発表の合否が決まります。
発表した時の質疑応答は、最高レベルに内容が濃く、数も多く、愛に満ちている、そんな印象を受けると思います。
質問マイクの前に行列ができる様は当学会の名物になっています。
ぜひエントリーを、そして当日のご参加をお待ちしています。

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